落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

木の森の空に飛ぶ鳥

2010年03月26日 | book
『欲望のゆくえ 子どもを性の対象とする人たち』 香月真理子著

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昨今アツい話題の児童ポルノ続きのネタで恐縮ですが。
この本は新聞の書評かなんかで見かけてめっちゃ期待して図書館で借りたんだけど(すごい予約待ちだった。予約待ちが多いとつい期待しちゃうわたしもゲンキンです)、んんんんん、期待・・・ハズレ。残念!
著者は6歳の時に見知らぬ男から性的虐待を受け、その記憶に長い間苦しめられて来た当事者である。その当事者がロリコン本人を取材するってんだからそりゃ期待しちゃいますよおー。
でもねー。結果は・・・んー、やっぱ無理あったかー・・・って感じ。アプローチはいいと思う。でも明らかに踏み込み不足。8章で8人(8件)のロリコンに取材してるんだけど、中には明らかに蛇足な章もある。たとえば第5章の女性漫画家は完全に見当はずれな人選だと思った。だって彼女は表現の手段のひとつとして小児性愛を扱っているけど、彼女自身の性の対象は子どもではない(よな?)。それと第8章の服役中の男性も手紙のやり取りだけの取材で、しかも手紙の内容もどうでもいいような当たり障りのないことばかりで、ここはまるごとカットしてもよかったんではないかと思う。

彼女自身が児童虐待の当事者であったことと、小児性愛者へのツッコミが微妙にぬるいのは無関係なのかもしれない(ぐりは無関係だとは思わないが)。
小児性愛者を社会から排除し、糾弾したところで、世間にあふれる児童ポルノや児童虐待、児童買春などの社会問題が解決するわけじゃないこともよくわかっているつもりだ。だから、この本に登場する方々の「小児性愛者にも‘性の対象’がどうしても必要」「児童ポルノを規制されたら小児性愛者の行き場がなくなる」なんという弁にはある程度納得もできる。
でもね。今やネットに氾濫してる児童ポルノの被害児童は乳幼児レベルまで低年齢化してるんだよ。そんでそーゆーのをダウンロードして鑑賞するのは子どもなんだよ。だって誰でもダウンロードできるとこにほっぽってあんだもん。自分で児童ポルノをつくって売ってる子どももいる。自分の裸を売る子もいれば、同級生や兄弟姉妹の裸を撮って売る子もいる。世も末どころの騒ぎじゃない。
こんな環境で育った子たちが将来どうなるか、小児性愛者の皆さんはどーでもいいんでしょーね。あなたがたの大事な愛する人=勃起出来る人はなにしろ「子ども」だもんね。成長して大人になったらどーだっていいんだもんね。あーそーですかそーですか。

でも小児性愛者がみんなそんな自己チューばっかってわけでもない。
第1章の会社員なんかすごいがんばってるし、誰もが彼くらい自制できれば平和なのにと思う。自制すればこそ、彼は孤独の苦しみに打ち克つことができたし、多くの人を慰めることもできたのだろうと思う。生産性のある変態(爆)。すばらしいじゃありませんか。
この本に登場する人の何人かは、「子どもじゃなきゃ勃起しない」とゆー真性小児性愛者とは違う。大人ともセックスできるはずなのに、子どもに手を出すことがやめられない。その理由が、子どもは自分より弱いから、というところは共通している。そんなの卑怯の極みでしょ。人間誰だって否定されるのは怖いよ。けどそんなもの怖がってたら生きてけないし、怖いからって否定されそうな対象からはただ逃げるだけなんて、自分で自分を否定してるのといっしょじゃんか。だからって自分より弱いものを暴力で支配して欲望を満たそうなんて、人間のすることじゃないと思う。ゆるさんぜよ。

アダルトゲームやジュニアアイドルソフトなどの業界人へのインタビューや、法整備問題、更生プログラム問題などを取材したコラムは分量的にも読みやすくてなかなか参考になりました。
第1章の会社員や、第4章のクラブきっず事件の元教諭なんかの言い分は確かに一読の価値はあったです。それだけに、本全体の完成度が非常に惜しかった。


関連レビュー:
『13歳の夏に僕は生まれた』
『闇の子供たち』
『児童性愛者―ペドファイル』 ヤコブ・ビリング著
『子どもと性被害』 吉田タカコ著
『ミスティック・リバー』 デニス・ルヘイン著
『家のない少女たち』 鈴木大介著
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『永遠の仔』 天童荒太著
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『薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い』 伊藤文學著
『子どものねだん―バンコク児童売春地獄の四年間』 マリー=フランス・ボッツ著
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