OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

追悼:ジャック・ブルースの献身と尊厳

2014-10-27 15:17:32 | Rock

Why Dontcha / West, Blues & Laing (CBS)

 A-1 Why Dontcha
 A-2 Out Into The Fields
 A-3 The Doctor
 A-4 Turn Me Over
 A-5 Third Degree  5:15 
 B-1 Shake Ma Thing (Rollin Jack)  
 B-2 While You Sleep 
 B-3 Pleasure 
 B-4 Love Is Worth The Blues
 B-5 Pollution Woman

偉大なるベース奏者にして、稀代のミュージシャンだったジャック・ブルースが天国へ召されました。

皆様ご存じのとおり、故人は1966年にジンジャー・ベイカー(ds,per) とエリック・クラプトン(g,vo) を誘い、ロック史上最高級のパワートリオたるクリームを結成し、ジャズもブルースもクラシックも民俗音楽もゴッタ煮で聴かせるスタイル、つまりはニューロックを提示し、世界的に大きな人気を獲得したわけですが、とにかくエレキベースをリード楽器の如く弾きまくり、ガッツ溢れるボーカルと刺激的なハーモニカ、さらにはキーボードやチェロ等々を自ら操るマルチプレイヤーとして、大音量ライブの現場はもちろん、スタジオレコーディングにおいても、クリームの持ち味である即興と構築された感性の接点を担う存在だったと思います。

そして同時に認められるのは、だからと言って、ジャック・ブルースは決して物分かりの良いミュージシャンではなく、むしろ頑固者としか思えないという、そんなこんながクリームの残した殊更ライブ音源には顕著に感じられるのも確かであって、それもまたクリームの大きな魅力と解散の要因だった事は否定出来ないでしょう。

ですから以降、ファンはど~してもクリーム的なものをジャック・ブルースに求め続けてきたのも当然なんですが、そんなこちらの思いをはぐらかすように故人はジャズに接近したり、煮え切らないポップ志向に寄り道したり……。

う~ん、もう……、ジャック・ブルースはハードなロックはやってくれないのかっ!?

と嘆いていた1972年、突如して騒がれたのが本日掲載のアルバム「ホワイ・ドンチャ」を公式デビュー作にしたウエスト・ブルース&レイング=WB&Lでありました♪♪~♪

なにしろバンド名が示すとおり、そこにはマウンテンのレスリー・ウェストとコーキー・レイングを従えた(?)ジャック・ブルースという、まさに当時のハードロック斯界の存在があったのですから、これに期待するなというのは無理な話でしょう。

そして実際、我が国でも洋楽マスコミはラジオでも雑誌でも、なかなか煽りまくりというよりも、業界のニューロック好きが勇んで持ち上げていたのは自然の成り行きだったわけですが、結果は散々という厳しい現実が……。

ちなみにここまでの経緯としては、レスリー・ウェストがマウンテンの大ブレイクで沸騰する人気を得たものの、結局はそれゆえにと言うべきなんでしょうか、プロデューサーであり、同バンドのベーシストでもあったフェリックス・パバラルディと音楽的方向性の違いが表面化したようで、そこにジャック・ブルースとの邂逅提携が成ったのも、クリームを成功に導いたプロデューサーがフェリックス・パバラルディであったという因縁にそれ以上の意味があるという推察は、あらためて述べるまでもありません。

つまりマウンテンのハードロック的な部分をさらに推し進めようとすれば、レギュラーメンバーのコーキー・レイングにしても、ジャック・ブルースと組めることは憧れ(?)のクリームに入れてもらえる事に他なりませんし、ファンが最も望んでいるのは、それだっ!

という確信は疑えるものではありませんよねぇ~~♪

しかし鋭意作られたデビューアルバム「ホワイ・ドンチャ」は既に述べたとおり、各方面から酷評の嵐!?

もちろんサイケおやじもリアルタイムのラジオ番組でLPからの数曲を聴き、さらに友人から借りた件のアルバムをテープにコピーまでして聴きまくったんですが、何故かイマイチ、熱くなれなかったというのが本音です。

う~ん、なんというか、前身バンドのマウンテンで発散されていた情熱も薄くなったというか、失礼ながらレスリー・ウェストの歌やギターに精彩が感じられず、またコーキー・レイングのドラミングも普通というあたりは、こちらの期待が大きかったと言えば、それまでかもしれません。

そして肝心のジャック・ブルースはやはり御大の貫録なんでしょうか、ベースプレイばかりかボーカルもその他の楽器も的確な存在感を示し、収録曲もプロデュースもクレジットではWB&Lがメインではありますが、故人が実質的な主導権を握っているのは明らかでしょう。

ところが、それでも納得させられなかったのは、元マウンテン組がジャック・ブルースの前で萎縮したという解釈も可能です。

そりゃ~、殊更ハードロックを志していれば、ジャック・ブルースと一緒にやれる事は光栄の極みであり、どんなに意気込んでも「棒を飲んだ」が如く緊張するのはムベなるかな、レスリー・ウェストだって、きっとそうだったんじゃ~ないでしょうかねぇ~。

逆に言えば、それほどここでのジャック・ブルースは奔放で献身的な役割を全開させていると思いますし、実は昨晩、久々に掲載盤を取り出し、針を落としてみれば、その濃くて分厚いサウンドの作りやメンバー各々の個性のぶつかりは、クリームほどでは無いにしろ、当時としては相当に激したところまでやっている事にハッとさせられました。

ただし正直、所謂「良い曲」が無いんですよ……。

そのあたりが期待外れの要因かもしれませんし、あえてクリームでもマウンテンでもないバンドの個性を出そうとした思惑が裏目に出た結果? 不遜にもサイケおやじは、そこまで思ってしまいました。

ですから、今回はあえて収録トラック各々については書きません。

皆様に実際に聴いていただくのが一番と思うばかりです。

ちなみに掲載の私有LPは中古ながらイギリス盤というあたり、如何にそれが期待どおりに売れ、次いで中古盤市場に溢れ出たかという証でもありますからねぇ……。

そしてWB&Lは2年を経ずして消滅し、レスリー・ウェストとコーキー・レイングがフェリックス・パバラルディとヨリを戻してのマウンテン再稼働は、1973年夏の来日巡業おける大熱演として記録されたのですから、これまた逆説的にジャック・ブルースの偉大さを痛感と書けば、贔屓の引き倒し以上に皆様からのお叱りは覚悟しなければなりません。

それでもこの頃から急速にジャック・ブルースの影が薄くなった現実は、裏を返せば伝説的な天才ミュージシャンとしての立場を明確したという真相もあり、以降は世界各地の様々なプレイヤーと共演共作する度に、えっ!? という感慨を湧きあがらせてくれましたですねぇ~♪

例えば、日本では学生服のギタリストとして売り出された鈴木賢司のバックアップも忘れられません。

ということで、なにか場違いな追悼文になったかもしれませんが、ジャック・ブルースこそはサイケおやじにとってザ・フーのジョン・エントウィッスル、ゴールデン・カップスのルイズルイス加部と並んでロックの世界三大ベーシストであり、常に尊崇の念を抱いてしまう存在です。

あぁ、天国でもレスリー・ウェストやライフタイムで一緒だったトニー・ウィリアムス(ds) 等々と丁々発止、ブリブリに妥協しないベースを弾きまくって欲しいですねぇ。

衷心より、ご冥福をお祈り致します。

合掌。

 

コメント (6)
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