OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

日本語ロックだぜっ、ロウダウン!

2009-06-21 11:33:56 | Rock

ロウダウン / Chicago (CBSソニー)

1970年頃からの数年、「日本語のロック」なんていう論争がありました。

これは我が国のロック系ミュージャンやファンの間で、ロックは英語で歌うのが本筋、日本語はロックのビートには馴染まないし、だいたい海外で通用しない! なんていうのが概ねの論調でした。

しかし裏側には、この頃から歌謡曲と同じくらいウケまくっていたフォークのブームがあったことは否めません。現に内田裕也あたりは、フォークばっかり売れるのに憤っていたほどです。

もちろん「はっぴいえんど」にしても、今日の評価なんてウソのような売れないバンドだったんですよ。リアルタイムでは岡林信康のバックで、ちょっと知られていたぐらいです。

まあ、今となっては笑ってしまう皆様が大勢いらっしゃるでしょうねぇ。こんな論争に結論が出ないうちから外道やキャロルといった日本語のロックバンドが人気を集めていますし、キヨシローや佐野元春は自分の詩の世界を見事にロック化していますから。

しかし当時は、けっこうマジだったんですよ。

サイケおやじにしても、高校時代は学校にあった同好会に入れてもらってバンド活動をやっていたんですが、リードボーカルの上級生Tさんは岡林信康に影響されたのか、やたらに日本語のロックを歌いたがり、しかしバンドの中心だったベーシストの上級生Wさんは、英語の歌に拘っていました。

で、近づく発表会を前に、演目を決める時には口論に近いミーティングになったんですが、そこで私が持ち出したのが本日ご紹介のシングル盤でした。

「あの……、シカゴが日本語の歌、出してますけど……」
「おぉ! それっ、それ、いこう!」

と忽ちTさんは大乗り気で、Wさんも渋い顔……。後に、「お前、余計なこと言うんじゃないよっ」なんて、がっちり怒られました。

とはいえ、演奏パートでは間奏のギターソロがワウワウを使うので難しいのを除けば、なんとかなる感じでした。イントロは簡単なギターカッティングだし、オルガンのキメも親しみやすく、肝心のボーカルも日本語でしたからねぇ~♪ しかも蠢くベースはWさんの得意技!

ちなみにこの曲は、ご存じ、ブラスロックの王様として当時は日本でも大人気だったシカゴというアメリカの7人組が1971年春にシングル盤として発売し、既に本国ではスマッシュヒット! そしてそれを受けて我が国では来日記念盤として、わざわざ北山修に訳詞を頼んで作った日本語バージョンを出してしまうのですから、シカゴは本当に凄かったです。

というよりも、実はシカゴは「長い夜」でも述べたとおり、発表するアルバムがここまで、いずれも2枚組とあって、我が国では買えないファンが実に多く、それゆえにカッコイイ楽曲のシングル盤が尚更に人気を集めていたのです。もちろんこれも、彼等の3作目の2枚組アルバム「Chicago Ⅲ (Columbia)」からのカットでした。

う~ん、それにしても日本語バージョンとはねぇ~~~。リアルタイムでは、どう対処していいのか戸惑っていたのが、サイケおやじの偽らざる心境でした。

だって北山修は、あのフォーククルセダーズで活躍し、以降も作詞家として「戦争を知らない子供たち / ジローズ」とか「風 / シューベルツ」等々、多くの歌謡フォーク系のヒットを飛ばしていましたし、深夜放送のDJとしても広く人気があったという、極めてロックしていない人だと、私には思えたのです。それが……。

あと、海外の歌手が日本語で歌うことについては、例えばペギー・マーチやジョニー・ティロットソンあたりが有名でしょう。しかし、そういう人たちは大衆ポップス路線の歌手であり、シカゴのようにバリバリに政治へ介入するようなメッセージ性を含む、当時は反体制の旗頭ともいえるバンドが、こんな媚びたことをするなんて……。

という気持ちの整理がつかぬまま、言いだしっぺのサイケおやじが中古屋で買ってきたのが、このシングル盤というわけです。もちろん内容は既成の演奏パートを活かし、ボーカルだけが日本語という珍品ですよ。

しかし冷静に聴くと、リードボーカルのピーター・セテラも、またコーラスのロバート・ラムやテリー・キャスも、なかなか日本語のニュアンスを上手く掴んでいます。そして見事にロックビートに乗せているんですねぇ~~♪ これには、ちょっと目からウロコでした。

さて、気になる私達のバンド演奏ですが、ギターソロのパートはベースのWさんが易しく、それらしく作り直してくれましたし、ブラスのバートも同様に、合同演奏のブラバンにお願いして、なんとか体裁をつけました。

そして結論からいうと、その発表会のコンサートはブラバンやフォークと合同だった所為もあるでしょうが、ウケなかったですねぇ……。当時のロックバンドなんて、そんなもんですよ。逆にフォークのグループは吉田拓郎とか森山良子とか歌っていました。

最後に日本語のロックについて、私はタイガースの「シーサイド・バウンド」とかスパイダースの「バン・バン・バン」が、どうして評価されないのか不思議です。確かにグループサウンズはヒットシングルとして歌謡曲をやっていますが、ちゃんとロックしていたように思うのでした。

その意味で、この「ロウダウン」は、尚更に忘れられないシングル盤です。ちなみにアメリカ仕様と同じ英語バージョンが日本で発売されたのは、このシングルがヒットして以降ということを付け加えておきます。

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