OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ベイシー対ミルト

2006-08-22 19:57:19 | Weblog

今年の甲子園大会決勝戦、再試合の最後の最後でエース対決とは、台本があっても演出出来ない運命の対決でしたね♪

結果はともかく、こういう勝負のアヤを楽しむのがスポーツ観戦の醍醐味だと思います。

翻ってボクシングの亀田チャンプは、元王者と再戦するらしいですが、前回のインチキがありますから、次にどんなに良い真剣勝負をやっても、また八百長だろう! まあ、上手くなったねぇ、八百長がっ! と言われてしまうでしょう。

それが勝負の世界、勝負をナメタ者に対する世間の見方です。

ということで、本日の1枚は対決も自然体でやれば和むものという――

Milt Jackson + Count Basie + The Big Band Vol.1 (Pablo)

天才ヴァイブラフォン奏者のミルト・ジャクソンは、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)という有名なレギュラーバンドをやっていながら、他流試合の多い人です。それだけジャズ界では飛び抜けた実力と汎用性を身につけていた証なんでしょうが、何時如何なるセッションでも、ミルト・ジャクソンという個性を失うことが無いのは、天性の資質というところでしょうか。

このアルバムはカウント・ベイシー・オーケストラと吹き込んだ傑作盤で、所謂スタアの競演♪ しかも製作が1950年代に多くのオールスタア物を出していたヴァーヴレーベル直系のパブロということで、隅々まで行き届いた仕上がりになっています。まず演目が最高なんですねぇ~♪

録音は1978年1月18日、メンバーは一方のスタアとしてミルト・ジャクソン(vib)、対するカウント・ベイシー楽団はカウント・ベイシー(p)、フレディ・グリーン(g)、ジョン・クレイトン(b)、ブッチ・マイルス(ds) という強力リズム隊を核に、一騎当千のブラス&リード陣が顔を揃えています――

A-1 The Come Back
 1950年代のカウント・ベイシー楽団のスタア歌手=ジョー・ウィリアムスの十八番だった変則ブルースです。ここでの演奏はオリジナルのアレンジを大切にしながら、このバンドだけのイナタイ雰囲気と緩やかなノリを聴かせてくれます。
 それはまず、リズム隊だけでペースを設定し、要所でホーン隊が参加していくというお約束ですが、ミルト・ジャクソンはそのグルーヴを掴みきり、自然体でアドリブに滑り込んでいく瞬間で、もうゾクゾクしてきます。そして全体に真っ黒な雰囲気が横溢したところに登場するテナーサックスは、エリック・ディクソン! この人のタフなところも素敵です。
 演奏はこの後、再びミルト・ジャクソンがファンキーなキメを連発し、ミュート・トランペットの絡みを従えて盛り上がっていくのでした。

A-2 Basie
 一転して高速4ビートでバンドが咆哮し、ミルト・ジャクソンがリフを縫って強烈なアドリブを聴かせてくれる、本当に豪快な演奏です。
 原曲は1960年代からカンウト・ベイシー楽団が十八番にしていたモダンなネタだけに、ミルト・ジャクソンもツボを外していません。
 そしてそれをがっちり支えるのが、フレディ・グリーンのリズムギターとブッチ・マイルスのキメまくりドラムスです。もちろんカウント・ベイシーのブギウギ系ピアノにも腰が浮きます♪ あぁ、何度聴いても最高です!

A-3 Corner Poket
 これまたカウント・ベイシー楽団を代表するヒット曲で、このバンドでは一番人気のギタリスト=フレディ・グリーンの作編曲が冴えまくる永遠の定番です。
 となれば、歌心優先のミルト・ジャクソンのアドリブが悪いわけが無く、どこまでも歌になっているバンドの演奏と一体となった名演が繰り広げられています。もちろんフレディ・グリーンのリズムギターも最高♪

A-4 Lady In Lace
 ミディアムテンポで膨らみのあるグルーヴが魅力の、これはもうカンウト・ベイシーのバンドでなければ出来ないノリの中で、ミルト・ジャクソンが奮闘しますが、ここではバンド側の判定勝ちでしょうか……。

A-5 Blues For Joe Turer
 ここでの演奏はリズム隊&ミルト・ジャクソンというコンボ形式です。
 全体が、当然カウント・ベイシーの「間の芸術」的なピアノを中心として進みますので、ミルト・ジャクソンも最高のブルース・フィーリングでこれに応えるあたりが、スリルと寛ぎのジャズの喜びに満ちているのでした。

B-1 Good Time Blues
 これも1960年代からカウント・ベイシー楽団では十八番になっているブルースで、まずはリズム隊だけの演奏からスタート♪ フレディ・グリーンのリズムギターが冴え、ジョン・クレイトンのベースが唸り、ブッチ・マイルスが淡々とビートを送り出す中、カウント・ベイシーのピアノが切り詰めた音符で最高のブルースを聴かせてくれますが、こういう思わせぶりが、次の興奮を呼び起こすという最高の仕掛けになっているのです。
 するとミルト・ジャクソンが倍テンポまで持ち出してモダンなブルースの対比を聴かせるという、芸の細かさと大サービスの展開です。
 そしてクライマックスは痛快なホーン陣の合奏とリフの嵐! 

B-2 Lil' Darlin'
 これまたカウント・ベイシー楽団の大ヒット演目で、超スローなタメとグルーヴは、当にこのバンドだけの持ち味というところです。
 そしてミルト・ジャクソンもまた、スロー物が大得意とあって、全く余人のつけ入るスキが無い演奏を聴かせてくれるのです。
 お約束のフレディ・グリーンのキメも鮮やかですし、膨らみのあるアンサンブルにミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンがどこまでも優しく響くという、心に染み入る仕上がりです。

B-3 Big Stuff
 いきなりカウント・ベイシーの一人舞台というピアノがたっぷりです。そして続けてドラムスとベースを従えてのトリオ演奏から、いつしかバックにはド迫力のリフをつけるオーケストラが!
 後半に入ると、さらに自然にミルト・ジャクソンが登場しているという、何だか魔法のような演奏ですが、鉄の結束というカウント・ベイシー楽団に外様のミルト・ジャクソンが違和感無く融け込んでしまうあたりに、両者の懐の深さが感じられます。

B-4 Blue And Sentimental
 カウント・ベイシーが書いた、これも永遠の「せつない系」名曲です。
 もちろんスローからミディアムテンポの中で、如何に元メロディを膨らませ、美メロアドリブを披露するかが勝負の分かれ目でしょうか。
 ここでのミルト・ジャクソンはテーマの変奏を主体にしながら絶妙な歌心を発揮しています。
 ちなみにこれもコンボ演奏ですが、あぁ、それにしてもフレディ・グリーンの存在感の強さ!

ということで、個人的には好きな作品なんですが、ガチガチのベイシー楽団ファンからは評判が良くないと言われています。まあ、ミルト・ジャクソンがでしゃばり過ぎという雰囲気も濃厚ですからねぇ……。

ただしこの時のセッションは、かなり快調だったようで、このアルバムの続篇「Vol.2」も発売されています。

しかし現行CDのマスタリングはイマイチじゃないでしょうか? 何とか日本の素晴らしい技術でリマスターを熱望しているのですが……。

コメント
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