OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

R&Rの魂と逝ったジョン……

2012-12-08 15:12:41 | Beatles

John Lennon Sings The Great Rock & Roll Hits: Roots (Adam Ⅷ)

突然の悲報から既に30年……。

それでも癒えない悲しみは、ジョン・レノンが教えてくれたロックや人の世の喜怒哀楽、その中の生き様がサイケおやじには辛辣なほどリアルであった証とさえ……。

ですから、故人が残してくれた偉大な遺産は、その全てが様々な真実を含んでいるのは当然であり、決して聖人君子ではなかったジョンの苦悩や魂の叫びをそこから感じる事が、ファンにとってはひとつの喜びに違いありません。

特に本日ご紹介のLP「ルーツ」は、1975年に世に出た人気アルバム「ロックン・ロール」の裏側に存在する混濁や人間関係の諸々から産み落とされた幻のアルバムとして、現在もブートが流通していほどの問題作です。

 A-1 Be-Bop-A-Luia
 A-2 Ain't That A Shame
 A-3 Stand By Me
 A-4 Sweet Little Sixteen
 A-5 Rip It Up ~ Ready Teddy
 A-6 Angel Baby
 A-7 Do You Want To Dance
 A-8 You Can't Catch Me
 B-1 Bony Moronie
 B-2 Peggy Sue
 B-3 Bring It On Home To Me ~ Send Me Someone Lovin'
 B-4 Slipping And Slidin'
 B-5 Be My Baby
 B-6 Ya Ya
 B-7 Just Becase

ご存じのとおり、前述の「ロックン・ロール」はタイトルどおり、ジョンが幼少の頃から親しんだR&RやR&B、さらにはアメリカポップスのルーツを自分流儀で歌ったオールディズカパー集なわけですが、これを作るきっかけとなったのが、例の「Come Together」盗作騒動だったと言われています。

それは活動停止が前提期のビートルズにあって、ジョンが自信を持って書いたとされる件の名曲が、なんとっ! R&Rの偉人たるチャック・ベリーの「You Can't Catch Me」のパクリだとして、楽曲管理会社から訴えられ、裁判の結果は和解となったんですが……。

条件として、前述の会社「ビッグ・セブン・ミュージック」が保有する歌の中から3曲をジョンがレコーディング発売するという事になり、ど~せなら、カパー作品集を作ってしまおう!?!

という、経緯があったようです。

そこで早速、1973年秋からフィル・スペクターにプロデュースを依頼し、ロスでレコーディングが開始されたのですが、当時のジョンはヨーコとの不仲から気の合う仲間と夜遊び&泥酔の日々であり、一方のフィル・スペクターも様々なゴタゴタから精神的に追い詰められていた頃とあって、セッションはトラブル続き!

音楽的な対立というよりは、気持のズレなんでしょうか、喧嘩口論でスタジオ内の雰囲気は最悪だったそうですし、ついには発砲騒ぎまでもあった事は今や隠し様もない歴史(?)でしょう。

おまけになんとか作られた数曲のマスターテープをフィル・スペクターが持ち逃げするという事件が発生したのですから、当然ながらプロジェクトそのものが中断に追い込まれています。

ところがそれで納得してくれないのが、件の裁判で一定の権利を認められた「ビッグ・セブン・ミュージック」側で、せっかくの大きなビジネスチャンスがあるのですから、ジョン本人や当時の所属レコード会社であったキャピトルに対して矢の催促!

そこでニューヨークに戻ったジョンは新作アルバム「心の壁、愛の橋」のレコーディングと並行して、問題のオールディズカパーの追加セッションを開始していますし、キャピトル側も苦心惨憺(?)の末にフィル・スペクターからマスターテープを取り戻すのですが、その過程で暫定的に編集された「ロックン・ロール」のラフミックマスターが「ビッグ・セブン・ミュージック」の代表であったモーリス・レヴィという人物の手に渡ってしまったのですから、混乱は収まりません。

驚くなかれ、その未完成(?)ソースから作られた「ジョンの新譜LP」が、「アダムⅧ」という通販会社から出てしまうという大事件が勃発し、それが本日の1枚たる「ルーツ」というわけです。

もちろんキャピトル側も正規盤「ロックン・ロール」の発売を早める対抗処置と同時に、「ルーツ」の販売禁止を求める訴訟を起こしたのですが、実は「アダムⅧ」側には「ジョンとの口約束」という曖昧なお墨付きがあった事から、結果的に数千枚が流通し、しかも「ロックン・ロール」とは異なる収録曲やミックス違い、一目瞭然の曲順違いがありましたから、1969年のジョンのポートレートを使ったジャケットデザインも含めて、その消える事になったオリジナル盤が忽ち高値で取引された事は言うまでもありません。

特に当時、正規盤「ロックン・ロール」では聴くことの出来なかったフィル・スペクター所縁のロネッツが1963年に大ヒットさせた「Be My Baby」とジョンが好きだったというロージー&オリジナルズの「Angel Baby」は、何れもオールディズのラブ&ロッカパラードですから、ファンには気にならざるをえないレアトラック♪♪~♪

それゆえに瞬時、ブートが流通し始めたのも当然でありました。もちろん掲載の私有盤も、それです。

また実際に聴いてみると、全体的なミックスの違い、場合によってはジョンのボーカルそのものが違うトラックもあり、特に「Sweet Little Sixteen」のワイルドなフィーリングは個人的に大好きです。

ちなみに演奏パートの参加メンバーは今日でも明らかになっていませんが、ジェシ・エド・デイビス(g)、スティーヴ・クロッパー(g)、レオン・ラッセル(key)、ハル・ブレイン(ds)、ジム・ケルトナー(ds) 等々がロスのセッションに呼ばれていた事は様々な証言、あるいはフィル・スペクターの人脈を考慮すれば、推察は易いと思います。

一方、仕切り直しとなったニューヨークでのセッションには、クラウス・ブァマン(b)、ボビー・キーズ(ts) が参加している事は、これまた可能性が高いところでしょう。

そして実は後に流出したセッションからのアウトテイクを収めたブートを聴くと、最初に作っていたフィル・スペクターのマスターテープにおけるジョンのボーカルは、相当にテキトーな感じ……。

ですからニューヨークでの再開セッションでは、かなりの部分で歌入れがやり直されている事が明確ですし、問題の「ルーツ」というアルバムに用いられたラフマスターでも、幾分未完成なパートが散見されるんですから、当時のジョンの焦燥や不安定な心情は如何に!?

個人的には、そういう部分を垣間見せる偉大なロッカーのジョン・レノンが、一番好きです。

ということで、あまり故人の命日には相応しくない、それこそ不遜な選択と文章ではありますが、どうかご容赦下さい。

それでもジョン・レノンの凄さは、かえって伝わって欲しいと願っておりますし、この「ルーツ」も、機会があれば、ぜひ!

最後になりましたが、本日はこれから、おやじバンドで「Stand By Me」を心をこめて、やってきます!

合掌。

コメント (6)
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