■The Night They Drove Old Dixie Down / The Band (Capitol / 東芝)
ザ・バンドと言えば説明不要、今やロックの歴史に絶対的な足跡を残したグループでしょうが、少なくともサイケおやじにとって、ザ・バンドの与えてくれた衝撃で最高だったのは、彼等のルックスでありました。
つまり掲載したシングル盤ジャケ写はもちろん、洋楽雑誌で見るザ・バンドの面々は、およそロックを演じるには相応しくない、完全なおっちゃん達!?
髭や丸メガネなんてのは、まあ1967年頃のジョン・レノンで免疫(?)が出来ていましたが、ザ・バンドの面々は衣装そのものが前時代的というか、本国アメリカでは南北戦争頃のスタイルに近いんじゃ~ないでしょうか。
おまけにやっている音楽そのものが、1960年代末頃の流行からは大きく外れた、と言うよりも、実は流行なんてものには囚われていなかった事が後に明らかになるんですが、とにかくサイケおやじの当時の常識からは馴染めない曲メロ、対訳を読んでも理解不能な歌詞の世界、さらにはちっともロックしていないと思われた演奏が、なんだぁ~、これっ!?
もちろん、それが洋楽マスコミで評論家の先生方から絶賛されていなければ、別に問題にもならないでしょう。
ところが1970年頃には、「ザ・バンドはアメリカのビートルズ」とまで持ち上げる風潮(?)さえあったんですから、穏やかではありません。
しかし、分からないものは、分からないとして、居直る事も出来ないのがサイケおやじの弱いところ……。
なんとかザ・バンドの通算4枚目のアルバム「カフーツ」を足掛かりとして、次にゲットしたのが、中古ではありましたが、本日掲載のシングル盤でした。
ただし、それでも見るほどにロックしていないザ・バンドの佇まい、そしてミョウチキリンなメロディを歌ってくれる狙いは、逆の発想としての反抗的姿勢の表明だったんでしょうかねぇ~~。
別に芸能界ではなく、世間一般でも、周囲と逆の事をやらかして目立ちたがる者は珍しくありませんし、かえってそれで自己主張する事が認められている以上、ザ・バンドもその徹底ぶりは流石なのかもしれません。
また、このシングル盤は収録A&B面両曲共、1969年にアメリカで発売された2ndアルバム「ザ・バンド」からのカットであり、実際に針を落して聴いてみた独得の「音の暖か味」は、このルックスにして、このサウンド在り!
そんなジャストミート感が否定出来ません。
ということで、例えロビー・ロバートソンがドリフターズの加藤茶に見えたとしても、それはそれで強いインパクトの成功例だと思います。
結局、ザ・バンドは「流行最先端の音」とは無縁の道を行く共同謀議として、自らのルックスもそれに合わせた時代錯誤性を選んだのかもしれません。
しかもそれは今や普通に聴く事が出来ますし、違和感も無くなっているのですから、時の流れの偉大さと共に、ザ・バンドの目論見も凄いと思っているのでした。
ロックは現在、老人の音楽でもありますから!