落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

金で買うセックスを愛と呼べるか

2010年03月21日 | book
『売春論』 酒井あゆみ著

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タイトルに偽りあり。
著者はぐりと同世代(現在いわゆるアラフォー)、10代〜20代の一時期風俗嬢として働いた後、ライターに転身した人だが、どーもその経歴だけで「フーゾク(売春)のすべてを知ってるでござい」な断定調で文章を書いておられるのですがー。
ちょっと待てい。
ぐりだって売春のすべてなんか知らないし、エラソーなことはとってもいえた義理ではございませんけども。それでも彼女の断定調はめちゃめちゃ気になる。
彼女も認める通り、風俗業界は日々刻々と変化している。ぐりが直接あるジャーナリストに聞いたところによれば、いまどきは3ヶ月もすれば現場はコロッと全部が変わってるなんてこともあり得るそーである。だから「あたしゃなんでも知ってるぜ」的な風俗論などありえない。
それに、ぐりが知るだけでも、酒井氏が述べている範囲の売春は日本に存在している売春業のほんの一部のそのまたカケラみたいなもんである。それも相当になまぬるい方の一部分でしかない。
だから、この本は読み手をかなり選ぶし、読み手によってはかなりキケンな本にもなってしまう。お願いだから鵜呑みにしないでねっ?ねっ?みたいな。

それはそれとして、風俗嬢が意識的にせよ無意識的にせよ、どこかで「誰かにかまってほしい」=客とふたりきりになったほんの短時間だけでも「かわいい」「きれいだ」などとちやほやされて求められたいという気持ちでこの仕事を選んでいる、という心理や、売春をして得た金(日払い)を持っているのが不快でついつい散財してしまう、売春すると夢がなくなっていって、何かがしたい(旅行がしたい、勉強したいetc.)という欲求が「どうでもよくなる」なんという、売春業から抜けられなくなっていく心情は、確かに読んでてなるほどなと思わされる。
たとえばホストクラブの顧客には風俗嬢や水商売の女性がかなり多いが、彼女たちは仕事中は男性にかしづき、あるいは職業上蔑まれている。ホストクラブに行けば立場は逆転する。ホストの仕事は顧客の自尊心を満足させることである。性風俗で働いているがゆえの「私は人に尊敬されない仕事をしている」というストレスが、ホストクラブでは自己肯定に完全に変換してもらえる。だから彼女たちはホストクラブに通い、肉体で稼いだ報酬を貢いでしまう。

しかしこの本のぬるさは正直アブナイと思う。風俗嬢でなくなった今も、酒井氏がなんだかんだいいつつ風俗業界にいいように利用されてるんではないかとゆー気がしてしょーがない。
まあ大きなお世話ですけども。

ところで、今ちょっと事情があってこのテの本を続けて読んでるんですが(こないだも読んだばっかですな)、小谷野敦の『日本売春史―遊行女婦からソープランドまで』が全然ダメでさっそく挫折。
『悲望』はチョーおもろかったんですけどね・・・なんかもう、いちいち「だれそれ(他の研究者)が〜〜〜といっているが、それはマチガイでこれこれがおかしい、ランボー」みたいな揚げ足とりばーーーーーっかりで、もーーーなんなの?!って感じ。研究者同士のケンカをなにゆえに著作上でやらにゃいかんのかがわからん!!キショイ!!無理!!やめてえ〜。
ちょっと前に読んだ『平成オトコ塾―悩める男子のための全6章』(澁谷知美著)もなんかそんなよーな自己弁護的な論調が目障りでやたら気になったけど・・・そーいやこれの某密林のレビューに小谷野敦が実名で投稿してて笑ったわあ〜。
あ〜よくわからない業界ですなー。ついていけん。