■迷信 / Stevie Wonder (Tamla / ビクター音楽産業)
価値観が変わってしまうとか、人生の衝撃とか、それは十人十色に様々あると思います。
日頃から何かにつけて大袈裟なサイケおやじにしても、本日ご紹介のスティーヴィー・ワンダーには、これまで以上に歓喜悶絶させられた記憶が、尚更に鮮明な1曲です。
イントロのリミッターが効いたドラムスのシンプルにしてヘヴィなビート、それに続くクラヴィネットによるファンキーなリフ! それはキーボードの多重録音効果も鮮やかなスティーヴィー・ワンダーの独り舞台なんですが、歌が始まってから被さってくるホーンリフのカッコ良さも、実に衝撃的でした。
日本で世に出たのは昭和48(1973)年でしたが、実はFENでは前年末から流されまくっていたと思います。もちろんサイケおやじは、それを聴いた瞬間、全身に電気が流れたという些か使い古された言い回しが、決して嘘では無かったことを実感したのです。
そして発売されたシングル盤を、速攻でゲットしたのは言わずもがな!
今でこそ、こうしたキーボードファンクは、例えばハービー・ハンコックがやっていたとか、決して珍しいものでは無くなっていますが、当時は衝撃的に新鮮でした。何よりもホーンセクション以外の全てを、スティーヴィー・ワンダーが自ら作り出しているという事実にも驚愕させられるだけです。
タメの効いたドラミングにしても、良く聴けば幾層にも重ねられているようですし、鳴り続けてビートをキープしていく低音域のキーボードプレイ、さらにクールな熱気を満たしていく、最高にキャッチーなファンキーリフ! スティーヴィー・ワンダーのボーカルも、あの「スティーヴィー節」が全開という「力み」と「味」が、短調なメロディと日本人には意味不明の「迷信」を唱えるという、文字通りの熱唱が痛快です。
というかボーカルパートとバックの演奏カラオケが実に素晴らしく融合しているんですねぇ~♪ 歌の合の手に入るドラムスのブレイクとか、あるいはキメのリフの整合性は直観的に考え抜かれたとしか思えません。
ですから、当然ながらチャートのトップを独走するウルトラ級のメガヒットでした。
ちなみにこの曲は、ジェフ・ベックが元バニラ・ファッジのティム・ボガード(b,vo)、そしてカーマイ・アピス(ds,vo) と組んだ執念のハードロックバンドというBB&Aでもカバーされていますが、ジェフ・ベック本人が語るところによれば、この曲は本来、自分にプレゼントされたものだと言い張るところから、当時は相当に熱くなっていたらしいですねぇ。すると後年、「哀しみの恋人達」をスティーヴィー・ワンダーが提供したのは、罪滅ぼし!?
まあ、それはそれとして、この曲にシビレたサイケおやじは、既に全米では物凄い勢いで売れているというスティーヴィー・ワンダーの新作アルバムを聴きたくてたまりませんでした。
ところが当時は日本とアメリカでは発売にタイムラグがあり、当然ながら我が国での発売状況なんて、数か月遅れがザラでしたし、輸入盤も簡単には手に入らず、そもそも扱っている店が極端に少なく、さらに値段も日本盤以上に高かったのですから……。
しかしそこに現れたのが救いの神♪♪~♪
サイケおやじは、ついに禁断の裏ワザを知ることになるのですが、それは次回のお楽しみと致します。