■初恋のふたり / Cherie & Marie (Mercury / 日本フォノグラム)
世界中で双子デュオが珍しくもない芸能界ですが、それが既に有名なキャリアを重ねた後の再デビューともなれば、様々な憶測や邪推は避けられません。
例えば本日の主役たるシェリー&マリーは、ガールロックの人気バンドだったランナウェイズを抜けた看板ボーカリストのシェリー・カーリーが、双子の妹のマリーと組んだ新プロジェクト!?
実はそこまでの経緯には、やはりランナウェイズ結成時から実質的なリーダーであったジョーン・ジェットとの対立があったようで、もちろん本国アメリカよりは日本や欧州各国での人気が爆発的に先行し、マネージメント側の思惑がバンドメンバー各人の方向性や気持とズレていった事と無関係ではありません。
そのあたりは近年公開された映画「ランナウェイズ」やメンバー&関係者が出した自伝&暴露本によって、微妙な部分まで明らかにされていますが、そんな状況の中、シェリー・カーリーがランナウェイズを脱退すると覚悟した時、とにかくも彼女達をスタア街道に導いたプロデューサーのキム・フォーリーが、待ってましたの策略を巡らした事は推察に易いでしょう。
実際、件のキム・フォーリーがジョーン・ジェット(g,vo)、リタ・フォード(g)、ジャッキー・フォックス(b)、サンディ・ウェスト(ds)、そしてシェリー・カーリー(vo) の5人娘を纏め、1976年にマーキュリーと契約を結び、翌年には既に述べたとおりの大ブレイクをアメリカ以外で爆発させた手腕の素晴らしさがあればこそ、一座のスタアであったシェリー・カーリーが抜けてしまう非常事態がジョーン・ジェットとキム・フォーリーの喧嘩別れに結びつくのは時間の問題というところです。
そしてシェリー・カーリーが1978年に出したソロアルバム「ビューティー&ワイルド」をプロデュースしたのも、必然的にキム・フォーリー!
本日掲載のシングル盤A面曲「初恋のふたり / love at first sight」も、実はそこに収録されていたバブルガム風味のガールロックで、気になる妹のマリーもボーカリストとして、きっちり件のアルバムに参加しているのですから、もはやその既定路線には何も言えませんよねぇ~~♪
しかも驚かされるのは、B面に収録されたのが同曲の日本語バージョンで、これは同年の来日時に録音されたと言われるものですが、作詞:なかにし礼の才気は言わずもがな、A面のオリジナルバージョンよりもテンポを緩やかにした編曲:荻田光雄のクレジットが侮れません。
つまり、そうすることによって、彼女達の日本語歌唱が絶妙の親しみ易さになっているんですが、正直、これはイナタイ!?
ちなみにランナウェイズ時代の彼女は「チェリー」と表記発音されていたのが一般的で、「シェリー」と正確(?)に呼ばれるようなったのは、この頃からです。
そしてもうひとつ、デビュー時から変わってしまったのは、その彼女のボディラインで、ランナウェイズ時代はデヴィッド・ボウイのイメージを踏襲したピッチピチのジャンプスーツ姿でガニマタ&乳首浮き出しのセクシーアクションも、そのスリムな肢体とシャープな面立ちゆえに最高の人気を掴んだ要素だったんですが、それが2年後には、ちょっぴりユルユルな場末感が……。
もちろんランナウェイズ時代からのウリになっていた前述のアクションを双子姉妹でやらかすライプは、それもひとつのロック魂ではあろうかと思いますが、リアルタイムのテレビでシェリー&マリーに接したサイケおやじは、なんとも諸行無常のせつなさに包まれてしまったですよ。
お叱りを覚悟で書かせていただきますが、シェリーは決して上手いロックボーカリストではなく、むしろちょい前の外タレが日本向けに吹き込んでいた「日本語詞の歌謡ポップス」あたりをやったら、我国では相当の人気が継続していたにちがいないと思っています。
その意味で、このシングル盤に日本語バージョンを入れたレコード会社の判断は大正解じゃ~ないでしょうか。
ただし洋楽マスコミの評論家の先生方は、前述した最初のソロアルバムを酷評するのが常套手段のようでしたし、この日本語バージンも同様の扱いでしたから、ファンの気持は別にして、それが以降のシェリーやシェリー&マリーの活動の足を引っ張るように感じていたのは、サイケおやじだけではないはずです。
何故ならば、現代の耳で聴けば尚更に当時のシェリー&マリーのレコード諸作は素晴らしく、特に正式に双子姉妹名義で1980年に作られたLP「シェリー&マリー・カーリー / Messin' With The Boys (Capital)」は、当時の人気バンドだったトトのメンバー全員が強靭なバックアップを展開した、最高級の洋楽ポップスが楽しめますよ♪♪~♪
それについては、また別に項を設けて書きたいと思いますが、実はきっちりCD化され、ポップスファンの間では密かに(?)愛聴されているそうですから、これ以上、サイケおやじが何を言う必要もないはずです。
ということで、こういうレコードがポコっと作られてしまうんですから、昭和のレコード会社は勢いがあったわけですよねぇ~~~♪
しかし、それを何時までも根に持って(?)、ランナウェイズはもちろん、ジョーン・ジェットやシェリー&マリーがどんなに良いレコードを作ろうとも、所謂キワモノ扱いが収まらない風潮は、なんだかなぁ……。
幸いにも彼女達のレコードは売れまくっていたので、今でも簡単に手に入るブツが多いですし、シェリー&マリーにしても、既に述べたとおりの喜ばしい現状があるのですから、せひっ!
最後になりましたが、掲載したシングル盤のジャケ写のクレジットが「シュリー」になっているのは、ご愛嬌??!?
まあ、そのあたりも、当時の我国洋楽事情の諸々というわけです、はい。