■今夜は離さない / 橋幸夫&安倍里葎子 (RIVSYAR)
20世紀末の所謂「バブル経済」は各方面に多大な影響を残しつつ、その振幅によって様々な遺産や想い出、悔悟の情を含む功罪を今に伝える歴史になっている事は言わずもがなでしょうか……。
不肖サイケおやじにしても、実は「バブル経済」なぁ~てものに振り回された経験が人生の積み重ねとなって今に至っておりまして、殊更昭和60(1985)年頃から、そんな実態が無いとしか思えない経済の仕組みに不安というか、納得出来ないものを感じていましたので、そんなこんなの異議を公然と唱えていたら、案の定……。
昭和62(1987)年3月から異郷の地へ島流しにされた話は、これまでも度々述べてきたところです (^^;
しかし、それでもオンタイムで残された諸々の中には、そのエネルギーの質量の高さと申しましょうか、今なればこそ、懐かしさも含めて、再認識・再確認せずにはいらない魅力が確かにあると感じております。
で、それが例えば歌謡曲であれば、橋幸夫が安倍里葎子=安倍律子とのデュエット曲として昭和58(1983)年7月に発売した本日掲載のシングル盤A面曲「今夜は離さない」は、製作発売会社が佐川急便の出資した新会社「リバースター」だった事にも顕著だと書いてしまえば、それはサイケおやじの思い込みかもしれませんが、それはそれとして、当時の橋幸夫は長年在籍していたビクターから移籍という新しい道へ進んだのも、スポンサーの佐川急便の佐川清社長が、後援会長だった縁故と云われています。
確か橋幸夫が自ら副社長を務めた事でも大いに話題になった記憶がありますが、その最初のシングル曲が、このデュエット作であり、しかも相手役が失礼ながら、聊か低迷していた安倍里葎子=安倍律子だったというのも、なかなか世間を驚かせたましたですねぇ~~!?!
なにしろ、作詞:藤波研介&作曲:幸耕平、そして編曲:南郷達也が提供した件の「今夜は離さない」は、忽ち大ヒットした実に調子のイイ盛り場ポップス歌謡であり、絶妙に仕込まれたレゲエビートをラテンロックに変換した曲調こそは、それまでに橋幸夫が十八番にしていたリズム歌謡の流れを継承していましたし、もちろんデュエットの上手さは説明不要の歌心♪♪~♪
そして激烈(?)なオーディションで選ばれたと言われる安倍里葎子=安倍律子にしても、これまた彼女ならではの個性である程好い生臭みを随所に滲ませる節回しを聞かせてくれるんですから、これがウケなかったら、歌謡曲の神様の存在を疑ってしまうほどでしょうか (^^)
以降の彼女が「デュエットの女王」として各方面のスタアと共演レコーディングを残しているのも、この「今夜は離さない」の大ヒットがあればこそですよねぇ~~ (^^)
ところが、これが「バブル経済」の恐ろしさというか、彼女は勘違いをやらかしてしまい、橋幸夫とのデュエット作品は、これっきり……。
しかも自分主導で前述したとおり、デュエット作品を連続的に制作発売するという己惚れた行動に走ってしまい、そ~こ~しているうちに新天地だった「リバースター」が例の佐川急便事件で先行きが不透明に……。
今となっては、彼女も「バブル経済」に振り回されたという見方も出来るのでしょうか……。
ちなみに「リバースター」が黄金期だった頃には橋幸夫を筆頭に、藤圭子、松方弘樹、荒木一郎、田端義夫、セイントフォー等々、かなりの大物が契約していたはずで、それが前述の事件を契機として、平成5(1993)年に活動停止 ~ 解散に追い込まれたのは、我が国における「バブル経済」の終焉と重なった思いがあるんですが、いかがなものでしょう。
実はサイケおやじが島流しから許されて帰参が叶ったのが翌年7月であり、その後はバブルの後始末が仕事の大半だったという、せつないテイタラクでありました (^^;
ということで、サイケおやじは、この「今夜は離さない」を耳にする度に、なんともやるせない気分と自分でも不可解な高揚感に包まれてしまいます (^^;
う~ん、なにやら、今夜は、せつないなぁ…… (^^;