■対自核 / Uriah Heep (Bronze / 日本コロムビア)
今もしぶとく活動を続けるユーライア・ヒープですが、やはり全盛期は1970年代前半でしょう。
なにしろ、その証として1973年の初来日公演は武道館であり、しっかりライプアルバムもレコーディングされたんですからねぇ~~~!
なんか、隔世の感があると言っては失礼かもしれませんが、翌年からの急速な落ち目街道は、メンバーが感電事故から悪いクスリがバレバレとなって解雇された末に急逝等々……。
その結成の経緯や公式デビュー時からメンバーの出入りが激しかったバンドとはいえ、以降の激動はちょいと把握しかねるほどです。
しかし既に述べた全盛期に出していたアルバムの充実度は、当時流行のブリティッシュ系ハードロックの中でも独得の個性を表現していたのですから、未だユーライア・ヒープが忘れられていないのも納得するべきだと思います。
それは例えば、本日ご紹介のヒットシングル「対自核 / Look At Yourself」にも顕著!
ちなみに当時のメンバーはデヴィッド・バイロン(vo)、ミック・ボックス(g)、ケン・ヘンズレー(key)、ポール・ニュートン(b)、イアン・クラーク(ds) という5人組になっていたようですが、既に回数を重ねていたレコーディングセッションには新旧メンバーやセッションミュージシャンが入り乱れていたとも言われていますので、そのあたりにも紆余曲折を辿ったユーライア・ヒープの歴史が???
また音楽性も一般的なハードロックのバンド編成からして、如何にもギターがメインと思われがちなんですが、サイケおやじの好みからすれば、ユーライア・ヒープは立派なキーボードロックの大御所であり、それは初期~中期の楽曲のほとんどを書いていたのがケン・ヘンズレーであるという現実にも即しています。
この「対自核 / Look At Yourself」にしても、イントロから重層的に使われるオルガン&シンセが終始演奏をリードする中で、キメのリフを弾くのがギターの役割であり、悪魔の叫びとまで形容されたデヴィッド・バイロンのボーカル&ダビングコーラスが、見事にひとつの様式美を作り上げている事がウケまくった要因でしょう。
キャッチーな曲調は言わずもがな、アップテンポで押しの強い展開はアマチュアバンドでもキーボードに自信のあったグループでは切り札的な演目になりましたですねぇ~~♪ ただし当然ながら、このシングル盤に収められたのはアルバムに収録の全長バージョンを短く編集したものですから、要注意!
ちょいと聞きにはディープ・パープルの二番煎じという感も、実はそれこそが憎めないポイントのひとつですし、同じくエマーソン・レイク&パーマー的な雰囲気も滲むという、これは如何にもリアルタイムの1971年を実感させてくれますよ。
う~ん、それにしても「対自核」っていう邦題も熱いですねぇ~~♪ 有名なピンク・フロイドの「原子心母」と並び立つ、なにか哲学的な思い入れさえ想起させられてしまいます。
ということで、ハードロックでは人気のキメ手となるハイトーンボーカル&コーラス、多重層的なキーボードワーク、そしてキャッチーでスピード感満点の曲想と執拗なギターワークが見事に融合した、これは流石にヒットして当然の名演!
ただし、個人的には録音がどこかしら薄っぺらい感じもするんですよねぇ……。
まあ、それは十人十色の好き嫌いとして、一度はお楽しみいただきたい懐かしのロックのひとつが、これですよ♪♪~♪
最後になりましたが、ユーライア・ヒープの魅力はアップテンポの楽曲よりは、幾分勿体ぶったスローな歌と演奏にあって、なかなかメロディアスで幻想的なところはムーディ・ブルースのようでもあり、時にはイエスとかフラッシュの如き、爽やか系プログレの様相も呈する「不思議さ」がサイケおやじの好みなのでした。