OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ルー・ドナルドソンの素直にノレば、いいじゃなぁ~~い♪

2011-08-15 15:41:13 | Jazz

Good Gracious! / Lou Donaldson (Blue Note)

世の中、なるべくならば嘘の無いほうが良いし、バカと呼ばれようとも、やはり真っ正直な人に好感を抱いてしまうサイケおやじが好きなミュージャンのひとりが、ルー・ドナルドソンというジャズプレイヤーです。

ご存じのとおり、ルー・ドナルドソンはハードバップ創成に尽力し、きっちりと成果を残した名演名盤を残しながら、その全盛期には更に黒人感覚を強く打ち出したR&B風味のモダンジャズ~ソウルジャズへと歩みを進めてしまった事から、特に我国の評論家の先生方やガチガチに一本気の愛好者には軽く扱われていたのが、1970年代までの実相でした。

告白すれば、本格的にモダンジャズを聴き始めた頃のサイケおやじは、こういう人を好きだと言っては、いけないのか……。なぁ~んて本気で悩んだ(?)事もあったんですよ、今となっては笑い話なんですが。

さて、そんな中で本日ご紹介のアルバムはジャケットやタイトルが明示してくれるとおり、なかなか正直な楽しさが溢れる1枚♪♪~♪

録音は1963年1月24日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、ジョン・パットン(org)、グラント・グリーン(g)、ペン・ディクソン(ds) という、実にゴスペルファンキーな4人組が快演を聴かせてくれますよ♪♪~♪

A-1 Bad John
 シンプルなリフを使ったモダンジャズのブルース大会なんですが、まずは独得の残響音で叩いてくれるペン・ディクソンのゴスペルっぽいドラミングに耳を奪われてしまいます。
 う~ん、なんと言うか、ちょいとガサツでノリの良いシャップルビートが実に快適なんですねぇ~~♪
 ですから、グイノリのオルガンで躍動的なアドリブを展開するジョン・パットン、調子良すぎる合の手や十八番の針飛び三連フレーズを惜しげも無く披露するグラント・グリーンの骨太ギターが抜群の露払いを務めた後に登場するルー・ドナルドソンは、まさに親分の貫録!
 初っ端のオトボケフレーズもニクイばかりですが、パーカー派の面目も立派に堅持しつつ、随所に分かり易いキメを織り込むあたりは、如何にも大衆芸能の本質かと思います。

A-2 The Holy Ghost
 そして、さらにゴスペルフィーリングをモロ出しにするのが、このルー・ドナルドソンのオリジナルで、どっかで聞いたことがあるような、アメリカ南部風味の長閑なメロディは好印象♪♪~♪
 それをゆったりしたワルツタイムの粘っこいジャズビートで変奏していくですから、ジョン・パットンのオルガンは黒人教会のムードを我々に知らしめてくれるような熱演ならば、幾分肩の力が抜けたグラント・グリーンのギターも良い感じですし、ユルユルしながら実はビシッとタイトなペン・ディクソンのドラミングもジャストミートしています。
 ところが、肝心のルー・ドナルドソンが相変わらずのノーテンキ??? ほとんど何も考えていない場当たり的な吹奏は、確かに各方面からは顰蹙かも……。と思わせるに充分な遣り口が本当は狙いどうりなんでしょうねぇ~~~♪
 なにか非常に力が抜けていく心地良い倦怠が、大いに魅力の演奏だと思います。

A-3 Cherry
 しかし、A面ラストにはスタンダード曲を素材に、如何にも「らしい」ルー・ドナルドソンが堪能出来ますよ♪♪~♪
 なにしろバックのリズム隊がグイノリの4ビートを提供すれば、リラックスした中にも真っ当なビバップフレーズしか吹かないルー・ドナルドソンが屹立しているんですから、これぞっ! ハードバップのマンネリ的快感と言っては、贔屓の引き倒しでしょうか。
 個人的には、こういう演奏こそが、何も考えないでやってしまったに違いないと思うのですが、それでジャズファンの心を掴んでしまうあたりこそ、ルー・ドナルドソンの真骨頂なのかもしれませんねぇ。

B-1 Caracas
 グラント・グリーンがイントロで刻む、なんとも不器用なボサノバのリズムギターが逆に味わい深い演奏を見事に導いてしまうという、いやはやなんともの結果オーライが憎めませんねぇ~~♪
 実は演目そのものは、既に1954年夏のセッションで痛快なラテンジャズの決定版を吹き込んでいたルー・ドナルドソンの十八番ですから、ボサノバがブームとなっていたこの時期、あえて再び持ち出す意図も納得は出来るんですが……。それにしても一聴、このダサダサな雰囲気はクールでお洒落というボサノバのイメージとは相当に遊離した仕上がりがイナタイ!
 ところが、全体に滲むユルユルのホンワカムードが、なかなか不思議なムードを醸し出してくれるんですから、これはまさに良い味出しまくりの裏名演じゃないでしょうか。
 何時もながらにノーテンキなルー・ドナルドソン、ちょいと神妙なグラント・グリーン、ジョン・パットンのグビグビ唸るオルガンが気抜けのビールの様に感じられたとしても、それはそれでかなり練られたものだと、聴くほどに思います。
 ちなみに、些か重いボサノバを叩くペン・ディクソンのドラミングが、意外にも演奏を深みのあるものにしているのかもしれませんねぇ。
 こういう倦怠感は、クセになりますよ♪♪~♪

B-2 Good Gracious
 そしてお待たせしましたっ!
 アップテンポでブッ飛ばしていく、このアルバムタイトル曲こそが、ハイライト!
 テーマリフは相変わらずシンプルそのものなんですが、メンバー全員がアドリブパートをメインにしつつも、バンドとしての纏まりを忘れない感じで、つまりは自分以外の演奏を良く聴いていなければ出来ない表現が素晴らしいと思いますねぇ~♪
 まあ、そのあたりは完全に素人のサイケおやじの主観なんですが、それにしてもグラント・グリーンが演じる三連針飛びフレーズの乱れ打ちは痛快そのものですし、グルーヴィな4ビートのベースウォーキングを全面に出したジョン・パットンのオルガンからは、当然ながら絶妙のバッキングとアグレッシヴなアドリブフレーズが連続放射され、それを的確なリズムでサポートするペン・ディクソンは流石の職人芸!
 そこでいよいよ登場するルー・ドナルドソンが大ハッスルなのも必然的の快演なんですが、特筆すべきは、既に時代的には些か遅れ気味の典型的なハードバップをやっていても、そこには何の躊躇いも感じさせないという事じゃないでしょうか。
 サイケおやじが、この演奏を特に愛でるのは、そこに魅力を感じてしまうからなのです。

B-3 Don't Worry 'Bout Me
 オーラスは、まさに「お約束」というスタンダード曲のスローな演奏で、ジャズファンには良く知られた刹那のメロディを悠々自適に吹いてくれるルー・ドナルドソンが存在証明♪♪~♪
 ちなみに、こういう演奏になると、オルガンが雰囲気に流されるというか、些か甘いラウンジムードが醸し出されてしまうので、イノセントなモダンジャズマニアからは軽視される傾向にあるんですが、流石はジョン・パットン! アドリブに入った瞬間のちょいと吃驚させられるような音の構築は狙ったものでしょうか。思わず眠気(?)もブッ飛ばされてしまいますよ。

という事で、データ的にはルー・ドナルドソンが1960年代に一旦ブルーノートを離れる直前最後のリーダーアルバムという所為でしょうか、なにかノビノビとやりたいようにやった感じが強いと思うのは、サイケおやじだけでしょうか。

そのあたりは、パットン、グリーン&ディクソンというリズム隊とのコンビネーションが最高の相性を感じさせてくれる部分とも、絶対に共通しているのかもしれません。

ちなみに件のリズム隊は当時のブルーノートでは様々なセッションに起用されているとおり、ジャズ史的にも優れたトリオだったはずですので、気になる皆様は探索されると面白いですよ♪♪~♪ これまでに拙ブログでもドン・ウィルカーソンの「シャウティン!」、グラント・グリーンの「アム・アイ・ブルー」、そしてジョン・パットンの「オー・ベイビー」や「アロング・ケイム・ジョン」等々を掲載しておりますので、ご一読いただければ、幸いでこざいます。

そこで冒頭に述べたとおり、ルー・ドナルドソンはなかなか自分に正直な演奏を心がけていたように思いますが、この「自分に正直」というのは、極言すれば人生にとって、非常に難しい行いでしょう。

もちろんルー・ドナルドソンだって、緻密に考えてあれこれを演じていたはずですが、そうした目論見とか下心をリスナーに感じさせないナチュラルな感性が、ジャズの本質を体現しているんじゃないでしょうか。

と、本日もまた屁理屈優先のサイケおやじですが、やっぱり聴いているうちに素直にノセられてしまうのが、このアルバムに限らず、ルー・ドナルドソンの大いなる魅力でしょう。

そう思えば、ジャケットデザインのコンセプトが、ますますニクイばかりなのでした。

コメント (2)
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