■Loods Ends / Jimi Hendrix (Polydor)
さて、アーカイヴ商法と言えば、常に物議のあれこれを提供してくれるのがジミヘンの音源でしょう。
もちろんそれは故人の天才性に由来することは言わずもがな、急逝直前まで頻繁にやっていたスタジオレコーディングのソースが完璧な整理保存では無くとも、それなりに纏まっている事が逆に諸問題の根源かと思います。
また膨大に残れさているライプ音源の数々も、それが公式であれ、私的レコーディングであれ、全てに絶大な価値があるのですから、権利関係の煩雑さも含めて、今日ではどれがオフィシャルか、あるいはブートなのか、そういう区別が曖昧になっているものがどっさり!?
そこには裁判沙汰もあるらしいのですが、しかしファンにとっては、とにかく出てくるブツは片っ端から聴きたくなるのが偽りの無い心情ですから、例えそこに詐術や欺瞞があろうとも、お金を払ってしまう行為に罪はありませんよねぇ……。
さて、そこで本日のご紹介はジミヘンの死後、1974年春に編纂発売されたLPで、結論から言えば玉石混合!?
A-1 Coming Down Hard On Me Baby (1970年7月14日録音)
A-2 Blue Suede Shoes (1970年1月23日録音)
A-3 Jam 292 (1969年5月14日録音)
A-4 The Stars That Play With Laughing Sam's Dice
/ 賭博師サムのサイコロ (1967年7月18日録音)
A-5 The Drifter's Escape (1970年5月14日録音)
B-1 Burning Desire (1969年12月15日録音)
B-2 I'm Your Hoochie Coochie Man (1969年12月18日録音)
B-3 Have You Ever Been To Electric Ladyland (1967年10月25日録音)
まず、一応は未発表曲集をウリにしていながら、実は「賭博師サムのサイコロ / The Stars That Play With Laughing Sam's Dice」がシングル盤B面ながらも、既に世に出ていた隠れ人気曲という事で、アルバムの中では最高の完成度を示しているのは当然でしょう。まあ、ここまでLP未収録であった事に加え、それなりにリミックスが施されていますから、苦しい中にも大儀名文は成立しているのでしょう。
ですから、それを知ったファンにとってのお目当ては必然的に他のトラックに集中し、中でもジミ・ヘンドリクス(vo,g)、ビリー・コックス(b)、バディ・マイルス(ds,vo) が組んだバンド・オブ・ジプシーズによる1969年末から1970年録音の歌と演奏に対し、大いなる期待を抱いたのはサイケおやじばかりではないはずです。
そして完全に以前のエクスペリエンスとは異なる味わいを表出する「I'm Your Hoochie Coochie Man」のブルース&ソウルなジャムセッションは、明らかにジミヘンが次に狙っていたものの一端が感じられるんですねぇ~♪
あぁ、この重力過多な雰囲気は黒人ロックのひとつの典型でしょうか!?
特有の「淀んだ構成力」を聴かせる「Burning Desire」も、なかなか良いですねぇ~♪
しかしちょいと楽しみにしていた「Blue Suede Shoes」がスタジオ内のお喋りが半分というのは、大減点!?
ここにアルバム全体の散漫な印象、手抜きリサーチ等々が強く感じられ、ジミヘンの諸作中では低評価の要因があると思うほどです。
それは初っ端の「Coming Down Hard On Me Baby」にも強くあって、ここでのメンバーはジミヘン以下、ビリー・コックス(b) とミッチ・ミッチェル(ds) という、なかなか相互理解も進んでいるトリオのはずが、やはり未完成の誹りは免れないところ……。
ちなみに皆様ご存じのとおり、このトラックは後に全然関係のないスタジオミュージシャンによるオーバーダビングセッションで作り出された、最高のフェイクアルバム「クラッシュ・ランディング」に収録され、見事に復活するわけですから、素材としてはそれなりに凄いものがあるのです。
結局、このアルバムの弱点は、企画制作段階においてのスタッフの迷い(?)があったのかもしれず、一説によれば当時のジミヘンのマネージャーだったマイク・ジェフリーの離脱≒急死が要因という内情も……???
ですから、せっかく一番の目玉になるはずだった「Have You Ever Been To Electric Ladyland」の最初期バージョンが、実は全くの断片という強烈な肩すかしに許せないものを感じたとしても、それは天国のジミヘンには責任の無い話だと思います。
当然ながら、売れ行きも芳しくなったようで、リアルタイムではアメリカ盤が出なかったという実情も納得されるでしょう。
ところが、このアルバムには「Jam 292」と「The Drifter's Escape」いう、なかなか素敵なお宝が入っていて、まず前者はジミヘン十八番のワウワウを使ったアドリブプレイが強い印象を残しますし、後者はこれまたジミヘンが好んで歌うボブ・ディランの曲ということで、冷静に接すれば不相応なファンクギターが喧しい気もする後で、実は繰り返し聴きたくなる魔力があるんですねぇ~♪
演奏メンバー的にも、ジャケットにクレジットされていない面々、例えばダラス・テイラー(ds) とかスティーブン・スティルス(g,key) あたりの名前が取り沙汰される真相も含んでいるようですし、「Jam 292」に至っては後に発売される「ブルース」というオムニバスCDに収録された時、またまた凝ったミックスや編集が施されるのですから、たまりませんねぇ~~♪
ということで、所謂蔵出し企画の良し悪しが凝縮された感も強いアルバムです。
しかし主役がジミヘンである以上、リスナーの我儘はバチアタリであり、またそれに甘えたかのような発売元の遣り口は、両方ともジミヘン本人が決して望んでいなかった事は明らかです。
その意味で、一時は遺族の手によって体系的な復刻作業が進んでいながら、またまた最近の縺れ具合は様々な点において不明な発売元から多種多様な音源がダブったように登場するという、これは如何様に理由を捻り出したとしても、ファンにとっては有難迷惑でしょう。
少なくともサイケおやじの現在の立場は、そうです。
したがって、そういう未発表音源集を楽しまんと欲すれば、まずはリアルタイムで接していたアナログ盤LPを取り出すことに躊躇はありません。
残念ながら、この「ルーズ・エンド」はかなり以前にCD化されたっきり、今は廃盤状態という事もあり、皆様にはぜひともアナログ盤を探索鑑賞されん事をオススメ致します。
私は当時(小中学生)そのフェイクアルバム(クラッシュ~)好きでした。
ミッドナイト~も好きでしたし、そもそもクライオブラブが好きだったワケでして、ジミが弾いていないとは夢にも思ってませんで、バンドオブジプシーのスタジオ版とかだと思ってました。
まだ子供だったので、デビュー盤(アーユー)は好きでしたが、セカンドはリトルウイング、サード(2枚組み)はクロスタウンとかハウスバーニングとかしか聞いてなかったよーな…。
ジミのフォロワーと言われているウイリッヒとかマリノとかいましたけど、実は私、ロビントロワーが好きなんでして、アルバム(アナログ)はたぶん全て持ってました。
そんなワケで今日のご紹介はコレですね
http://www.youtube.com/watch?v=owtMj0g8tys&feature=related
ドラムがイマイチだったバンドにスライからビルローダンくんが来てくれまして、名盤といわれている「ロビントロワーライブ!」の時のトリオです。
コメント&ご紹介、ありがとうございます。
ジミヘン系のギタリストは多数出ていますが、ロビン・トロワーとフランク・マリノは1970年代の花形であり、ある意味では「イタコ」なんですよねぇ。
ただ、どんなに精進を重ねても、ジミヘンの魂が降臨するなんて事はありえない話で、またファンもそれを百も承知で聴くという作業が、やめられないわけです(笑)。
個人的にはアイズレーズのアーニーが、その系譜の中では一番好きかもしれません。
拙プログには、そういう部分を考慮して、アイズレー兄弟のアルバムを数枚、取り上げていますので、よろしくお願い致します。
それは、やはりジミヘンのギター(プレイ&サウンド)だけが、時代の何年も先を行ってるようで、バックのサウンドは良くも悪くも当時のロックの範疇内という印象でした。
現代のサウンドにおいても、決して遜色を感じないのが彼のギターなのかなと思います。
そういう意味では、あまりにも早すぎたギタリストだったのかもしれませんが、あの時代に彼が出現したからこそ、ロックは進歩したのかなとも考えています。
コメントありがとうございます。
「ワイト島」はバンド・オブ・ジプシーズではなく、ドラムスにミッチ・ミッチェルが復帰した再編エクスペリエンスなんです。
で、ジミヘン本人は個人的には不調だと思いますし、それには様々な要因で疲労の蓄積があったことは定説ですが、もちろんステージに出るとなれば、ちょいと悪いクスリも!?
しかし「ワイト島」の音源が評判イマイチなのは、ドラムスがオフ気味の録音&ミックスだと思っています。
あと本家バンド・オブ・ジプシーズを聴くのならば、CD2枚組の「フィルモア」がいいですよ♪ 尤も何かと問題は指摘されていますが……。
ジミヘン本人の進歩性は本人の自覚以上のものがあったのかもしれません。
ですから体系的にライブを楽しむ事が一番であって、以前に出ていた4枚組CD「ステージ」が良く纏まっていました。中でも1969年のサンディエゴでのライブは白熱と暴虐の闇鍋ですよ!
機会があれば、ぜひともお楽しみ下さいませ。
I'm Your Hoochie Coochie Man の緊張感は 何度聞いても鳥肌もんだと私は思うんですよ。
コメントありがとうございます。
ようこそ、いらっしゃいませ♪
>全体的にモサッとした感~
同感です。
しかし、それでぼやっとしていると、いきなり後頭部を殴られたようなショックが襲ってくるんですよねぇ~、このアルバムは!
「I'm Your Hoochie Coochie Man」も全く油断は禁物だと思います。
独善的な拙ブログではありますが、これからも、よろしくお願い致します。