百島百話 メルヘンと禅 百会倶楽部 百々物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

まえがき ~父からの伝言~

2010年05月11日 | 人生航海
私は、大正時代の末、瀬戸内海のほぼ中央に位置する百島という小さな島に生まれて、昭和から平成にかけて多難な時代を過ごしてきた。

今では既に遠い過去の如く消えんとする昔を想い起し乍ら、偽りの無い事実を述べる。

戦争を知らない今の若い人達に、当時の出来事を伝えたく、出来る限り詳しく書き残すことにしたのである。

私は、まだ14歳の少年の身で、支那(中国)大陸の揚子江に機帆船で派遣されて、国の為にと思い三年間を過ごした。
その後、南方戦線に参加することにもなった。
ジャワ島の敵前上陸にも加わり、各地で危険に曝されながら、運良く今まで生き延びてこられたことが、何故か不思議なことのように思えてならない。

そう気付き、将来の何かの参考にと思い、まだ元気なうちに趣味も兼ねて、呆け防止にもなると思いパソコンを習って書くことにした。
初めは難しいと思ったが、続けているうちに案外楽しくなり、毎日続けているが、幾ら元気
だと言っても年齢には逆らえない。

百島は、山陽筋の中央に位置して、尾道港(市街地)の南東約15キロにある沼隈半島の西南に位置する小さな島である。

山には木々の青葉が多く繁り、自然美溢れる風光明媚な島であるが、未だ本土との架橋もなく、生活は不便で、その上人口の減少は留まらず、畑地は荒れ放題で空き家も年々増える一方である。

昭和30年4月、行政区画により百島は、尾道市に合併された。
その当時の人口は約2500人、戸数は約500戸位であったが、その後、経済成長時代に入るや時代の流れに従って、島民は橋の架かる見込みもない不便な島に見切りをつけて、島を離れて都会に出る傾向で人口の減少は留まらず、現在は700人を割る迄に至った。(平成15年現在)

百島に初めて住み着いた者は誰か・・平家の落人説や、他に嘉吉の乱のおりに、赤松満祐の家臣が逃れて住み着いたという話や百島七人衆あるいは八軒衆と言う説もあり、沼隈郡誌にも、いろんな言い伝えが残っているらしい。
私の先祖も、その中の一人かもしれないが、遠い昔のことは知る由もない。

そんな話は別として、現在は人の寿命も年々延びて、誠に喜ばしい限りであるが、近頃の世相や、ニュースを観ると、政財界の汚職、金融関係の不正事件、青少年の不良化、犯罪の多発、警察関係の不祥事件、景気の低迷、失業問題など、先行きが心配なことも挙げれば限りがないほどである。

しかし、私達老人にとっては、年金制度はある程度充実し、老後生活も子供に面倒をかけず暮らせるのが何よりである。

政治に関して、幾ら述べて見ても仕方ないが、私達の望みとしては今後二度と再び戦争を起さないことが何よりも大切だと思う。

我が国は世界の先進国として、また悲惨な戦争の経験国として、誇りを持って地球上の平和に貢献してほしい。

皆が、安心して暮らせる生活が出来る事を期待するのは当然である。

そんな日の訪れを望んでいるのは世界中の人達の願いである。 
「平成15年(2003年)現在」

人生航路百景

2010年05月11日 | 百伝。
広島市内に株式会社 広島シッピングという海運会社がある。

社長の旗手安夫さん(67歳)は、日々毎日の出来事の人生雑感・・人生航路百景を見事に描いている。

そして、百島で過ごされた少年時代のエピソードを読んでいると大変な秀逸であり感動さえ覚える。

NHKのラジオ深夜便にご登場願ってもよいかと思うぐらいである。

・・父を想い出す。

二年前、子供の頃から船乗りだった父が亡くなった。

父は、「人生航海」という自伝を書き残している。

百島で過ごした貧しい子供時代・・両親を早く亡くし小学校を出ると働き始めて、少年時代には船乗りになって中国大陸や南方までに渡っている。

そんな父は、今考えるとユニークな考え方の持ち主だったかもしれない。

息子たちを船乗りにさせようとしたのかどうかは・・分からない。

私も高校時代の夏休み・・父がチャーターしていた貨物船にアルバイトとして乗り込んだことがある。
横浜から北海道の網走までの海上生活だ。
(演歌歌手の鳥羽一郎さんの叔父さんになる方も甲板員として乗っていたのかな?)
東京の大学に進学した時も、父の貨物船を利用して上京。
上陸したのは東京港豊洲埠頭だった。

今年三月、私は、突然呼吸困難から急性心不全となり、緊急入院・・しばらく入院していた。
病名は、拡張性心筋症・・。
未だに、自宅療養みたいな生活を過ごしている。

この頃は、目が覚める朝に感謝である(笑)。

生きることは、いづれは死ぬということなのである。

父の人生航海への想いを新たにする。

そして、生きる勇気を頂きました。
旗手安夫さんのブログに感謝にしています。