OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ワクワクドキドキのデラニー&ボニー

2010-07-21 16:48:28 | Rock

Delaney & Bonnie & Friends On Tour with Eric Clapton (Atco)

まだ8月になっていないのに、この猛暑!?!

全く今年の夏も先が思いやられますが、そんな折に素晴らしいビッグニュースが飛び込んできました。

それは1970年代初頭に大ブームとなっていたスワンプロックの立役者だった夫婦デュオのデラニー&ポニーが作った、その代表作とも言える本日ご紹介のライプ盤が驚きのオフィシャル4枚組CDセットになって登場するという、実に嬉し過ぎる真夏のプレゼント♪♪~♪

先日の連休から出張し、すっかり疲れきって帰ったサイケおやじが、その届いていた注文メールに歓喜悶絶しながら、速攻で返信オーダーを出したのは言うまでもありません。

どうやら発売は月末らしいのですが、そこで待ち切れずに今日は、このアルバムです。

 A-1 Things Getting Better
 A-2 Poor Elijah - Tribute To Johnson
(medley)
 A-3 Only You Know And I Know
 A-4 I Don't Want To Discuss It
 B-1 That' What My Man Is For
 B-2 Where There's A Will, There's A Way
 B-3 Coming Home
 B-4 Little Richard Medley

録音は1969年晩秋~年末に敢行された欧州巡業からイギリスでのライプを収録していますが、そこにはデラニー・ブラムレット(vo,g) とポニー・プラムレット(vo) の主役夫婦以下、エリック・クラプトン(g)、デイブ・メイソン(g)、ボビー・ウィットロック(key)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(ds)、ジム・プライス(tp)、ボビー・キーズ(sax)、リタ・クーリッジ(vo) 等々が参加したという裏ジャケットのクレジットだけで、ワクワクさせられますよねぇ~♪

ちなみにこういう編成の豪華ライプが、当時のイギリスや欧州各地で巡業出来た経緯については拙稿「バングラ・デシ・コンサート始末・第5回」前後にも前後にも書きましたが、1969年に新作レコーディングをやっていたデラニー&ボニーと知り合ったジョージ・ハリスン経由でエリック・クラプトンと知己を得たこの夫婦が、ブラインド・フェイスの前座を務めたという流れがありました。

そこで今では有名な伝説になっていますが、当時既に煮詰まり気味だったエリック・クラプトンは前座で大熱演するデラニー&ポニーにショックを受け、ブラインド・フェイスのメンバーとして演奏する自分に嫌気がさしていたというのですが、おそらくはその前座の時と基本的には変わらないと思われるメンバーで楽しめるこのアルバムを聴いていると、さもありなんと納得されます。

しかし告白すれば、このアルバムは我国でも欧米と同じく1970年に発売されていたのですが、サイケおやじはその時から夢中になったわけではありません。それはエリック・クラプトンの参加が明らかにウリになっていたとはいえ、当時の一般的なイメージやサイケおやじの思い込みの中では、エリック・クラプトンはブルース~ニューロックの天才ギタリストであり、未だスワンプロックなんていう言葉が無かった当時、R&Bに分類されていたデラニー&ポニーが白人だった所為で、ほとんど真面目に受け取られなかったのです。

実際、日本では洋楽マスコミの評価もイマイチだったんじゃないでしょうか。

それが翌年末あたりからジワジワとスワンプロックなんていう新発明の用語が使われるようになり、あらためて再発見(?)されたのが、このアルバムだったように思います。サイケおやじが輸入盤のバーゲンでこれを買ったのも、その時期でした。

まあ、狙いはそれでもエリック・クラプトンだったわけですから、ちょいと笑止なんですが、いざ、レコードに針を落としてみれば、重いビートに煽られた熱気溢れる歌と演奏が幸せな観客の拍手歓声とともに繰り広げられる内容は、圧巻!

何気ない煽りの場面からスタートするA面初っ端の「Things Getting Better」から、もうデラニー&ポニーの歌とバンドの演奏は全開モードで、その粘っこいグルーヴは黒人R&Bに近いところから極めて白人ロックに融合した、これは今日でも稀有なスタイルだと思います。間奏で飛び出すエリック・クラプトンのギターも強烈に熱血ですし、カール・レイドルの蠢くベースは鳥肌っ! エキサイトしたポニーの叫び、力強いジム・ゴードンのドラミングも最高です。

また自然体で滲むゴスペルフィーリングが素晴らしい「Poor Elijah - Tribute To Johnson」のメドレーでは左右から絡みまくるギターソロが、おそらくはエリック・クラブンとデイブ・メイソンの仕業でしょうか。

そのデイブ・メイソンの代表曲としてサイケおやじも大好きな「Only You Know And I Know」が、ホーンセクションも入った尚更のスワンプ風味なのも高得点♪♪~♪ 当然なからギターで活躍するのはデイブ・メイソンと書きたいところなんですが、ちょいとエリック・クラプトンに臆しているような気配が残念……。それでも右チャンネルからは何時もながらの三連フレーズを使いまくる作者のギターが憎めませんねぇ~♪ まあ、それよりも、ここはカール・レイドル&ジム・ゴードンのへヴィなリズム、そしてまさにドロドロの泥沼グルーヴを楽しみましょうね♪♪~♪

またAラスの「I Don't Want To Discuss It」が、なんとなくジョージ・ハリスンっぽくなっているのは面白いところで、まあ例の「オール・シングス・マスト・パス」が、このメンツで作られていたことからして、自然の成り行きかもしれませんが、当然ながらグッと黒っぽいのがデラニー&ポニーの真骨頂です。う~ん、エリック・クラプトンのギターがエグイっ! そしてホーンセクションのリフが「寿っ司っ、食いねぇ~~♪」と一緒に歌えたりしますよ。

ですからB面でも粘っこくブルースしてしまう「That' What My Man Is For」が、決してブルースロックになっていないのは時代の証明かもしれません。むしろポニーの歌いっぷりは黒人ジャズボーカルのスタイルに近く、それでいて親しみやすさがあるんですから、これは当時最先端のロックが如何にハイブリットな状態であったのか、今では聴くほどに痛感されます。

そしていよいよのクライマックスは、まさに怒涛のスワンプロック大会!

スタックスサウンド直系の「Where There's A Will, There's A Way」はホーンセクションが咆哮し、ジム・ゴードンのドラミングが強烈無比! それゆえにデラニー&ポニーの歌が火傷寸前ですし、もう、このあたりをライプの生現場で体験したら、発狂するかもしれませんねぇ~♪

あぁ、それなのに、続く「Coming Home」が3本のエレキギターのエグイ絡み、ハードエッジなリズム隊のウネリとホーンセクションやキーボードが作り出す混濁したサウンドによって、それを許しません。もう聴いている自分の魂が何処かへ連れ去られるが如き覚醒と高揚感に包まれるんですよねぇ~♪

その意味でオーラスにR&Rがど真ん中の「Little Richard Medley」をやってくれるのは、本当に世俗に帰った快楽性が満点♪♪~♪ エリック・クラプトンのギターもヤードバーズのライプ盤時代に戻ったような楽しさがありますし、ボビー・キーズも大ハッスルしています。

ということで、今の時期には危険なほど熱いアルバムなんですが、そこに纏わる謎も幾つか残されています。

まず録音データの点から言えば、ジャケットには単にイギリス録音としか記載がなく、B面ラス前のメンバー紹介や挨拶のMCで「ハッピークリスマス」なんていう言葉が出ますから、12月ということは知れるのですが、アルバム全体のミックスにバラツキが散見されることで、幾つかの音源を編集したという疑惑が、これから世に出る前述の4枚組セットでどこまで明かされるのか、楽しみです。

またエリック・クラプトンがこの巡業の折にデラニー・ブラムレットからスライドギターを教わったという説があり、このレコードでは「Coming Home」で聴かれるスライドギターがデラニー・プラムレットと思われますから、そのあたりの謎も解明されるのでしょうか?

しかし、何れにしても、このLPアルバムそのものの素晴らしさが失せることはないでしょう。はっきり言えばアナログ盤特有の団子状の音と音圧が、デラニー&ポニーの暑苦しいまでの魅力と合致しているのです。

それがあえて4枚組CDにされることにより、綺麗にリミックスされるのは余計なお世話だと思いますから、一抹の不安も隠せないのが正直な気持でもあります。

あぁ、またしてもサイケおやじの心配性が出てしまったですねぇ……。

そんなことより、虚心坦懐に楽しむワクワク感を大切にする所存です。

そして、まずはこれを聴きまくります!

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セーシェルへ行きたい!

2010-07-20 17:01:55 | 日本のロック

Seychelles / 高中正義 (Kitty)

日本の夏といえば昭和40年代のベンチャーズ、そして昭和50年代からの高中正義で決まりです!

ともにギターメインで解放感満点の狂熱を提供してくれるその手際の良さは、まさに楽園的ですよねぇ~♪

本日ご紹介のアルバムは、その高中正義が昭和51(1976)年7月に出したソロデビューLPで、タイトルどおりの自然に満ちた南海の楽園をイメージ化したジャケットデザインと爽やかにして痛快なフュージョンっぽい演奏がジャストミートのヒット盤です。

 A-1 Oh! Tengo Suerte
 A-2 トーキョーレギー
 A-3 蜃気楼の島へ
 A-4 憧れのセーシェル諸島
 B-1 Funkee Mah-Chan
 B-2 サヨナラ……FUJIさん
 B-3 バードアイランド急行
 B-4 Tropic Birds

まずアコースティックギターと効果音的なエレキギターで作られたイントロからして爽やかな「Oh! Tengo Suerte」は、一転して低い重心のビートに支えられたメインテーマへ入るという展開も、その曲メロの楽園的な広がりが本当に気持良く、隠し味的なエレピも冴えまくりなんですが、なんといっても高中正義のエフェクターを使いながらもメロディ優先主義のギターが素敵です。またロリ系女性ボーカルも、たまりませんねぇ~♪

演奏メンバーは高中正義(g,vo,per,arr) 以下、今井裕(key)、後藤次利(b)、林立夫(ds.per)、浜口茂外也(per)、斉藤ノブ(per)、ジェイク・コンセプション(sax)、TANTAN(vo)、井上陽水(vo) 等々の参加を得ていますが、ご存じのとおり、高中正義のキャリアはここから始まったわけではありません。

一応の歴史としては、昭和46(1971)年頃に成毛滋&つのだ☆ひろが組んでいたフライドエッグというロックバンドにベース奏者として参加したのが、本格的なプロ活動の第一歩とされているものの、実はサイケおやじは当時のフライド・エッグのライプに接しているのですが、高中正義の印象は全く残っていません。

まあ、当時は成毛滋が圧倒的なスタアでしたからねぇ。お客さんは皆、その天才ギタリストを見ていたというわけですが、それでもまだ十代だった高中正義が、つのだ☆ひろという凄いドラマーとリズム隊を構成していた事実は侮れないと思います。

で、その後、高中正義が一躍メジャー(?)になったのが、加藤和彦のやっていた和製グラムロックのサディスティック・ミカ・バンドにギタリストとして加入した昭和48(1973)年以降でしょうか。

ただしサイケおやじは今だから正直に告白致しますが、ミカ・バンド時代の高中正義が時として目立ちまくるところに、幾分のイヤミを感じていました。それは失礼ながら小賢しいというか、確かにテクニックは凄いと思いましたが、なにかしらノリが大らかではなく……。

ですから、ミカ・バンド解散寸前の頃から、そのメンバー達が独立してやっていたサディスティックスが矢沢永吉のバックをやったりする姿勢も、なんだかスタジオミュージシャンのアルバイト的なムードが濃厚で、ロック魂云々なんていうバカらしい思いからすれば、なんだかなぁ……。

しかし時が流れ、このアルバムを初めて耳にした瞬間、まさに目からウロコというか、あまりにも気持の良い演奏と「高中正義」という名前が一致しないほどのショックを受けたのです!?!

う~ん、この開放的なノリの良さって♪♪~♪

それはニューミュージックとフュージョンの幸せな結婚みたいな「トーキョーレギー」、同じくオトボケも哀しい歌詞がついた「サヨナラ……FUJIさん」という、当時の呼び方ではシティミュージック風のトラックもイヤミなく心地良いんですから、困ったもんだなぁ……、とサイケおやじは悔しくも複雑な心境で楽しんでいたのが本音だったのです。

また、これも気持良すぎるコードの使い方がニクイばかりの「蜃気楼の島へ」や「憧れのセーシェル諸島」にしても、トロピカルな桃源郷への誘いを拒否出来るものではありません。そのゆったりとしたグルーヴ、ほどよいラテンビートとハミングコーラスのコラポレーションも全く間然すること無い仕上がりだと思います。

ちなみに高中正義が、このアルバム以降に推進していくギタリストとしての基本姿勢は、アドリブよりもメロディ優先主義というか、テーマメロディの快楽性はもちろんのこと、所謂間奏にしても、「即興」よりは「存在」のアドリブという感じで、徹底的に組み立てられ、作曲された部分を大切にしたソロパートを聴かせていくことにあります。

それは実際のステージライプでも大切にされ、もちろん「即興」のギターソロは飛び出すのですが、このあたりはベンチャーズと同じように、リスナーの耳に馴染んだ「お約束」のフレーズを弾くことにより、一層の親しみやすさと大衆性を獲得するという潔さは、もっと評価されていいんじゃないでしょうか。

ですから生真面目にフュージョンをやってしまった「Funkee Mah-Chan」や「バードアイランド急行」が、その熱気や凄腕揃いのメンバーによるテクニック披露宴という趣旨は理解出来るものの、残念ながらサイケおやじには面白くありません。

ただ、それゆえにオーラスのゆるやかな「Tropic Birds」が「憧れのセーシェル諸島・バート2」という趣向に仕上がっているのは、その余韻の残し方も含めて流石♪♪~♪

ここまでの全てが、この演奏に収斂するといって過言ではないと思うばかりです。

それとアルバム全篇で効果的に使われている女性ボーカルのハミング&コーラスは、TANTANこと、後の大空はるみ♪♪~♪ ご存じのように我国のラテンフュージョンでは第一人者の松岡直也グループでも活躍した実力派で、確か森野多恵子という芸名でGS時代にはホワイトキックスというバンドに参加していたと記憶していますが、このアルバムの気持良さは彼女の存在にも大きな秘密があるんじゃないでしょうか。

ということで、リアルタイムのお洒落な喫茶店やブティックとか、若者が集う場所では重宝されたアルバムでした。

特にA面の心地良さは、まさに絶品♪♪~♪

ちなみに高中正義のギタースタイルや音楽志向は、サンタナとの比較対照が避けられないところでしょうが、確かに音色やチョーキングの使い方、あるいはラテンフュージョンっぽい部分の共通的は否定出来ないでしょう。

しかし高中正義は、あくまでも自らのギターがメインであり、ボーカルは「たーへ」なこともあるんでしょうが、あえてそれほど歌わずに人気を集めたのは驚異的でした。そこには既に述べたように、アドリブが常識のギターによる間奏にも「作曲」を堂々と用いていたアイディアの冴えがあったからでしょう。

それはこのアルバムが出た翌月にシングル盤として発売された、アグネス・ラムのイメージ映画「太陽の恋人」のテーマ曲「Sweet Agnes」において、尚更に全開!

こうして高中正義は昭和50年代にギター青少年の憧れの存在になったのです。なにしろギターだって堂々と高中モデルとか売っていたほどだったんですよ。もちろん海辺のドライブには「TAKANAKA」印のカセットが御用達♪♪~♪

それでもひとつだけ、サイケおやじが今でも残念なのは、このアルバムを聴いて憧れたセーシェル諸島には、未だに行くことが叶わぬこと……。

そこで毎年夏には、これを取り出すことも多いというわけです。

やっぱり夏はギターインスト!

最後になりましたが、暑中お見舞い申し上げます。

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ボサノバ夢の共演は極上ポップス

2010-07-19 16:45:30 | Pops

Astrud Gilberto & Walter Wanderley (Verve)

ほとんど梅雨も明けたというのに、ここ数日は暑苦しいアップを続けてしまい、反省しきりのサイケおやじです。

まあ、そういう「ズレ」が天の邪鬼なんていう言葉では表せない本性なんですよね……。

そこで本日は極めて夏の定番を取り出してみました。

それはボサノバの女王と我国では認定されるアストラッド・ジルベルトがクールなラウンジオルガンの第一人者というワルター・ワンダレイの共演盤♪♪~♪

もう、これだけでその場に涼しい風を感じてしまうんじゃないでしょうか。

 A-1 A Certain Smile
 A-2 A Certain Sadness
 A-3 Nega
 A-4 So Nice
(Summer Samba)
 A-5 Voce Ja Foi Bahia
 A-6 Portuguese Washerwoman
 B-1 Goodby Sadness
(Tristeza)
 B-2 Call Me
 B-3 Here's That Rainy Day
 B-4 Tu Mi Delirio
 B-5 It's A Lovely Day Today

主役のアストラッド・ジルペルト(vo) をバックアップするのが、既に述べたようにワルター・ワンダレイ(org,p) 以下、ホセ・マリノ(b)、クラウディオ・スローン(ds)、ボビー・ローゼンガーデン(per,ds) と裏ジャケットに記載され、さらに匿名参加のギターはおそらく、ジョアン・ジルベルトだと言われています。

ちなみに録音は1966年秋頃というのが定説ですが、当時のアストラッド・ジルベルトは大スタアであり、一方のワルター・ワンダレイは渡米して制作した「Summer Samba」が大ウケしていた時期であれば、まさに夢の共演♪♪~♪

当然ながらプロデュースはクリード・テイラーという、商売とマニアックな情熱を両立させる辣腕仕掛け人の担当ですから、収録の曲タイトルに馴染みが無い皆様でも、そのメロディは必ずや一度は耳にしたことのある素敵なものばかりですよ。

まさにお洒落、そこかはとないアンニュイなムード、そして胸キュンの歌の演奏がたっぷりと楽しめますし、「お約束」の清涼感もハズレがありません。

中でもゆったりしたパラード解釈のバースから歌い出し、一転して軽快なボサノバビートで爽やかにしてセクシーなボーカルというアストラッド・ジルベルトの良さが存分に発揮される「A Certain Smile」は、アルバムの幕開けに相応しい最高の名唱だと思います。

余分なアドリブなんか入らない、僅か1分半に満たない演奏時間もニクイほど♪♪~♪

そして気になる「Summer Samba」は、あえて歌詞を付けられた所為でしょうか、「So Nice」というタイトルになっていますから、有らぬ期待もしてしまうんですが、結論から言えばワルター・ワンダレイのアドリブパートも含めて、イマイチの仕上がりだと思うのはサイケおやじだけでしょうか?

まあ、それだけワルター・ワンダレイのインストバージョンが素晴らし過ぎる出来だったということなんでしょうが、それよりもポルトガル語で歌われるアップテンポの「Nega」や「Voce Ja Foi Bahia」のほうが、ワルター・ワンダレイのクールで熱いアドリブやウキウキするようなアストラッド・ジルベルトのボーカルの良さが出ているでしょう。

ですから原曲がシャンソン(?)の「Portuguese Washerwoman」を全篇ダバダバのスキャット&ハミングで歌ってくれるのは全くの大正解で、バックの面々のノリも一際、たまりませんよ♪♪~♪

こうしてレコードをひっくり返し、B面に針を落とせば、いきなりお馴染みの「Tristeza」が軽快に披露され、もうこれはボサロックの桃源郷でしょうねぇ~♪ イントロのララッラァ~ラのスキャットだけで、アストラッド・ジルベルトの世界にどっぷりと惹きこまれますねぇ~♪ もちろんワルター・ワンダレイ以下の演奏パートも完璧で、その歌心出来過ぎのアドリブは絶品の極致! シャープなリズム&ビートの作り方も唯一無二と断言して後悔しません。

さらに和みの「Call Me」や「Here's That Rainy Day」は、本当に癒し系といって過言ではないのですが、実はビリッとしたワルター・ワンダレイのアドリブやバッキングが意外に曲者かもしれません。ちなみにこのアルバムセッションではオルガンとピアノの両刀使いというワルター・ワンダレイですから、当然のように多重録音も駆使されているんですが、それほど気になることもないと思います。むしろ「Here's That Rainy Day」のようにジャズ色が強いアレンジでは、その手法を用いることによって、ガチガチになることが避けられているんじゃないでしょうか。

それは続く「Tu Mi Delirio」も同様で、まあ、それゆえにラウンジ感覚が滲み過ぎるような気もするんですが、まあ、いいか……♪

と納得させられるのも、オーラスの「It's A Lovely Day Today」が、もはやボサノバというよりもボサロック系ポップスに限りなく接近しているからで、こうした境界線をあえて意識させてしまうクリード・テイラーのプロデュースは本当に上手いと思います。なにしろアストラッド・ジルペルトは以降、急速にソフトロック路線に傾斜したアルバムを出したり、我国では歌謡ボサノバを歌ったりもしたんですが、それがイヤミになっていないんですよねぇ。

むしろボサノバという実にお洒落な大衆音楽が、他のジャンルにも自然に溶け込んで、さらにそれらを包括した魅力として新たな生命を得る結果だけが、強く残るのです。

このあたりは何時もながらに大袈裟なサイケおやじの独断と偏見ですから、鬱陶しい!

心からお詫び申し上げます。

そして虚心坦懐にこのアルバムを楽しんでいただけることを祈念するばかりです。

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光る眼のグラント・グリーン

2010-07-18 16:36:48 | Soul Jazz

Visions / Grant Green (Blue Note)

すっかり日射しが強くなって、サングラスが必要となる皆様も多かろうと推察しておりますが、そこでフッと聴きたくなったのが、本日ご紹介の逆効果サングラスな1枚です。

もう、ほとんどR&Bシンガーのアルバムみたいなデザインからして、これはグラント・グリーンが露骨にソウルジャズやジャズロックを演じてくれた歓喜の人気盤であることが一目瞭然♪♪~♪

しかしそれゆえにリアルタイムの1970年代前半には、特にジャズ喫茶において完全無視の代表格でしたし、フュージョンブームの頃になっても、それほど再評価されたという事は無かったと記憶しています。

それでもサイケおやじにとっては、「ゴーイン・ウエスト」に続いて買った2枚目のグラント・グリーンで、それは中古で値段が捨値に近いほどの安さだったことによりますから、これが如何に白眼視されていたか、ご理解いただけるでしょう。

しかし内容は完全にサイケおやじの好みへ直球がど真ん中!

録音は1971年5月21日、メンバーはグラント・グリーン(g)、エマニエル・リギンズ(key)、ピリー・ウッテン(vib)、チャック・レイニー(el-b)、アイドリス・ムハマッド(ds)、レイ・アルマンド(per)、ハロルド・ガドウェル(per) という、モダンジャズでは裏街道の面々なんですが、所謂レアグルーヴなんていうジャンルがお好きな皆様には、血が騒ぐ編成かと思います。

A-1 Does Anybody Really Know What Time It Is
 う~ん、いきなり、これですよっ!
 ご存じ、邦題が「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」という、原題に劣らない長~いタイトルがつけられたシカゴのヒット曲を、実にグルーヴィな4ビートで演じるという、これがグラント・グリーンの良いところ♪♪~♪
 もちろん十八番の針飛びフレーズもやってくれますし、なによりもブラスロックという、ジャズミュージシャンからすれば生意気とも受け取られそうなジャンルを易々と、それもホーンセクション抜きで軽快に料理するあたりが、流石です。
 これは立派なモダンジャズ!

A-2 Maybe Tomorrow
 なかなか思わせぶりなパラード演奏で、クインシー・ジョーンズも絡んで作られたメロウな曲メロが、このメンツの手に掛かるとミステリアスなムードも濃くなるようです。とにかく纏まりの良いバンドのスロ~グルーヴは膨らみがあって、しかもタイト!
 後半で繰り広げられるナチュラルなテンポアップが殊更に素晴らしい思います。

A-3 Mozart Symphony #40 In G Minor, K550, 1st Movement
 さてさて、これが臆面も無いというか、誰もが一度は耳にしたことがあるはずのモーツァルト「交響曲第40番ト短調」を、正面からジャズロックで演じてしまった憎めなさです。
 実はこうした仕事は洋の東西を問わず、成人映画のサントラでは頻繁に使われている手口ですから、サイケおやじは今でも聞く度に様々な暗闇の中の名場面を思い出したするんですが、さりとてグラント・グリーンとバンドの面々がそれを意識していたか否かは、知る由もありません。
 ただ、ガチガチのジャズ者からすれば、ドC調!? なぁ~んて非難されかねないアレンジとストレートな演奏は、確かに気恥ずかしいところもあるでしょう。
 それでもアドリブパートに入ってからのグリグリにドライヴするチャック・レイニーのエレキベース、疑似オクターブ奏法も使うグラント・グリーンのギターはツボをしっかり押さえていますし、エレピやヴァイブラフォンが演じる彩りも良い感じ♪♪~♪
 ズバリ、お洒落でイナタイ!
 そんなこの時期ならではのグラント・グリーンの魅力が横溢していますよ。
 ドラムスやパーカッションも熱演する終盤、バンドが一丸となったファンクなノリを聴いてくれっ! 

A-4 Love On A Two Way Street
 所謂甘茶のスウィートソウルグループだったモーメンツの大ヒット曲ですから、ここでのメロウファンクな仕上がりは「お約束」以上の気持良さ♪♪~♪
 グラント・グリーンのギターはもちろん、ヴァイブラフォンやパーカッションの使い方の上手さ、さらに低い重心で蠢くエレキベースと小技も巧みなドラムスの存在感は流石の一言です。
 真っ黒というイメージが強いグラント・グリーンの意外なほどにソフトな歌心も、要注意だと思います。

B-1 Cantaloupe Woman
 そしてこれはサイケおやじがこのアルバムの中で一番に好きなジャズロック演奏の極みつき! しぶとく跳ねるビート&リズムに気持良く乗ったグラント・グリーンのギターが、これぞの名演を堪能させてくれますが、ピリー・ウッテンのヴァイブラフォンやエマニエル・リギンズのエレピによるアドリブが、またまたイケてます♪♪~♪
 あぁ、これはもう当時の日活ニューアクションか東映バイオレンスの映画サントラのような雰囲気が、たまりませんねぇ~~♪ 実際、サイケおやじは車の中の定番ミュージックのひとつとして、ハードボイルドを気取ったりするほどです。
 もう、こんな演奏だったらLP片面でも、全然OK!

B-2 We've Only Just Begun
 これまたご存じ、カーペンターズが1970年にヒットさせた素敵なメロディを、実に素直にソウルジャズ化した名演だと思います。
 いや、ソウルジャズ云々よりも、所謂イージーリスニングジャズって感じでしょうかねぇ~。とにかくフィール・ソー・グッドは保証付きですよ。

B-3 Never Can Say Goodbye
 う~ん、これもヤバイほどツボという選曲は、アイザック・ヘイズがリアルタイムでヒットさせていたニューソウルのメロウパラードですから、グラント・グリーンのギターも心置きなく歌いまっくています。
 そしてここで凄いのはバックの面々の自由度の高い演奏で、おそらくはきっちりとしていない、その場のヘッドアレンジでやってしまった感じが結果オーライ♪♪~♪ 後のフュージョンブームの真っ只中には、こういうやり方が主流となった先駆けかもしれません。

B-4 Blues For Abraham
 さて、オーラスは新主流派がファンクをやってしまったような、実にミョウチキリンなブルースという感じなんですが、アドリブパートの充実度はピリー・ウッテンのヴァイブラフォンが先発で示すとおり、手抜き無し!
 ですからグラント・グリーンも昔取ったなんとやらの快演ですし、こうなると、フェードアウトが如何にも勿体無い……。

ということで、サイケおやじがこのアルバムをゲットしたのは昭和47(1972)年末でしたから、まだまだ新譜の時期だったんじゃないでしょうか。実際、ジャケットも盤質も綺麗でした。

それが既に述べたように、中古で千円していなかったんですから、我国での扱われ方が知れようというものです。

しかし本国アメリカでは相当に売れていたそうですね。同時期に残されたライヴ盤を聴いても推察が容易なところから、この時期がグラント・グリーンにとっては第二の黄金期だったのかもしれません。

今日では日本でもレアグルーヴとかフリーソウルとかの範疇を設けたことにより、この手の演奏が再発見され、堂々と聴かれるようになったのは好ましいと思いますが、その反面、こういうサウンドが肩身の狭い時代があったということを忘れないで欲しいなぁ……。

なぁ~んて、天の邪鬼なサイケおやじは意地悪い中年者の本性を現すのでした。

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ブート売り場のならず者

2010-07-17 16:56:16 | Rolling Stones

Get A Line On You / The Rolling Stones (bootleg = CD)

出張中止を言い訳に、先日は昼間っから映画鑑賞に赴き、ストーンズのドキュメント作品「ストーンズ・イン・エグザイル」を堪能してきました。

その内容はストーンズが1972年に出した傑作2枚組LP「メインストリートのならず者」の内幕を、当時の写真やホームビデオ映像を使い、メンバーや関係者のインタヴューで構成したマニアックなものですから、決して一般向きではないでしょう。月末にはDVDの発売も予定されています。

しかし、それをあえて劇場公開するという商魂よりも熱意というか、そういう部分に共感しているお客さんが多いように見受けられたのは、これもサイケおやじの言い訳でしょうか。

まあ、それはそれとして、この「メインストリートのならず者」再発見(?)プロジェクトは公式リマスター盤に未発表テイクを追加しての発売、あるいは前述のドキュメント作品の制作等々、にわかに活発になったのと並行して、当然ながらブート業界も便乗しているわけで、本日ご紹介のブツもそのひとつです。

ちなみに該当アルバムのセッションからは、これまでも様々な流出音源が纏められ、例えば以前にご紹介した「Exile Of Main St. Outtakes」もそうだったんですが、新マスターの裏入手や音質の改善により、そのクオリティが日進月歩なのは言うまでもありません。

またネット時代の恩恵というか、それらの音源が無料でダウンロード出来たり、また入手に関してもメールによる販売情報が充実していますから、イリーガルな世界ではありますが、それは正直、良い時代になったものだと思います。そして実際、サイケおやじにしても幾つかのルートを確保し、楽しい無駄遣いをやっているというわけです。

で、これもサブタイトルに「Exile Outtakes」とあるように、以下の演目が収録されています。

 01 All Down The Line (acoustic)
 02 Get A Line On You
 03 Shake Your Hips
 04 Sweet Virginia
 05 Ain't Gonna Lie
 06 Bent Green Needles
(inst.)
 07 Let It Loose (inst.)
 08 Travellin' Man
 09 I'm Going Down
 10 Hillside Blues
 11 Stop Breaking Down
 12 Shine A Light
 13 Dancing In The Light
(inst.)
 14 Alladin Story (inst.)
 15 Leather Jacket (inst.)
 16 Potted Shrimp (inst.)
 17 All Down The Line (electric)

まず驚いたのは、その音質の優良性と統一感です。

ストーンズ中毒者ならば、収録演目がこれまでも度々ブートとして出回っていた過去はご存じだと思いますが、とにかくそれらは音質や音圧にバラツキがあって当然の世界でした。

ところが今回のブツは、通して聴いていても、それほど違和感の無い、なかなか丁寧な編集構成が高得点♪♪~♪ 最初と最後に「All Down The Line」を置いたのもニクイところです。

また業者の狙いが明らかに公式拡張盤の真相究明にあったのは間違いないところで、そのオフィシャルで登場してきた未発表曲が決してリアルタイムの生音源ではなく、現代で世に出すにあたり、相当なオーバーダビングや改変が施されたのは既成の事実になっています。

例えば「Dancing In The Light」は、ここでのインストバージョンを聴けば、拡張盤収録の未発表テイクが、新たにミック・ジャガーのボーカルやアコースティックギターをダビングした結果であることが知れるでしょう。

また「Alladin Story」も拡張盤では「So Divine」の曲タイトルで初出とされた演奏ですが、ここでは「So Divine」に聴かれた露骨にオーバーダビングしたリードギターが無いので、物足りなくもあり、また素朴な味わいも捨て難いという、なかなか意味深なトラックになっています。

またオーラスのエレクトリックバージョンの「All Down The Line」も、拡張盤のオマケテイクとは別物で、ほとんど完成直前でありながら、ラフな質感が中毒性を秘めた快演ですよ♪♪~♪ 実はシングル盤オンリーで女性コーラスが大きいモノラルバージョンと同一疑惑もあったのですが、微妙にミックスが異なっているように思います。ただし最後の最期に針音が聞こえるので、う~ん……。

それとこれまであまり良い音質で聞かれなかった「Ain't Gonna Lie」が、今回は合格点でしょうか。一般的には「スティッキー・フィンガーズ」制作時のデモ&未完成テイクとされていますが、こういう平凡なブルースロックをも魅力的にしてしまうストーンズ独自のグルーヴは、やっぱり素敵♪♪~♪

ですから、ど~でもいいようなプルースジャムの「Hillside Blues」でさえ、ミック・テイラーの如何にも「らしい」ギターワークを中心に聞けてしまうんですねぇ~♪

またブルースの古典をストーンズ流儀に演じた「Stop Breaking Down」が、公式テイクの混濁した雰囲気よりもずっと明快なノリで解釈されているのも嬉しいかぎり! もう、当たり前すぎて、面映ゆいほどです。

それと皆が大好きな「Shine A Light」が今回、さらにストレート真っ向勝負なテイクになっているのも強烈で、例のレゲエ風味は抑え気味にしつつも、ミック・テイラーのギターが泣きまくるという、実にツボを刺激する歌と演奏が結果オーライ♪♪~♪ 公式テイクでは印象的だったゴスペルコーラスも入っていません。

気になるインスト曲では、「Leather Jacket」が明らかにミック・テイラー主導というムードが濃厚で、何処かで聞いたことのあるようなリフやフレーズが組み合わされた展開は、およそストーンズらしくありませんが、ミック・ジャガーのボーカル入りテイクを期待すると、それはフェィセズになるかもしれませんね。

しかし「Potted Shrimp」は逆にキース・リチャーズの色が全く強く、これはこれで相当に面白いです。ワウワウのギターソロは誰?

ということで、プート初心者にもオススメ出来る優良盤です。

で、この機会に書いておきたいのが、ブートの世界にまでオリジナル盤云々を取り沙汰する昨今一部の存在です。

もちろんブートの世界にも、音源供給の過程も含めて、正統派レーベルの確固とした流れがあるのは認めるところです。そしてそういう一流(?)メーカーの出したブツが、しばらくするとコピー物として出回るのが、ブート業界の常識的な掟であることも、同様でしょう。

それを指弾するが如き態度でコピー物を非難するのは、ブートが所詮は泥棒業界であることを忘れているような気がしますねぇ。

実は最近、ストーンズの初来日となった1990年の公演から、東京ドームにおける隠密録音の8枚組が、なんと100セット限定で世に出たのですが、これはもちろん音質が良かった事に加え、初出音源があったので、忽ち完売! サイケおやじも必死でなんとかゲット出来ましたが、直後に追加プレスが売り出され、今ではコピー物が堂々と出回っている始末です。

また前述したドキュメント映画を上映していた劇場には、ブートの売人も密かに商売をやっていたりしたようです。

こんなところは以前、プロレスブームが全盛期の頃、後楽園ホールの周囲で昔のテレビ中継試合を収録したブートビデオを売っていたのと似ているわけですが、内容が優れていれば、ブートなんてCDRでも、MP3でも、何でもOKということです。

それよりも、例えば本日ご紹介のブートにも顕著なように、どこで集めてきたのかは知る由もない音源を丁寧にリマスターし、ひとつに纏め上げる根性と情熱には、潔くお金を払うのが、礼儀でしょうね。

もし、それがハズレであったとしても、人生の勉強と言えば大袈裟ですが、少なくとも一瞬の夢とワクワク感を買えるのであれば、それがマニアの生きる道かもしれません。

その違法性についても、まあ、ヤミ米を食っていると思えば……。

よしっ、一生、ついていくぞぉ~~~!

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雨の歌の魅力って、なに?

2010-07-16 17:04:03 | 歌謡曲

銀色の雨 / 小川知子 (東芝)

今日は昼過ぎからグングン気温が上がって、また強烈な青空と日差しがっ!

う~ん、梅雨は明けたんでしょうか?

いやいや、集中豪雨で被害甚大、雨が続いている地方もありますよね。

そんな時に雨の歌は自粛していたんですが、とりあえずジャケットのお洒落なデザインに免じて、またまた小川知子の人気曲をご紹介致します。

発売は昭和44(1969)年9月、おそらく彼女にとっては6枚目のシングル盤だと思いますが、それは典型的な昭和歌謡虚でありながら、イントロの琴の音色とクラシック調の重厚なストリングスが印象的♪♪~♪

ですから、ほどよいコブシを活かした小川知子のボーカルが、虚無と情熱の狭間を行き来する展開が絶妙です。

ちなみに作詞:松井由利夫、作曲:鈴木淳、編曲:森岡賢一郎という制作陣も鉄壁ですよ。

それと絶対的なのが、既に述べたようにジャケットデザインの魅力でしょう。

五線譜と音符による「雨」の表現、そしてなんとなく小中学生のような小川知子の佇まいは、かなり昔に人気を集めた「おしん」なんていうドラマの主役を演じた子役の女優さんに似ているのはご愛嬌!?!

まあ、それはそれとして、「雨」の歌としては定番化しても不思議では無い名曲に仕上がっています。

う~ん、それにしても「雨の歌」って、洋の東西を問わず、素敵な楽曲が多いですね。

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オーティス・クレイで踏み込む深南部

2010-07-15 16:49:00 | Soul

Trying To Live My Life Without You / Otis Clay (Hi)

サイケおやじの洋楽歴は結局、ベンチャーズからのエレキブームとビートルズを端緒とするロックやポップスを源にしているので、所謂黒人ソウルミュージックに関しては同時代に流行っていたモータウンサウンドやその他のR&Bよりも、サイケデリックブームからダイレクトに続いたと思われるニューソウルにシビレていたのが真相です。

もちろんオーティス・レディングアレサ・フランクリ、レイ・チャールズやサム&デイヴあたりは相当に夢中になって聴いていましたし、ジェームス・ブラウンも、またしかりです。

しかしそれは洋楽ヒットパレードという表の世界の出来事で、実は裏の世界にはディープソウルと呼ばれる黒人R&Bの深~~い奥の細道があり、中でもアメリカ南部系の所謂サザンソウルは恐ろしいほどの魅力!?

それをサイケおやじに気づかせてくれたのが、1973年に世に出たという、本日ご紹介のLPでした。

歌っているオーティス・クレイはミシシッピ生まれというコテコテの南部黒人で、少年時代からゴスペル歌手として活動していたところから幾つかのレコーディングも残しているようですが、世俗のR&Bを歌うようになったのは1960年代中頃、二十代前半の時期だったそうです。

しかしその頃に発売された楽曲はアメリカでも小ヒットでしたから、日本でレコードが出ていたのか否かは知る由もありません。それでもコアなマニアから熱い注目を集めていたのは間違いなく、実は1970年代末になって我国でオーティス・クレイが局地的にブレイクした時、サイケおやじはラジオでそうした初期の録音を聴くことが出来たのですが、そこに強く残されるストロングな余韻からは、まさに本物の良さが痛感されました。

で、サイケおやじがこのアルバムを始めて聴いたのは1975年の事で、既に述べたように当時は黒人音楽といえばニューソウル系に夢中だったんですが、そんなところから知り合いになった年上の友人から、こういうのも凄いもんだよ、と教えられたのが、ディープなサザンソウルの世界でした。

しかも件の友人が私に聴かせてくれたのは、本場アメリカで売られていた45回転のシングル盤がメインのホットなコレクションでしたから、その音の迫力と本物に接しているという感動は筆舌に尽くし難いものがあったのです。

う~ん、思わず唸るサイケおやじ◎!■▲?★♪~♪

当然、忽ち夢中にさせられる世界でした。

しかし、そうしたレコードはその頃、容易に入手出来るものではありません、

そこでアドバイスされ、まずはゲットしたのが、当時は全く知らなかった本日ご紹介のアルバムだったのです。

 A-1 Trying To Live My Life Without You
 A-2 I Die A Little Each Day
 A-3 Holding On To A Dying Love
 A-4 I Can't Make It Alon
 A-5 That's How It Is
 B-1 I Love You, I Need You
 B-2 You Can't Keep Running From My Love
 B-3 Precious Precious
 B-4 Home Is Where The Heart Is
 B-5 Too Many Hands

おぉ~、まずはいきなりシビレさせられるのが、A面ド頭収録の「Trying To Live My Life Without You」です。

なにしろ針を落とした瞬間、低い重心のソリッドなドラムスが鳴り響き、完全にツボを刺激してくれるホーンリフに導かれ、グッと苦みの効いたオーティス・クレイのボーカルが表現するのは、所謂メンフィスのスタックスサウンド直系という真っ黒な世界です。

しかも意外なほどにしなやかなリズム隊のグルーヴ、また甘さを含んだギターやキーボードの隠し味が、聴くほどに緻密で力強く、また女性コーラスの華やかな猥雑性も良い感じ♪♪~♪

そして全体から強く滲んでくるゴスペル風味は、隠しようもありません。

もう、この1曲だけで完全KO状態は請け合いですっ!

ちなみに以前にも書いたことがありますが、サイケおやじがこのアルバムに出会ったのと同時期、ロッド・スチュアートがワーナー移籍後の日本独自初シングルとして出した「Three Time Loser」が、なんとこの「Trying To Live My Life Without You」とクリソツな雰囲気!?

結論から言えば、その該当曲のみならず、当時のロッド・スチュアートの元ネタは、このアルバムといって過言ではないほどです。

そのあたりは「Holding On To A Dying Love」や「Home Is Where The Heart Is」でさらに顕著ですし、ストリングスの使い方までも含めて、実はロッド・スチュアートが前述のワーナー移籍後のレコーディングセッションを、その一部ではありますが、メンフィスで敢行されたという経緯も理解出来るところじゃないでしょうか。

ただしオーティス・クレイの歌手としての実力が、完全にロッド・スチュアートを凌駕しているのは、人種的な壁なんか問題にするまでもなく、このアルバムを聴けば納得する他はありません。

特に粘っこいスローグルーヴにおけるハードボイルドな泣きの表現は絶品で、「I Die A Little Each Day」や「I Love You, I Need You」といった、幾分露骨な愛の表現を含む歌詞の世界を苦い悔恨のパラードに仕立て上げる、そのボーカルの力量は最高ですよ♪♪~♪

また、タメの効いたビートを活かす唱法も素晴らしく、「I Can't Make It Alon」や「You Can't Keep Running From My Love」の何気無さを当たり前だと思ったら、完全にバチアタリでしょう。

ですから如何にもサザンソウルらしさが充満した「That's How It Is」や「Precious Precious」に思わずこみあげるものを感じたとしても、それはオーティス・クレイの思うツボ♪♪~♪

ちなみに演奏を担当しているのはティーニー・ホッジス(g)、チャールズ・ホッジス(key)、リロイ・ホッジス(b)、ハワード・グリムス(ds) といった、所謂ハイ・リズムに加えて、1960年代からのメンフィスソウルのキモを作り出していたウェイン・ジャクソン(tp) とアンドリュー・ラプ(ts) が主体となったメンフィスホーンズなんですが、ここではゴリゴリした表現よりも既に述べたように、しなやかさを大切にした、なかなか繊細なバッキングも成功の秘密かもしれません。

と同時に、ストリングの使い方がニューソウル風味に傾いている瞬間が要注意じゃないでしょうか。

そんなところからオーラスの「Too Many Hands」が、かなりファンキーに歌われるのは次回へ続くお楽しみの予告篇だったのかもしれず、実にジャストミートの締め括り♪♪~♪

ということで、全く捨て曲無しの大名盤!

極言すれば、これだけ充実した内容のサザンソウルアルバムは、そう簡単に見つかるものではありません。まさに完全無欠!

ですから1970年代末頃になって我国にサザンソウルのブームが到来した時、このアルバムが「愛なき世界で」の邦題で紹介され、いきなりの優良推奨盤になったのもムペなるかなではありますが、そのきっかけは昭和53(1978)年の来日公演だったと言われています。

残念ながらサイケおやじはそれに接していませんが、実はこの時は既に人気を集めていたO.V.ライトの代役だったという瓢箪から駒!? 真摯で熱いステージは完全に観客を圧倒し、そこから作られたライプアルバムも決定的な名盤になっているほどです。

ちなみに日本でのそうした流行は、やはり局地的というか、ロックファンに比べれば明らかにマニア性感度の高いものでした。

しかしそこに火がついたのは、昭和52(1977)年頃に突如として我国で復刻されたジェームス・カーという黒人歌手が1967年に出したアルバム「ユー・ガット・マイ・マインド・メスド・アップ(Goldwax)」で、これはもう、サザンソウルの全てが集約されている聖典なんですが、ご存じのように、その頃の黒人大衆音楽はブルースにしろ、R&Bにしろ、最初からLPメインで作られていたのは極わずかです。つまりシングル曲の寄せ集めというのが、アルバムの正体でした。

それが1970年代になると、一発のヒットが出ればもちろんのこと、有能な歌手やグループは完全にアルバム中心主義に移行し、例えばニューソウル系のミュージシャンになると、シングル盤を軽んずる傾向さえ表れていたのですから、そんな中で実直にひとつの歌と曲を大切する姿勢が強いオーティス・クレイがブレイクするのは、まさに温故知新だったのです。

そして以降、オーティス・クレイは何度かの来日公演も行い、驚いたことには「いとしのエリー」なんていう歌謡曲さえ歌うほどの人気者になるのです。

まあ、このあたりはレイ・チャールズもやっていますから、なんとも言えませんが、それを非難するファンが多いのも事実です。しかし今も元気で巡業活動をやっているらしいオーティス・クレイが、サザンソウルの魅力を我国に伝えた貢献は否定出来ないでしょう。

そういう分野をこれから聴いてみようと思われる皆様には、本日の1枚を強く推薦させていただきます。

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運命が交錯した1967年7月14日

2010-07-14 15:41:18 | Jazz

John Colrtane More Live At The Showboat 1963 (RLR = CD)

今日はジョン・コルトレーンの命日ということで、日頃は享楽的なサイケおやじも神妙に故人の演奏を聴いています。

で、このCDはちょいと前に入手した発掘音源物ですが、なんと珍しや! ジョン・コルトレーンがステージの現場で、1曲だけですがピアノを弾いているのがウリという大珍品!?

録音は1963年6月24日のフィラデルフィア、「ショウボート」という店でのライプで、メンバーはジョン・コルトレーン(ts,ss,p)、マッコイ・タイナー(p)、ジミー・ギャリソン(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という面々ですが、本来のレギュラードラマーだったエルビン・ジョーンズは、おそらく悪いクスリ等々の諸事情から、この日はロイ・ヘインズに交代していたものと思われます。

01 Chasing The Trane
 お馴染み、ジョン・コルトレーンの猛烈に咆哮するテナーサックスが全てという、まさに当時のライプでは定番だった過激なブルースですから、オフィシャルはもちろん発掘物も含めて、幾つものテイク&バージョンが世に出ていますので、正直に言えば新鮮味は無いでしょう。、
 しかし、やっぱり聴いているうちに熱くさせられるのは、コルトレーンが神様扱いだったジャズ喫茶で青春を過ごしたサイケおやじのような世代じゃないでしょうか。
 実際、演奏はマッコイ・タイナーが抜けたトリオ編成で進行し、極言すればジョン・コルトレーン対ロイ・ヘインズのガチンコ勝負が強烈! 特にロイ・ヘインズはヤケッパチの大熱演で、その一瞬も休まないハイスパートなドラミングは圧巻ですよ。これだけポリリズムをやっても絶対にビートの芯を外さないところは、暴走するジョン・コルトレーンにとっても最適の相手役だったんじゃないでしょか。とにかく燃えに燃えています!

02 It's Easy To Remember
 人気盤「パラード」の中でも特に印象的に残るスタンダード曲なんですが、まさかこれがライプの現場でも演じられていようとは、少なくともサイケおやじは初めて聴く演奏です。
 しかし前述「パラード」収録のテイクに顕著だったセンチメンタルな甘さを期待してはなりません。最初はジョン・コルトレーンもそれなりに吹いてくれるんですが、メロディフェイクからアドリブへと進むうちに、それは何かに憑かれたが如き激情の吐露へと変化するのです。
 ちなみにこのトラックは最初が静かなんで、ライプの現場に集っているお客さんの会話が相当に聞こえます。またジョン・コルトレーンが暴れる前から既に、ロイ・ヘインズのドラミングがヤケッパチ気味になっているんですねぇ。
 ここからは聴いているサイケおやじの全くの妄想なんですが、ほとんど演奏を聴こうとしないお客さんの存在がある以上、場数を踏んでいるメンバーにしてみたら、えぇ~い、好きにやってしまえっ! 的な思惑があったんじゃないでしょうか?
 特にロイ・ヘインズに、それが顕著……。

03 Up 'Gainst The Wall
 これも発掘音源では珍しい演目で、傑作盤「インプレッションズ」に収録されていたモード系変則ブルースですから、またまた激烈な展開を聞かせてくれるのですが、同時に「間」を活かしたというか、闇雲に突進するよりは空間の広がりを如何に自分達の演奏で支配するか? そんな目論見が感じられたりします。
 そして当然ながら、ここでもロイ・ヘインズが大暴れ! ある部分ではエルビン・ジョーンズよりもジョン・コルトレーンとの相性が良いのかもしれません。後半のヒステリックな対峙は激ヤバですよ。

04 The Inchworm
 ここではついにソプラノサックスを吹いてくれるジョン・コルトレーンということで、ファンにとってはロイ・ヘインズとの奇蹟の名演として有名な同年7月7日に行われたニューポートジャズ祭のライプバージョン「My Favorite Things」を想起させられると思います。
 結論から言えば、まあ、あそこまでの強烈なカタルシスはありませんが、それでも後半から終盤の混濁した熱気は、絶対に当時でしか発散出来なかったものでしょう。
 ちなみにマッコイ・タイナーが参加してくるのは、その終盤のクライマックスの場面からなんですが、例によって暗い情念を秘めたコードが鳴りだせば、そこはジョン・コルトレーンが全盛期の証になるんですから、やっぱり侮れませんね♪♪~♪

05 Impressions (incompltet ?)
 そしていよいよ始まるのが、これが出ないなと満足出来ないという定番激烈モードジャズ! 前曲の勿体ぶった終幕から間髪を入れずにスタートするテーマ部分の痛快さは、まさにジャズ喫茶全盛期を体験した皆様にとっては、パブロフの犬でしょう、
 さらにアドリブパートの先発はマッコイ・タイナーの饒舌なスピード違反なんですが、バックで煽る速射砲のようなロイ・ヘインズのドラミンクが、これまた凄いですよっ!
 う~ん、ついつい音量を上げてしまいますねぇ~~♪
 おぉ、「リーチング・フォース」より、激しいぜっ!
 ただしここに収録のトラックは、そのマッコイ・タイナーのソロパートが終わると短いベースソロ、そしていきなりラストテーマに繋がるので、恐らくは編集してあるんでしょうねぇ……。
 それでもマッコイ・タイナーのパートが本当に熱いですから、絶対に満足!

06 I Want To Talk About You (incompltet)
 これもステージライプでは定番のスタンダード曲ですから、珍しい演奏ではないでしょう。ここでも例によって例の如く、ミディアムテンポで繰り広げられる混濁の中から時折浮かび上がってくるメロディアスなフレーズが、まさにジョン・コルトレーン・カルテットならではのロマンとでも申しましょうか、わかっちゃいるけど、ついつい惹きこまれてしまいます。
 また終盤での「お約束」として無伴奏ソロを演じるジョン・コルトレーンにしても、そのあたりは百も承知のほどよい力みで、憎めません。
 ちなみにこのトラックも前半が欠けていて、途中からフェードインする音源ですが、贅沢は敵でしょうね、

07 Mr. P.C.
 これまたジョン・コルトレーンの演目としては人気のブルースでしょう。その調子の良いテーマのスピード感がモードジャズならではの激情的快楽の源ですから、リスナーはひたすらにそれに酔うことが許されるのです。
 そして期待に応えて熱演するジョン・コルトレーン以下バンドの面々は、本当に汗ダラダラの熱気をダイレクトに伝えてくれますよ。これも「お約束」という中盤でのテナーサックス対ドラムスのシングルマッチも本気度が異常に高く、全くの疲れ知らずには絶句させられると思います。
 ただしそこがあまりにも凄すぎた所為でしょうか、続くマッコイ・タイナーの調子がイマイチというか、纏まりの無いスケール練習みたいなのが???
 まあ、このあたりは如何にもブラベート録音らしい音質と日常性の証明なのでしょうか……。

08 After The Rain
 さて、これがお目当てというジョン・コルトレーンのピアノ演奏!?
 それは自作の厳かなパラード曲のテーマメロディを、ジョン・コルトレーンがひとりでポツンポツンと弾くだけという、いやはやなんともの音源です。
 しかも録音状態がそんな所為もあって、客席のざわめきやレコーディングノイズが目立つという、正直に言えば資料的な価値しかないでしょう、本当の珍品です。
 ただしリアルタイムのステージでは、そんな場面がこの日に限らず、案外と多かったのかもしれませんね。そんな想像が様々に出来るというのも、実は楽しいことだと思います。

ということで、ジョン・コルトレーンのファンにとっては、かなり興味津々の発掘盤になっています。

気になる音質も年代や録音条件を考慮すれば、ほとんど普通に聴けるレベルだと思いますし、モノラルミックスですが、その定位もしっかりしています。そしてドラムスのバランスが幾分大きいのが結果オーライのド迫力! 状況が許すならば、大きなスピーカーの前で思いっきりボリュームを上げて聴くのがベストかもしれません。

さて、この天才のジョン・コルトレーンが没したのは1967年7月14日とされていますが、その日の我国では、もうひとつの大きな出来事がありました。

つまり昭和42年の7月14日、テレビ特撮ドラマの最高峰として今も絶大な支持を集める「ウルトラセブン(TBS)」で可憐なヒロインのアンヌ隊員役に、菱見百合子時代のひし美ゆり子が抜擢されたのです(敬称略)。

その経緯については彼女自身のプログに秘蔵写真と共に現在継続アップ中♪♪~♪

http://blog.goo.ne.jp/anneinfi

しかしリアルタイムのサイケおやじは、ジョン・コルトレーンが天国へ召されたことも、また自分の人生に多大な影響と喜びを与えてくれた菱見百合子=ひし美ゆり子が女神となる運命を知る由も無く、イノセントな少年時代を送っていたのです。

う~ん、人の世にはこうした運命の交錯も必要なんでしょうねぇ。

本当にそう思います。

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夏が近づくと思い出すケイ・アンナ

2010-07-13 16:43:21 | 歌謡曲

太陽の恋人 / ケイ・アンナ (日本コロムビア)

どうも、スッキリしませんねぇ……。

天候も梅雨特有の蒸し暑さ、さらに局地的集中豪雨で被害も続出し、おまけに政情不安から景気の先行きも全く不透明……。

まあ、後者は我々国民の選択があってのことですから、納得する他はないんでしょうが、自然界の仕打ちには、些かの不条理を感じるのが年中行事になっています。

そこで本日の1枚は、真夏の太陽が早くやって来ますようにと、そんな願いを込めましたが、どうですかぁ~~♪?♪?♪

とにかくジャケ写に登場しているグラマーな美女が、昭和40年代に活躍した元祖グラビアアイドルのケイ・アンナというだけで、下半身を直撃されたあの頃を懐かしんでしまう皆様は、きっと私と同じ世代にちがいないと推察しております。

それは当時、男性雑誌のグラビアではウリだったヌードや水着姿で登場する美女達の多くが、例えば成人映画の出演者だったり、あるいは歌謡曲の若手や新人という、所謂芸能界にどっぷりのところから、ファッションモデルや現代で称されるところのバラドル等々へとシフトし始めた頃、いきなり人気急沸した中のひとりがケイ・アンナでした。

その魅力とはもちろん、ハーフ特有のスタイルの良さと愛くるしい面立ち、そしてグラマーな肢体を出し惜しみしない明るさが眩しいほど♪♪~♪ また同時にマルチタレント的な活動の中に顕著だった、感じの良さもあったと思います。

それだからこそ、各社のCMにも多数登場し、本日掲載したジャケットは、このシングル盤が発売された昭和45(1970)年7月に登場していた某写真フィルムメーカーとのタイアップ商品という性格も露わにしています。

で、気になる楽曲はカリプソ調で覚えやすい、なかなか楽しい仕上がりなんですが、肝心の彼女の歌唱力が業界用語で言うところの「ターヘ」なのでヒットせず……。、

それでもジャケットを眺めながら聴く彼女の歌声は、ちょいとロリ系の味わいもあったりして、好きな人にはマストアイテムかもしれません。

ちなみにロリ系に全く興味を持てないサイケおやじが、何故にこのシングル盤を所有しているとか言えば、それは「ジャケ買い」ってやつです。もちろん中古ですが♪♪~♪

ということで、昭和の時代の夏場には、こういう季節商品がレコード業界にも溢れていました。確か彼女も芸能人水泳大会みたいなテレビ番組で、この歌を演じていたような記憶があります。もちろん「演じた」と書いたのは、口パクだったからなんですねぇ。

まあ、失礼ながら彼女のような存在は、そこに居るだけで絶大な価値があるわけで、しかもケイ・アンナの場合は英会話もOKでしたし、機転の効いた司会も出来ましたから、決して単なるグラビアアイドルの枠には留まらなかった人でしょう。

しかし残念ながらと言うべきか、元ブルーコメッツの三原綱木との結婚により、それに終止符が……。

そこで、ど~しても今の季節になると思い出されるというわけです。

あぁ、それにしても、太陽の恋人♪♪~♪

こういう人が例え夏だけだったとしても、本当の恋人だったら、サイケおやじの青春はもっと素敵なものになっていたのに……。

つい、そんな夢のような泣き事を言いたくなる、今日この頃です。

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前のめりなヤードバーズのライブ

2010-07-12 16:50:12 | Rock

Five Live Yardbirds (Odeon / 東芝)

エリック・クラプトン中毒を患っていた昭和45(1970)年に買ったヤードバーズのライプアルバムで、もちろん日本盤ですから、イギリス盤オリジナルジャケットで有名な「鉄柵」写真は使われていないという我国独自のデザインが主張しているように、このLPのウリは明らかにスロウハンドの天才ギタリスト!

ですからサイケおやじの狙いも間違っていないはずだったんですが、正直に告白すれば、最初は完全なる肩すかしでした。

というのも、当時のサイケおやじが期待していたエリック・クラプトンとは、クリーム時代の激烈なニューロックギターであり、エグイ情感に満ちたブルース表現でしたし、ヤードバーズというグループそのものが、所謂クラプトン・ベック&ペイジの英国三大ギタリストを輩出した偉大なロックバンド、つまりは本物の最先端ロックグループというイメージが強かった所為で、結論から言えば、このアルバムで演じられているR&Bやブルースロックは、その音の古臭さもあって、なんだかなぁ……。

当時のライプ録音では当然かもしれない、現場の回りきった音にも、ガックリきましたですねぇ。

しかしその頃のサイケおやじにとっては、このレコードに支払った2千円は気の遠くなるほどの大金でしたから、なんとか元を取り返そうと、意地になって聴きまくりました。

すると、これはこれで、かなり凄い演奏が楽しめるようになったのです。

 A-1 Too Much Monky Business
 A-2 Got Love If You Want It
 A-3 Smokestack Lightning
 A-4 Good Morning Little Schoolgirl
 A-5 Respectable
 B-1 Five Long Years
 B-2 Pretty Girl
 B-3 Louies
 B-4 I'm A Man
 B-5 Here 'Ts

ご存じのとおり、これはヤードバーズにとって、イギリスで初めて発売されたLPなんですが、それをあえてライプレコーディングにしたところに、当時のヤードバーズの本質があると言われています。

それは同時代のイギリスのビートバンドの多くがそうであったように、黒人R&Bやブルースをロック的に解釈するという方法論がウケていたからで、ここで「ロック的」と書いたのは、イギリスの白人小僧達がアメリカのエルビス・プレスリーやエディ・コクラン、バディ・ホリー等々の白人R&Rスタアのやり方を真似るところからスタートし、後はアメリカの白人達が本物の黒人プルースやR&Bを一般的には聴かないという現実を知らなかった勘違いもあって、出来上がったものでしょう。

あくまでも個人的な意見としては、「ロックンロール」が「ロック」になったのは、その勘違いの最たる存在だったビートルズの大ブレイク以降だと思うんですが、ビートルズが黒人音楽ばかりではなく、ユダヤ人系白人職業作家が書いていた楽曲を黒人っぽく解釈していたのと同じく、例えばストーンズあたりが黒人大衆音楽を白人っぽく演じたとしても、それは瓢箪から駒のアイディアじゃなかったでしょうか。

まあ、そこまで深淵に考えていたというよりも、あくまでもイギリスという、本場アメリカとは隔絶した土地に根差した勘違いだったというのが、サイケおやじの独断と偏見です。

と、話がそれてしまいましたが、そこでこのアルバム制作時のヤードバーズは、キース・レルフ(vo,hmc)、エリック・クラプトン(g)、クリス・ドレア(g)、ポール・サムウェルスミス(b)、ジム・マッカーティ(ds) という5人組で、これはストーンズと同じ編成というも意味深なんですが、実は彼等はストーンズがメジャーな存在となった所為で出演出来なくなった小さな店に後釜としてブッキングされることが多かったとか!?

まあ、それだけ初期ストーンズっぽい演奏をやっていたということなんでしょうが、しかしこのアルバムを聴く限りにおいては、ストーンズを特徴づける粘っこさよりも、怖いもの知らずに突進する、なかなか前のめりなエネルギーが眩しい魅力になっていると感じます。

ちなみにここでの演目は黒人ブルースやR&Bのカパーばかりなんですが、かなりシブイ選曲もあったりして、今となってはヤードバーズの立ち位置の面白さが窺い知れるんじゃないでしょうか。

で、まずは過激に疾走するR&Rの「Too Much Monky Business」からして、チャック・ベリーのオリジナルバージョンよりもエリック・クラプトンが弾くリードギターの味わいがクリーム化しています。ただし録音の状態もあって、その音色がペラペラなのが残念なんですよねぇ……。このあたりは当時の楽器や機材の事情にもよるのでしょう。

しかしそれを上回るのが当時のバンドの勢いで、実は演奏がスタートする前にはレコーディングセッションを意識したメンバー紹介も良い感じ♪♪~♪ なんと既にエリック・クラプトンが「スロウハンド」と紹介されているのには、思わずニヤリとさせられました。

また「Got Love If You Want It」「Smokestack Lightning」「Good Morning Little Schoolgirl」と続く有名ブルース曲のカパーは、所謂ブルースロックの生成過程を記録したものとしても興味深く、ここはキース・レルフも大ハッスルなんですが、その声質は以外にもボビュラー系というか、まあ、このあたりが後にヤードバーズがヒット曲狙いのポップスバンド化していく根底にも関わることなのでしょう。十八番のブルースハープにしても、失礼ながらブライアン・ジョーンズのような毒気の滲む表現には至らず、ヒステリックな狂騒を煽るのが狙いのように聞こえます。

ただし、そこがキース・レルフの個性になっているのも確かなことでしょう。その必死さが当時の熱気の源になっていたのかもしれません。

ですから元来ファンキーロックな味わいをナチュラルに打ち出していたアイズレー・ブラザーズの「Respectable」をカパーしたこと自体が大正解! バックの面々とコーラスの掛け合いで盛り上がっていく展開の中で、待ってましたとばかりに激しく炸裂するエリック・クラプトンのギターも熱いです。

う~ん、それにしてもこの曲に限らず、クレス・ドレア、ポール・サムウェルスミス、そしてジム・マッカーティの3人が打ち出してくるビート&リズムは凄いですねぇ~~♪ これぞっ、真っ向勝負するロックの基本姿勢じゃないでしょうか♪♪~♪

そしてサイケおやじが一番に期待したエリック・クラプトンのスローブルースなギターが、B面初っ端の「Five Long Years」で存分に楽しめます! 正直に言えば、キース・レルフのボーカルには味わいが不足しているところは否めませんが、それを補って余りあるのが、エリック・スロウハンド・クラプトンなんですねぇ~♪ もちろん後年のような成熟した表現には至っていませんが、既にして黒人ブルースギターの常套句を完全に自分にものにしているところは、流石の天才性が狂おしいほどですよ。

こうしてムードが高まった後半は、いよいよ熱気が充満する白熱のライプ!

強靭なドライヴ感を放出するポール・サムウェルスミスのペースが凄い「Pretty Girl」、キース・レルフのハーモニカとエレック・クラプトンのギターがブレイクを挟んで対峙する「Louies」は、最高にカッコ良いです。

そしてクライマックスは土人のリズムを原始のロックビートへと翻案したボ・ディドリーがオリジナルの二連発ですから、たまりません。ステージも客席も汗びっしょりという雰囲気が如実に伝わって来る歌と演奏は、このセッションが録音された1964年3月へとリスナーを誘うでしょう。

本当は嫌いなので、こういう言葉は使いたくないのですが、ここまでストレートなロックの衝動は、所謂パンキッシュな勢いに満ちているんですよねぇ~♪

ということで、このアルバムは決してエリック・クラプトンだけではなく、当時のヤードバーズをやっていた5人の若者達が、如何に熱い魂を持っていたか!?!

そうした記録でもあると思います。

もちろんそんな観念的なことは言わずもがなでしょうね、実際に聴けば率直に感じることが出来るんですから。

しかし、このアルバムがイギリスで発売された1965年1月には、なんとエリック・クラプトンがヤードバーズを脱退し、もっとストレートなブルースを求めてジョン・メイオールのバンドへと加入!? しかも、そこで出来上がったものは決してイノセントなエレクトリックブルースではなく、ブルースロックだったという顛末も、皆様がご存じのとおりです。

結局、ブルースロックはロックンロールと同じく、黒人から元ネタを搾取した白人の発明品なのでしょう。しかし、そこには初志貫徹というピュアハートがあったはずです。

そういう原石の輝きが、このアルバムの一番の魅力じゃないでしょうか。

最後になりましたが、この日本盤は音がモコモコし、ライプ盤特有の歓声が強くミックスされている所為もあって、モアンモアンな残響音までもがロックしています。ところが後年、イギリス盤オリジナルLPを友人から聴かせてもらって吃驚仰天! 同じモノラルミックスでありながら、エッジの効いた鋭い音の輪郭が実に鮮やかでした。

そしてCD時代となり、そこで再発された幾つかのリマスター盤を聴いてみたんですが、音はそれなりにスッキリしているものの、なにか熱気がクールダウンしたような……。

ですから、今でもサイケおやじは、団子状になった音でしか鳴らない、この日本盤を愛聴しているのでした。

コメント (3)
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