■誘ってルンナ~月影のナポリ / 甲斐智枝美 (日本ビクター)
我国のアイドルが歌ってくれる洋楽のカバーバージョン、中でも日本語詞が附けられた企画には、何時だってウキウキさせられるのがサイケおやじの本性です。
本日ご紹介の「誘ってルンナ」は、イタリアの美人歌手として我国でも人気の高かったミーナの「月影のナポリ / Tintarella di luna」がオリジナルなんですが、しかし日本では森山加代子やザ・ピーナッツ等々でお馴染みになっている岩谷時子の訳詞とは別に、千家春があらたに作詞したニューバージョン!?!
さらに当然ながら、発売された昭和57(1982)年の流行音楽を和洋勘案し、実に爽やかなアイドル歌謡ポップスに仕上げられていますよ♪♪~♪
もちろん歌っている甲斐智枝美は昭和55(1980)年という、アイドル全盛期にデビューした所謂「スター誕生!」組として、山口百恵が去った後の座を狙うひとりだったと思われますが、同時期には河合奈保子、柏原よしえ、松田聖子、岩崎良美、等々の錚々とした顔ぶれが揃って表舞台に登場していましたから、その厳しさは言うまでもありません。
結果的に甲斐智枝美は歌手というよりも、アイドルタレントであり、汎用性の高い女優として、芸能界で活動していたのが本当のところだったと思いますし、彼女のキュートな面立ちとスレンダーな肢体の魅力から、グラビアの世界でも高い人気を集めていた事は、皆様もご存じのとおりです。
ところが大きなヒットにはならなかった彼女のレコード諸作は、決して侮れないブツが多く、今となっては、どうしてこれが……???
等々の疑問が浮かんでしまうほど、秀逸な歌が沢山残されているのです。
ただし、あえて失礼な分析をさせていただければ、甲斐智枝美のアイドルボイスが前述した同期ライバル達の個性を凌駕出来ず、常に「誰々風」に感じられてしまったんじゃ~ないでしょうか?
このあたりは毎度の暴言、全くサイケおやじの独断と偏見ではありますが、それだけ当時のアイドル歌謡界のレベルが高かったという証左と思います。
さて、そこで「誘ってルンナ」はアイドル歌手としてはほとんど最後に近い頃に出されたシングル曲ながら、その明るいガールポップ性感度の高さは素晴らしく、加えて鈴木茂のアレンジが原曲のイタリアンツイスト風味を大切にしながら、サビに特徴的なテンポチェンジを逆手に活かしたライトタッチのレゲエフィーリングを用いる等々、本当にたまりませんよ♪♪~♪
エコーやコンプレッサーを上手く使ったサウンド作りもイヤミ無く、さらには全篇でカッコ良過ぎるギターワークの冴えも特筆もので、しなやかなフレーズ展開と抜群のリズムセンスは、もしかした鈴木茂本人の仕事なんでしょうか。
初期のリトルフィートっぽさと圧倒的なキメになっているホーンセクションのリフも含めて、いゃ~、何度聴いても、ワクワクさせられる気持の良さは、ポップなジャケ写デザイン共々、温故知新の魅力に満ちていると思います♪♪~♪
ということで、甲斐智枝美のようなアイドルが大勢登場し、売れなくとも素敵なレコードをどっさり残してくれたわけですから、昭和50年代の我国芸能界は充実していたんですよねぇ~♪
なによりも責任の所在がはっきりしている「単体のアイドル」という存在は、特別なパワーを発散していたと思っています。
う~ん、「集団アイドル」全盛の現況下、こういう日本語歌詞の素敵な洋楽カパーは作られないのでしょうか……。
ますます昭和が愛おしいサイケおやじであります。