落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

半熟ハードボイルド

2008年03月06日 | book
『水の眠り 灰の夢』 桐野夏生著
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4167602024&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

桐野夏生といえば『グロテスク』しか読んでないぐりですが。
この本もなんで読む気になったのか皆目見当がつかない(爆)。毎度毎度思いつきで図書館に予約を入れまくっては手元に来た順にテキトーに読む、無計画な読書習慣のなせるワザですな。自分でもなんで読みたいのかわからん本を返却期限に追われながら読むとゆー。今もちょうど手元に12冊も借りた本があるとゆーのに、図書館のカウンターにも引き取り待ちの本が6冊来ている。うちの何冊かは既に予約した動機を忘れている。つかこんだけあったら流石に覚えきれない。アホだ。
しかもこの『水の眠り〜』に至っては、読み終わってすらなんで読みたかったのか思いだせなかった。のーみそ、腐ってるわあ。

物語の舞台は昭和38年、東京オリンピックの前年、高度経済成長時代の少し前の東京。
主人公は村野という29歳のジャーナリストだが、出版社や新聞社の社員ではない、フリーランスのライターで当時は“トップ屋”と呼ばれていたらしい。地下鉄車内で爆弾事件に遭遇した村野は、かねてから連続していた草加次郎と名乗る人物による一連の爆破事件と関連があるとみて取材に乗り出すのだが、取材中のある夜たまたま出会った女子高生が数日後に水死体で発見され、最後にいっしょにいた村野に容疑がかけられてしまう。

この小説が発表されたのは1995年、地下鉄サリン事件をはじめとするオウム真理教関連の事件が前年から続いていたころである。
おそらく著者が冒頭に地下鉄車内での爆弾事件を持って来たのは、この95年当時の日本社会の異様な空気を物語に反映させたかったからではないかと思う。
ちなみにこの年は阪神淡路大震災があり、東京では青島幸男が知事に当選、映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』が公開されて大ヒット、『星の金貨』や『愛していると言ってくれ』などTVドラマの影響で手話を学ぶ人が増え、海外ではイスラエルのラビン首相が暗殺された年でもある。
個人的にはぐり自身がこの年に社会人になったせいもあるが、日本という国にとっても1995年という年はかなり大きな転換点だったようにも思う。世界にとって2001年の9.11が転換点だったように、日本にとっては、震災とサリン事件は決して後戻りのできない、ひとつの時代の始まりだったのではないだろうか。
非常にもったいないのだが、この小説自体はそうした背景をうまく活かしきれずに終わってしまっていて明らかに消化不良に感じられる。昭和38年という時代背景は舞台装置としては効果的ではある。戦争の影をうっすらと引きずりながらも激しく成長を始めた混沌とした社会の空気が、現代にはないハードボイルドなタッチを実にあざやかにひきたててはいる。ところがそうはいっても物語はなかなか思うようには広がっていってはくれない。何もかもすべてがぐずぐずと主人公の守備範囲内でくずれていってしまうのだ。初めは連続爆破事件の話だったはずが、いつの間にかぱっとしない薬物乱用や性犯罪のスキャンダルにすり変わっている。なんだかんだともったいをつけておいても登場人物はきっかけさえあればすぐにペラペラと主人公に聞かれるままになんでも喋ってしまうし、ハードボイルドにしてはハードさがまったく足りない。

タイトルもなんだかぼんやりしてるし、題材の割りにはもうひとつぱりっとしない、何だかよくわからない本でした。
桐野夏生のファンで『顔に降りかかる雨』『天使に見捨てられた夜』なんかの愛読者には楽しい作品かもしれないけど、それ以外の読者にはどーなんでしょーねー・・・。


梅満開。

本日のブッチくん
体重12g。食欲呼吸状態異常なし。元気なのに体重が減る。餌を食べているのに増えない。謎。