OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

何をやってもロックなテンプターズ

2011-08-24 16:11:34 | 日本のロック

純愛 c/w 涙のあとに微笑を / ザ・テンプターズ (フィリップス)

GSは間違いなく日本のロックですから、いろいろとドメスティックな解釈も可能であり、そうした独自性が今日に至るも根強い人気の秘密かと思います。

例えば本日ご紹介のシングル盤A面に収録の「純愛」は、テンプターズが昭和43(1968)年末からヒットさせた人気曲ですが、結論から言えば、メロデイの元ネタはモダンジャズでもお馴染みの「アランフェス協奏曲」です。

それを堂々と村井邦彦の作曲、川口真の編曲として作ってしまう当時の業界の方法論は、ある意味で潔く、それが煮詰まり始めていたGSブームの流れの中では、クラシックのメロディやムードを借用した新しい歌謡ロックの創造へ、上手い道筋をつけるものだったように思います。

そして実際、テンプターズの演奏はイントロから衝撃的なニューロック性感度が高く、今風に言えばエスニック調のフレーズを弾きまくるエレキギターとビシバシのドラムス&ベースによる突進ビートのキメが、最高にたまりません♪♪~♪

しかし、その直後に一転、じんわりとスローで歌い出される曲メロが前述の「アランフェス」ですから、その哀愁がなかにし礼の書いた刹那の歌詞にはジャストミート!

もちろん萩原健一というよりも、絶妙の不良性を佩びたショーケンの切迫した歌いっぷりは、ロック以外の何物でもありませんっ! グイグイとスピードがついていく演奏を展開するバンドの勢いも最高ですよっ!

実は告白すると、サイケおやじは高校生の時に入れてもらっていた同好会のバンドで、この「純愛」をやりたくて我慢出来ないほどでした。

と言うのも、これまでも何度か書いていますが、当時は歌謡フォークが全盛で、エレクトリックなバンド組は肩身が狭く、しかもサイケおやじが入学前年の先輩諸氏が学校側の警告を無視(?)するが如き態度で、それこそギンギンのハードロックを文化祭で演じたことから、その時は「部」だった集まりが「同好会」に格下げされ、アコースティックギターがメインのフォークならば許可が出ていたという状況だったんですから、エレキのバカ大将を目指していた自分などは、本来の居場所も無く……。

ですから、バンド組がやっていたのは極力フォークっぽい「真冬の帰り道」とか、あるいはフォーク組のバックをやらされた「花嫁」とかが表向きという、なかなかトホホの時期でした。

しかし、ほとぼりが冷めてきたというか、夏休み頃からは堂々とロック色が強い事もやれるようになり、そこからは本音で演目選びが出来たのですが、もちろん反動がありますから、最下級生のサイケおやじが「テンプターズの純愛」なぁ~ん言えるはずも……。

もうひとつ、付け加えおけば、言わずもがなではありますが、その頃は既にGSが時代遅れの象徴だったんですよねぇ。

それでも頑固なサイケおやじは、密かに「純愛」のイントロや間奏で熱く燃えるギターソロをコピーしていたんですから、我ながら笑止千万ですし、何かのきっかけで、そうしたフレーズが手癖のように出てしまう病気は、今も継続しています。

いゃ~、本当にお恥ずかしい……。

とは言え、やっぱりテンプターズの「純愛」は名演名唱だという思いは、些かの躊躇いもありません。

個人的にはマイルス・デイビスの「アランフェス」は理解出来ないほど嫌いですが、この「純愛」は最高に好きなんですよっ!

一方、B面に収録された「涙のあとに微笑みを」はご存じ、テンプターズが主演した同名GS映画のテーマ曲として有名だと思いますが、その実態は歌謡フォークがモロ出しのメロディと歌詞でありながら、ショーケンが歌う事によってギリギリのロック色が滲んだ名演!?

むしろ、こっちの方が今や人気が高いのも、なんとなく認めざるをえないのかもしれませんが、実は作詞作曲&編曲が「純愛」と同じソングライターチームというところに絶妙の目論見があったのでしょうか。

ちなみに件の映画「涙のあとに微笑みを(東宝・内川清一郎監督)」は、既にGSブームが下降線となった昭和44(1969)年の公開とあって、今では何か評価も芳しくありませんが、これが意外な傑作!

現在ではDVD化もされていますから、機会があれば昭和元禄と日本のロック全盛期をお楽しみいただきとうございます。

ということで、やっぱりテンプターズは何を演じてもロックする、凄いバンドです。

それはショーケン=萩原健一という稀代のボーカリストの存在もさることながら、松崎由治(vo,g)、田中俊夫(g)、高久昇(b)、大口広司(ds) も絶対に欠かせない、バンドメンバー総意の力量だと思います。

もちろん、この「純愛」にしても、当時のGSが出していたシングル曲の例に沿って、スタジオレコーディングの現場にはオーケストラが起用されていますが、そういうサウンドプロデュースに決して負けていないのは、テンプターズ真骨頂のロック的不良っぽさ!

それはスタジオバージョンの「純愛」を実際に聴いていただければ充分に納得されるはずですし、リアルタイムのファンであれば、当時のテレビ出演や巡業ステージで熱く演奏されていたライプバージョンが今も記憶に鮮明でしょう。

なにか一般的に本物のロックがやれたGSはゴールデン・カップスだけと思い込まれている昨今、例えばテンプターズにも同質のロック魂がある真実も、広く楽しまれるべきだと切望しております。

このあたりはテンプターズのヒット曲が例えば「おかあさん」とか、この「純愛」とか、そんなタイトルだけで歌謡曲がモロ出しと先入観念される事に大きいのかもしれませんねぇ……。

しかし、とにかく虚心坦懐!

当時リアルタイムで活動していたGSには全て、現代の「一見、ロックバンドの如し」的な安易なグループなんて、ひとつも無かったはずですよ。それは今日まで、絶対に越えることが出来ていない、社会的大ブームという歴史にも顕著に刻まれています。

最後になりましたが、未だサイケおやじはバンドとして、この「純愛」をやることが出来ていません。

いつかは、必ずっ! そう決意を新たにしているのでした。

コメント (6)
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