■ハード・ラック・ウーマン / Kiss (Casablanca / ビクター音楽産業)
シングル盤の利点は様々にありますが、その中のひとつが、自分の好きな曲だけを聴けるという事かと思います。
例えば本日ご紹介の曲は、1970年代中頃に所謂「化粧バンド」として我が国でも大ブレイクしたキッスの大ヒット!
本来はハードロックのバカ騒ぎ系演奏が持ち味のバンドにしては、例外的にアコースティックの味わいも強い、なかなかの名曲だと思いますし、なによりもハスキーなボーカルで歌われるメロディのせつなさ、女を棄てるために都合の良い言い訳に徹する自嘲的な歌詞の内容が、如何にも1970年代にはジャストミート♪♪~♪
もちろん当時のサイケおやじには、キッスなんていうバンドはお呼びじゃない!
夢中になって追っかけまでやっている女の子は大勢いましたし、ちょっとした社会現象になったのも、ステージで火を吹くとか、歌舞伎系のキワモノメイク、そして単刀直入にしてスパイスの効いたR&Rな演奏が上手く当たったのでしょう。
でもねぇ~、すっかりおじさんモードに入りかけていた私には、鼻白むばかり……、
まあ、パンクロックよりは、幾分マシですが……。
そんなわけですから、この曲を聴いた時には良いなぁ~♪ と思ってもアルバムなんて、他に欲しいレコードが山のようにあったのは言わずもがな、そもそも他の曲に魅力を感じないのですから、シングル盤を買う他はなかったのです。しかも実際に買ったのは、百円の中古盤ですから、いやはやなんとも……。
それでも私的には名曲に変わりはなく、サイケおやじ的オールタイムのベスト200には入るでしょう。
ちなみに歌っているのはピーター・クリスという、ビジュアル的にはタヌキメイクのドラマーですが、バンドの中ではリードボーカルをとることが極めて稀な人ですから、この大ヒットは皮肉かもしれません。さらに驚いたことには、もうひとつ、キッスにとっては畢生の美メロ曲という「Beth」も、この人の持ち歌だったんですねぇ~♪ これも大好きなんですよ♪♪~♪
で、キッスは全盛時にメンバー各々のソロアルバムも制作していますから、サイケおやじは意を決してピーター・クリスのアルバムを買いました。まあ、もちろん中古盤ですけど、やっぱりというか、その内容はボーカルに専念したような、中途半端なAOR……。
しかし本人は自信があったのでしょう、間もなくキッスを辞めてソロ歌手になったらしいのですが、結果は落ち目のなんとやらです。そしてこの時に知ったのですが、なんとピーター・クリスは昭和20(1945)年生まれ! ということは、キッスがブレイクした時には三十路に入っていたわけですから、落ち着きがあって当然かっ!?
う~ん、芸能界って、本当に難しいですねぇ。その意味で、キッスが今もしぶとく生き残っているのは驚異的かもしれません。
一応、彼等の名誉のために書いておきますが、サイケおやじはキッスというバンドを、全くバカにしているわけではありません。ストーンズのリフを軽薄にパクッたような曲があったり、なによりも所謂ロック魂が本物だったからこそ、いろんなことに手をだし、メンバーチェンジや再結成があっても、決してノスタルジックサーキットには入っていない姿勢が、潔いと感じます。我が国のデーモン小暮閣下が率いていたバンドの「聖飢魔II」は、明らかにキッスを誇張していたほどに、その彼等の音楽性は堂々の芯が通っているのです。
ということで、ロックもLPで聴く時代に入っていながら、私はシングル盤を買っていたという、本日もお粗末な一席でした。
あぁ、ジャズモードへの復帰が……。