■黄色いリボン / 桜田淳子 (日本ビクター)
なんだか最近、芸能界への本格復帰が噂される桜田淳子はご存じのとおり、テレビスカウト番組「スター誕生(日本テレビ)」において圧倒的な評価と支持を集めてのデビューだった事は今や伝説ではありますが、彼女自身の信仰の自由を悪い方向へと解釈する報道や結婚からフェードアウトした経緯はファンならずとも忘れられていないでしょう。
しかし、逆に言えば、それでも桜田淳子のスタア性は失われていない事の証明でもあり、もしも芸能界へ戻って来るとなれば、大きな騒ぎは必至でありましょう。
と書きながら、サイケおやじは決して彼女のファンであったわけではなく、歌謡界のアイドルスタア歌手とは認識していながら、レコードはそれほど所有してはおらず、告白すれば、その僅かな私有盤にしても、中古ゲットばかりなのが実情ですから、桜田淳子については、熱く語れるところがありません。
なにしろ彼女が昭和48(1973)年に鳴り物入りでレコードデビューを飾り、連日の様にテレビ出演していた頃には、何時も被っていた例の帽子、確か「エンジェルハット」とか称されていたその印象ばかりが強く、楽曲そのものについては些か当たり前過ぎる感を覚えるという不遜な態度でしたからねぇ……。
ところが翌年になって出した本日掲載のシングル盤A面曲「黄色いリボン」は、最初に某レコード屋の店頭で聴いた瞬間、うっと呻かされたほどのインパクトがありました。
それは曲調の基本にスイングジャズっぽいノリとメロディがあり、カラオケパートの演奏にしてもゴージャスなブラスセクションと不思議な躍動感が計算されたようなリズム隊の存在が素晴らしく、中でもエレキベースの確信犯的に目だった動きは、当時の歌謡曲としては変態的と思えるほどだったんですねぇ~~♪
そして桜田淳子のボーカルにはエフェクターとエコーが付与され、おまけにダブルトラックによる節回しが、これまた浮世離れしているというか、桜田淳子が本来の声質を活かしつつも、奇妙な味わいすら覚えるのは、ハリウッドポップスにおけるワーナー&バーバンクサウンド系の面白さに共通するものを感じるほどでした。
つまりハリウッドで作られていた往年の映画サントラ音源の響きがアイドル歌謡に用いられていたかのような、これはサイケおやじの完全なる独断と偏見であろうとも、楽曲そのものが既に述べたとおり、スイングジャズ調であれば、それは周到に作られた成果と思いますが、いかがなものでしょう。
定型というには複雑な代理和音を用いたコードの展開も良い感じ♪♪~♪
また、これは完全な後付けになりますが、数年を経て中古で入手したレコードで聴いてみると、前述したダブルトラックのボーカルには各所でズレが散見され、もしもそれが意図的に残され、或いは作為的に仕掛けられたのだとすれば、作編曲を担当した森田公一は流石に天才であり、まさに当時のアイドル歌謡を作らせては最高のソングライターが存在証明でありましょう。
ただし、もうひとつ不遜な事を書かせていただければ、阿久悠の綴った歌詞にはちょっぴり何時ものスパイスが足りないような……。
それでもこの「黄色いリボン」は間違いなく、いよいよ桜田淳子の大ブレイクに繋がる指標であり、具体的にはテレビ出演時には超ミニスカの衣装でダンス系アクションも交えて歌う姿からは、キラキラした本当のアイドルスタアの輝きが見て取れましたですねぇ~~♪
ということで、桜田淳子が大スタアであった事は言うまでもなく、だからこそ復帰が望まれるとはいえ、そこで昔の騒動(?)を蒸し返す報道をやろうとするマスコミの姿勢が強く出るのであれば、例えそれが話題作りであったとしても、素直ではないと思います。
ファンのストレートなアイドルへの思いこそが、芸能界やそこに縋りつく(?)マスコミを支える原動力のひとつであるとすれば、余計な夾雑物は不要と思うばかりです。