落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

いつかは誰も

2008年09月13日 | movie
『おくりびと』

所属していたオーケストラが解散になり、失業したチェリストの大悟(本木雅弘)は妻(広末涼子)を連れて故郷の山形に戻って来たのだが、旅行代理店だと思って応募した仕事はなんと納棺師。葬儀社から依頼されて遺体を浄め経帷子を着せて棺に納める仕事だった。
モントリオール国際映画祭でグランプリを受賞、2008年度アカデミー賞外国語映画部門日本代表に選ばれた期待作。

ぐりは在日韓国人なので日本の納棺とゆーのはもちろん見たことはなくって(韓国式の納棺ならある。映画『祝祭』参照)、こういう仕事はずっと葬儀屋さんの守備範囲だと思ってました。湯灌師って職業は知ってたんだけど。湯灌は専用の湯舟でご遺体を入浴させちゃうらしい。この映画に出てくる納棺師がやってるのは、湯灌を簡略化したやつですね。
まあだから様式化されてるとはいえ、納棺師のしてることそのものはとくにそんなに変わったことではなくて、かつては葬儀屋さん、それより前は遺族が自らやってたことなんだよね。映画でもいってたけど。ものすごく特別なことってワケじゃない。
つまりこの映画のほんとうのテーマは納棺そのものじゃなくて、納棺を媒体にした人の生き死に、家族、出会い、別れ、愛情の風景。どんな人もみんないつかは死ぬ、究極的にその部分では絶対に人は平等だし、その事実を前にしてはどんな理屈も世間体も意味がない。

ずーっと公開を楽しみにしてたのでここ最近の試写の大反響や映画祭のニュースがなんだかなって感じですが、ウン、いい映画でしたよ。おもしろかった。
正直にいってぶっちゃけそんな大した映画じゃないけどね。ツッコミどころはあるし、傑作かっちゅーとそーでもないけど(爆)。だってナレーション多すぎるし(しかも全部いらない)、編集おかしいし。テーマがテーマだし、コレ本来はもっと地味にマジメなんだけどサラッとホットな小品、ってレベルの映画だったんじゃないかなあ?どう考えてもそんなご大層な映画じゃない。
けど自ら発案した主演のもっくんの思い入れはすごく伝わるし、出演者の演技は全部いいです。山崎努もいいし、もっくんもいいし(このヒト実は良い役者だと思います)、意外にヒロスエちゃんもよかった。ノー天気な現代っ子のヨメって感じが全然嫌味なく出てて、ぐりは好きだなあ。なにしろ15歳も離れたもっくんと夫婦役でまったく違和感ないってのがいいじゃないですか。

脚本の小山薫堂氏は本職はTVの構成作家で、映画はこれが初脚本。そのせいか全編異常にTVくさくて、内容としても映画というよりTVの2時間ドラマって感じでした。マーケティング的にはこれはこれでいいんだろうけど、映画単体でみると完成度にちょっともったいなさは感じます。もっとこんな風にもできたろうに、あんな風にもできたろうに、なんてひっかかる部分もいろいろあるにはある。
でも単純に観ていて気持ちのいい、清々しい映画ではあります。人間誰でもみんな死ぬし、死んだら誰かのお世話になってあの世に行く、そーゆー当り前のことに素直に向かいあう気持ちにさせてくれる映画。あるようで今までなかった映画です。ハイ。
とりあえずぐりは、「牛乳飲みたいなー」とか「チキンが食べたいなー」とか思いながら観てました。飲み食いのシーンがすごく多くってさあ。しかもおいしそうなんだもん。死人もいっぱい出てくるけど、ナニゲにうまくバランスはとれてる作品でしたよ。

『おくりびと』30億円狙い好ダッシュ
金鶏百花賞で観客のアンケートによる作品、監督、主演男優賞の3冠獲得。

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