■はずみで抱いて c/w 南風サンバ / しばたはつみ (日本コロムビア)
洋楽カバーの日本語バージョンは、所謂オールディズ物ばかりではなく、リアルタイムでバリバリのヒットになっていた人気曲を訳詞、あるいは新しい日本語歌詞を附けた替え歌(?)も夥しく作られてきたことは、皆様ご存じのとおりです。
昭和54(1979)年に発売された本日掲載のシングル盤A面曲「はずみで抱いて」は、その最高に素敵な邦題も印象的な傑作で、しかも歌っているのが、しばたはつみ!
ですから、アーバンソウルなムードが横溢しているのは言わずもがな、実は元ネタがアメリカの黒人音楽界では当時、トップの女性ボーカリストであったチャカ・カーンが前年に出した大ヒットシングル「I'm Every Woman」のB面に収めていた隠れ名曲「A Woman In A Man's World」なんですから、もう、何も言えませんよ♪♪~♪
それは皆様ご自身の聴き比べが最良なわけですが、あえて稚拙な筆を弄させていただければ、チャカ・カーンのバージョンがメロウな中にも強いグルーヴ感を表出するイケイケ感があるのに対し、しばたはつみは如何にも歌謡曲保守本流の下世話なフィーリングをスマートなノリで歌いきっていくという、まさに両者の持ち味が存分に発揮された仕上がりかと思います。
もちろん、しばたはつみは原曲とは異なる歌詞の中身を表現しているわけですから、個性の違いという以上に、楽曲表現の面白さを楽しむ事も出来るわけです。
そして全くシビれさせられるのが、彼女のナチュラルな歌の上手さと黒人音楽の魅力を掴みきったノリの良さ♪♪~♪
ゴージャスなバックの演奏パートを完全にリードしていく、その歌の力は素晴らしいと思うばかりです。
ちなみに原曲をメインで書いたのはラリー・ジョン・マクナリーと言われていますが、このソングライターは所謂AOR系の自作自演歌手でもあり、しぶいギターの腕前もなかなかという、縁の下の力持ち的存在ながら、業界やマニアックなリスナーには信頼感が強いひとりですので、要注意!
また、チャカ・カーンのバージョンでは、バックで強いビートを出しているのがフィル・アップチャーチ(g,b)、リチャード・ティー(key)、スティーヴ・フェローン(ds) 等々の凄腕揃いであり、一方のしばたはつみのセッションにも、まず訳詞(?):長谷川みつ美、編曲:後藤次利&梅垣達志、さらには松原正樹(g)、今剛(g)、笛吹利明(g,key)、佐藤準(key)、林立夫(ds)、斉藤ノブ(per) 等々の、これまた我国トップクラスの名人が勢揃いですし、当然ながら弾みまくったベースは後藤御大の仕事と思われますから、これで文句をタレたらバチあたりでしょう。
さて、しばたはつみのシングル盤には、もうひとつのお楽しみがあり、それがB面収録の「南風サンバ」なんですねぇ~~♪
もちろん、これは曲タイトルどおり、サンバのリズムを使ったジャジーな歌謡グルーヴが満点の仕上がりで、終始演奏をリードしているのが、快適なブラシのドラミング♪♪~♪
そして作詞:岡田冨美子&作編曲:山本幸三郎の良い仕事も絶品で、ちょいと辛辣な歌詞を程好い情感で表現出来る配慮(?)からでしょうか、マイナー調スパニッシュメロディの柔らかな展開が最高ですよっ!
いゃ~、本当に気持良さそうに歌うしばたはつみが愛おしい♪♪~♪
ということで、しばたはつみは何時だって最高ですよっ!
そして現在、こういう歌謡ソウルというか、ブラコン歌謡をやってくれる若手シンガーが登場してくれないのは哀しいですねぇ……。
まあ、現実的には、今風R&Bを日本語でやっている歌手もいるんですが、例によって起承転結のはっきりしない曲構成やメロディラインの貧困さには閉口されられるのが、サイケおやじの本音です。
あんな曲じゃ~、歌の上手さを活かしきれていない事に気がつかないのかっ!?
そんな不遜な事まで思ってしまうほどですから、しばたはつみのレコードに針を落す機会も増えているのでした。