日本が世界一という大団円の余韻が冷めらぬので、本日は対決物、嵐を呼ぶ男の1枚を――
■Together ! / Philly Joe Jones & Elvin Jones (Atlantic)
久々にバトル物ということであれば、もちろんドラム合戦しかありません。しかもここで対決するのが、フィリー・ジョーとエルビンの両ジョーンズですから、ジャズ者にとっては、名前だけで辛抱たまらん状態です。
皆様、良くご存知のとおり、フィリー・ジョー・ジョーンズは1950年代半ばのマイルス・デイビスのバンドではリズムの要として大活躍♪ その快適なクッションは、グッドオールド・エモーションがたっぷりでした。
一方、エルビン・ジョーンズは、1960年代のジョン・コルトレーンのバンドで強烈なポリリズムを敲き出していた豪の者! 全身から発散される黒い呪術的なビートは、ジャズ・ドラムスでは唯一無二の完成形となっています。
ですからこの2人の対決にはある意味で新旧対決、またある意味ではジャズはリズムとビートの音楽だっ! という証明を確立する戦いであります。
といっても、ここでは単なるドラム合戦に終始するわけではなく、なかなか楽しいハードバップ作品でもあります。メンバーはブルー・ミッチェル(tp)、カーティス・フラー(tb)、ハンク・モブレー(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b) というオールスターズに、フィリー・ジョーとエルビンのドラムスがついている豪華版です。録音は1961年2月2日ですが、発売は1964年のことでした。その内容は――
A-1 Le Roi
何となく東映か日活のアクション映画に使われそうなテーマが豪快に演奏される、その瞬間だけでワクワクしてきます。もちろんバックのリズムでは2人の大物ドラマーがそれぞれの4ビートを敲いていますし、サビでワルツ調が入るあたりもスリルがあります。
アドリブパートはハンク・モブレー、カーティス・フラー、ウィントン・ケリーが快調に務め上げ、いよいよドラム合戦♪ 左チャンネルがエルビン、右チャンネルがフィリー・ジョーですが、短いのが良いのか悪いのか賛否両論でしょう。個人的にはその部分よりも、バックのリズムやビートの刻み方を聴いて楽しんでいます。
A-2 Beau-Ty
巧みなドラムスの導かれ、ラテン調から正統派4ビートまで入った魅惑のテーマが奏でなれ、アドリブパートの先発はカーティス・フラーが本領発揮、大らかに吹きまくります。続くブルー・ミッチェルも、やや線の細い音色にぴったりの歌心を聴かせ、お待ちかね、ハンク・モブレーが絶好調のバカノリ大会です♪
そしていよいよドラム合戦に突入! 真ん中から右チャンネルがフィリー・ジョー、その逆に左チャンネルがエルビンです。もちろんここは「嵐を呼ぶ男」状態! これもジャズならではの楽しみになっています。
B-1 Brown Sugra
重たいビートが魅力のゴスペル・ハードバップです。それを導くのはフィリー・ジョーですが、エルビンの控えめなサポートも好印象です。
で、アドリブパートの先発はハンク・モブレーが絶好調に吹きまくりですから、私は、もうここで悶絶しています。さらにカーティス・フラーがお馴染みの、そよ風の中で吹いているようなフラー節を全開させていますし、ブルー・ミッチェルは十八番の分かりやすいフレーズの連発して和みを生み出しています。
リズム隊のグルーヴも当然、最高で、ウィントン・ケリーの弾みまくりピアノ、ブリブリとスイングするポール・チェンバースはソロにバッキングに、間然することがありません。
そしてここでのドラム合戦は、A面同様に右がフィリー・ジョー、左がエルビンという布陣ながら、ゴッタ煮のように入り乱れた白熱的なノリがあって、思わず息がつまり、手に汗握る瞬間が頻発します。う~ん、こんな演奏を生で体験出来たら、至福の極みでしょうねぇ♪
ということで、これはドラム・ソロが長くて退屈という御意見もございましょうが、やはりジャズの魅力のひとつをきちんと記録した名盤だと思います。個人的には大好きなハンク・モブレーが好調なので、もちろんモブレーの棚に入れていますが、それ故にハードバッブの魅力も存分に楽しめる作品だと思います。
ちなみにこのアルバムは現在廃盤らしいですが、実はフィリー・ジョー・ジョーンズの忘れられた名盤「Philly Joe's Beat」と 2in1 形式で復刻中ですので、ジャケ写からネタ元でご確認願います。