■America c/w Total Mass Retain / Yes (Atlantic / ワーナー・パイオニア)
星の数ほどあるロックバンドの中でも、最高のテクニシャン集団だったのが、全盛期のイエスでした。
まあ、この全盛期を何時にするかで賛否両論は確かにあるわけですが、個人的にはジョン・アンダーソン(vo)、スティーヴ・ハウ(g,vo)、リック・ウェイクマン(key)、クリス・スクワイア(b,vo)、ビル・ブルフォード(ds,per) が前向きの気持で揃っていた1972年頃が一番、そうした特徴と真価を発揮していた時期だったと思います。
それは皆様がご存じのとおり「こわれもの」、そして「危機」というロック史上に燦然と輝く名作アルバムの二連発に結実しているわけですが、当時の感覚としては、これぞっ、プログレの代名詞ともいうべき、綿密にして大胆な構成と知的でダイナミックな演奏が完全融合した内容は、今さら述べるまでもないと思います。
このあたりは個人的に初期のロックジャズ系の演奏の方を好んでいるのが正直な気持です。しかし、そこから文字通りのプログレへと進化していったイエスの凄さは否定出来るものではありません。
ただし、そのあまりにも出来あがり過ぎた完成度に馴染めないだけです。
で、そんな気分の私の前に提出されたのが、本日ご紹介のシングル盤でした。
A面はもちろん、サイモンとガーファンクルの名曲名唱として有名な「America」のカパーなんですが、オリジナルバージョンに顕著だったゆるやかな思わせぶりが、イエスの手にかかると、究極のハードプログレに変転しているところがミソだと思います。
実際、いきなりシンプルでありながらテンションが高いベースのビート、素直なようでいて、実は一筋縄ではいかないジョン・アンダーソンのリードボーカルと綺麗なコーラスワーク、さらにエグイ仕掛けに満ちているギターをメインにしたバンドアンサンブル!
特に中間の静かな展開から豪快なウネリへと変化する後半への突入部分は、その緊張感と爽快感でゾクゾクしてきますよ。もちろんクライマックスでの激しい演奏は「お約束」を超越した、まさにイエスを聴く喜びに満ちています。
ちなみに、これは本来、約10分半ほどの演奏として、アトランティックのサンプラーアルバムに収録されていたものがオリジナルですが、それをあえて4分ほどに編集したのが、このシングルバージョン! 日本ではあまり注目されませんでしたが、欧米ではそれなりにヒットしているようです。
そして肝心のオリジナルバージョンについては、1975年に発売された変則ベストアルバムの「イエスタデイズ」に収録されていますので、聴き比べも楽しいところでしょう。
またB面に収録された「Total Mass Retain」も同じく編集バージョンで、前述した傑作アルバム「危機」からのカットですので要注意!
正統派のファンにとっては、こうしたシングル盤の編集バージョンは邪道とされるのが、プログレを聴く正しい姿勢かもしれません。実際、このシングル盤が発売された1972年には、ロックもアルバムで聴くのが当然になっていましたし、イエスというバンド自体の表現がLP単位の方法論になっていたのは否めません。
しかしサイケおやじのような天の邪鬼は、はっきり言えば、この頃以降のイエスのアルバムは退屈至極……。そして、決して嫌いなバンドではありませんから、どうしてもシングル盤で楽しんでしまうという邪道へと入ってしまうのですが、以前にも「Roundabout」のところで述べたように、シングルバージョンだからといって、イエスという凄腕集団の演じる醍醐味が失われているなんてことは絶対ありません。
否、むしろ凝縮されたスリルと強烈な感性が、尚更に楽しめると思うほどです。
最後なりましたが、学生時代にやっていたバンドで、この「America」をやってみようと無謀な挑戦をした結果は、挫折に他なりませんでした。
いらっしゃいませ♪
コメント、ありがとうございます。
懐かしいのが、「OLDWAWE」の本質です。
CDで聴いて気に入った曲を、アナログ盤の針音で楽しむのも、また格別ですよね。
これからも、よろしくお願い致します。
石川セリも、大好きですよ♪