落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

シークレット・ドライブ

2010年03月10日 | book
『白洲次郎 占領を背負った男』 北康利著

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こないだ図書館で伝記ばっかり何冊もまとめ借りしたんですがー。行き当たりばったりに。
白洲次郎ってちょっとブームだったみたいですね?去年TVドラマにもなったそーですし。知らなんだわ。どっちみち観なかったと思うけど(主演のお方がちーとニガテでしてー)。視聴率はイマイチだったらしーですけど、どんくらい話題になったんかしら?
この本はドラマの原案にもなってけっこー売れたっぽいけど、それも知りませんでしたー。あー世の中から落ちこぼれてるなーアタシ。やべー。

白洲さんはぐりと(だいたい)同郷の人ですね。1902年生まれとゆーと、ぐりの母方の祖父と同世代。
士族出身の実業家とゆー裕福なおうちに生まれたそーですが、お金持ちったってハンパじゃありません。おとうさんのご趣味は家を建てること。豪邸を日本各地にぼんぼん建てて、建ったら満足して速攻でまたべつの豪邸を建てはじめるほど短気な人だったそーです。この手の人を関西では「いらち」っていいますけども。
白洲さんご本人も中学時代(!)からクルマが大好きで、亡くなるまで相当なカ―キチだったらしー。当時の日本人としては比較的長身で美男子でもあったので、早いうちからかなりモテたとか。なにしろ10代当時のガールフレンドは10歳ほども年長のタカラジェンヌだったとゆー伝説もある。
ケンブリッジ大学に留学して9年間イギリスで過ごしたためたいへん英語が堪能で、かつ階級社会独特の品格に非常にうるさい人でもあったそーです。マッカーサー相手に平気で怒鳴るくらいこわいもの知らずのタフ・ネゴシエーターという一面は、たぶんこの海外生活と関係があるんじゃないかなー?もともと喧嘩っ早くて言葉づかいはあんまし丁寧な人じゃなかったみたいですが。
オシャレだといわれることをいやがっていたわりにはファッションにかなりこだわりがあり、日本人で初めてジーンズをはいた人だともいわれている。晩年はイッセイミヤケのモデルを務めたこともある。

読んでて近衞文隆(公爵で元首相の近衞文麿の長男)とか西竹一男爵の伝記をめちゃめちゃ思い出しましたが。
戦前はチョ―大金持ちのぼんで海外に留学してて、スポーツ万能でクルマ好き。でもたぶん、この3人のなかではおそらく間違いなく白洲さんがいちばんイケメンですね(爆)。そして長生きした。
バロン西は硫黄島で戦死したし、白洲さん自身が仕えた近衞文麿も終戦直後に自殺、長男の文隆も1956年シベリアで死んだ。白洲さんは戦場へ行くことなく町田の農村で終戦を迎え、日本の戦後復興のために活躍した。
天才でイケメンで金持ちでオシャレ、こんだけかっこいいのに白洲さんが他の同時代の偉人のように有名にならなかったのは、もしかしたら彼の人生に悲劇がなかったからかもしれない。日本人て悲劇好きじゃないですか。判官贔屓っての。それほどかっこいい。口が悪くて政治家にはならなかったせいもあるかもしれないけど、政治家の道を選ばなかったことすらクールに思える。

著者の白洲さんに対する愛が全編にみちみちていて、読んでてすっかりぐりも白洲さんファンになってしまいました。武相荘こんど行ってみよっと。
まあしかし男なら誰でも憧れる生き方だろうし、女性からみてもすごく素敵な人だったろーなと思う。熱血漢でありながら常に広い視野を持ち、長いものに巻かれず、それでいて弱いものに優しく、礼節を重んじ、仕事と遊びを等しく愛した。歴史の表舞台にたつことなく国を支え、嫌われること・否定されることを決してを恐れず、常に改革を好んだ。
ぐりがとくにいいなあと思ったのは晩年の白洲さんを描いたパート。ケンブリッジ時代からの親友と78歳で再会して別れるとき、二度と生きて会えないかもしれないのにろくに別れの挨拶もしなかったというくだりや、毎月の健康診断ではいつも検査を受けずに帰ってしまったなんてところとか、亡くなる直前、病院に行く迎えの車を待ちながら、TVの大相撲中継を見て「相撲も千秋楽、パパも千秋楽」なんて弱音を吐いたというのも、なんかカワイイなあと思ってしまった。
どんなに強くてもかっこよくても、人間やっぱし愛嬌が肝心です。かわいさも味。
にしてもアタシゃどんだけじいさん好きなんだ。重症?


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