■レッツ・ゴー・ソウル / Arthur Conley (Atlantic / 日本グラモフォン)
仕事関係で海外からのお客さんと会話中、まあ、ジョークながら、「日本は幸せ」というキツ~イことを言われてしまいました。
なにしろ未曾有の大災害から原発事故、食物汚染、経済恐慌、政治の不安定が現実なのに、トップニュースが三流芸人の引退だというのですから、外国人には???の気分なんでしょう。
正直、何処ぞの国のように暴動が起こって、政権が潰されたって不思議ではない日本において、某任侠団体の幹部や刑事被告人と交友があったからといって引退する漫才師の動向をあれこれ取り上げるマスコミは、だから「マスゴミ」なぁ~んて言われるんでしょうねぇ。
だいたい、刑事被告人との付き合いがいけないというのなら、もしかしたら総理大臣になるかもしれない代議士が、所属政党の代表選挙に勝ちたいがために同様の立場の権力者に尻尾を振って、頭を下げている図を、なんで悪いと言えないマスコミは笑止!
全く自己矛盾する報道だと思いますが、おそらく件の漫才師は単なる交友関係だけじゃない、もっと黒~い実態が表沙汰になる可能性を考慮したんでしょう。そうなればスポンサーや出演テレビ局、所属会社に大きな迷惑を……。
という推察は、完全なるサイケおやじの妄想にすぎませんが、なにか単純な思惑を回りくどい分かりにくさに仕立てるマスコミは気に入りませんねぇ~~。
そこで、分かり易さといえば、本日ご紹介のシングル曲♪♪~♪
もう、タイトルからして、小学生でも理解出来るノリの良さが痛快至極だと思いますが、実際に聴けば、そこは文字通りのソウル天国! 1967年にアメリカで大ヒットした流れを引き継ぎ、我国でもウケまくりでした。
それはアップテンポの調子の良さ、黒人R&Bならではの前ノリと粘っこいビート感の見事な融合であり、このあたりの雰囲気の凄さは日本人はもちろんの事、欧米の白人にも到底真似出来ない世界だと思います。
で、歌っているアーサー・コンレーは驚くなかれ、オーティス・レディングの弟子というか、所謂秘蔵っ子として大々的にプッシュされた逸材と紹介されましたが、確かに残されている映像を見ると、そのステージアクションは師匠から伝授された動きもあり、また当然ながら、ジェームス・ブラウンを筆頭とする偉大な先輩達からの影響も大きいのですが、この「レッツ・ゴー・ソウル / Sweet Soul Music」そのものが、サム・クックの某曲をオーティス・レディング&アーサー・コンレーの師弟コンビが焼き直したものという真相は有名です。
ただし、そこが上手いのは、歌詞の中にジェームス・ブラウンとか、まさにソウルを体現していた偉大な歌手の名前を織り込んだり、「スウィートなソウルが好きかい?」と問われれば、思わず「イェ~~」と答えてしまう、所謂コール&レスポンスの醍醐味を持ち込んだりした企画性の勝利じゃないでしょうか。
曲展開の要所で炸裂する、どっかで聞いたことのあるキメのリフやビシバシにブッ飛ばす演奏パートも良い感じ♪♪~♪
しかし率直に言わせていただければ、アーサー・コンレーは決して一流のソウル歌手とは思いませんが、結果的に特大のヒットは「レッツ・ゴー・ソウル」だけという状況に素直に従ったような活躍は、ご存じのとおり、師匠のオーティス・レディングの突然の悲報により、自らの芸能生活を縮小してしまう運命と重なり、それはそれで納得させられてしまいます。
どうやら1970年代からは欧州各地を転々としながら、自分に合った生活をしていたと言われていますが……。
なにか、そんなところにも、憎めないものを感じてしまいますねぇ。
ということで、分かり易いものはバカにされる一面が確かにあると思います。しかし、そうしたストレートな正直さは、素直に好感を持たれる事も否定出来ないでしょう。
アーサー・コンレーは、リアルタイムでは「ソウルの新星」と紹介された記憶もありますが、今の時代、ちょっとでも救世主になれるかもしれない期待の星の出現が待たれますねぇ……。