1.1992年「防衛計画要綱」
ネオコンの最強の論客であるウォルフォッツ(現世界銀行理事長)は、パパブッシュ政権のときネオコンとして始めて政府高官に登用され、国防次官補に任命された。このとき、数名のネオコン人脈の人材が国防省入りを果たしている。この間にネオコンは軍需産業との結びつきを強めたと言われている。
湾岸戦争でフセイン政権を追い詰めなかった大統領の姿勢に不満を持ったウォルフォッツはこの提言をまとめ大統領に提出するが、大統領に無視される。
さすがに前稿に触れたシュトラウスの門下生である。彼の政治哲学を見事に昇華させ、先制攻撃戦略を世に始めて送り出すことになった。この提言の真髄を示す一節を次に引用する。
「ドイツや日本を含め、潜在的なライバルが地域的、世界的な影響力をひろげようとすることを阻止しなくてはならない。米国に直接関わりのない紛争でも、米国は核兵器などを先制的にもちいるべきである。米国の一極的な新秩序を打ちたて、それを防衛せよ」と、先制攻撃論を提唱したのである。アメリカを頂点とするアメリカ的な民主主義・自由主義の世界を、そういう新秩序を世界に打ち立てること、そのためには先制攻撃も辞さないという提言である。
この見解が軍需産業界から歓迎されたのは当然のことである。国防族に取り立てられたネオコン人材が軍需企業に迎え入れられ重役におさまっていくきっかけとなった。
2.1995年「完全な断絶 イスラエルの領土保全のための新戦略」
イスラエルのラビン首相が凶弾に倒れネフタニヤフ氏が首相に就任する直前に、ネオコンのシンクタンク「先端政治戦略研究所」が新首相になる彼へ提言を呈したのが、この表題の非公開文書である。これが後にイラク戦争とそれに続く中東の混乱をかもし出す源になることになろうとは。
これはイスラエルの取るべき政策を建策する内容であるが、ネオコンの論客がアメリカ国籍を有しながらイスラエルを心情的祖国としていることをはしなくも露呈している。
その内容を箇条書き風に整理する。
① パレスチナ解放機構が治安維持の約束を果たしていない以上、イスラエル はオスロ合意を守る必要はない。
② われわれの土地への望みは高貴であり、‥‥アラブがわれわれの権利、特 に領土にかかわる要求を完全に受け入れる『平和のための平和』こそ、イス ラエルの未来の強固な土台となるのだ。
③ そのために、イラクでサダム・フセインに代わる親イスラエル政権を樹立 せよ。そのためにヨルダンのハーシム王家にイラクの統治権を与える。
④ イラク掌握後、ヨルダン川西岸のパレスチナ人をヨルダンに追放し、現在 のヨルダンにパレスチナ国家を作らせる。イラクのシーア派を懐柔して、レ バノン・シリアのシーア派勢力を穏健化する。
「完全な断絶」というタイトルは和平という「幻想」を完全に絶ち切れという意味である。オスロ合意を受けて、人々のなかに中東の和平に対する希望がとにもかくにも生まれているなかでの提言である。
この提言は、イラクのフセイン政権を倒し、親米・親イスラエル政権を作るのを皮切りにアラブ諸国を彼らの言う「民主化」・「自由化」するという中東全体の改変政策である。形を変えた「ドミノ理論」である。ここで強調したいのは、この段階でネオコンがはっきりとイラク戦争を意識していたということである。
この提言に名を連ねたのは、リチャード・パール、グラス・ファイス、デービッド・ウァムザー、ジェームス・ユルバートンであり、彼らは後にすべて現ブッシュ政権の中枢に登用されることになる。
ネオコンの最強の論客であるウォルフォッツ(現世界銀行理事長)は、パパブッシュ政権のときネオコンとして始めて政府高官に登用され、国防次官補に任命された。このとき、数名のネオコン人脈の人材が国防省入りを果たしている。この間にネオコンは軍需産業との結びつきを強めたと言われている。
湾岸戦争でフセイン政権を追い詰めなかった大統領の姿勢に不満を持ったウォルフォッツはこの提言をまとめ大統領に提出するが、大統領に無視される。
さすがに前稿に触れたシュトラウスの門下生である。彼の政治哲学を見事に昇華させ、先制攻撃戦略を世に始めて送り出すことになった。この提言の真髄を示す一節を次に引用する。
「ドイツや日本を含め、潜在的なライバルが地域的、世界的な影響力をひろげようとすることを阻止しなくてはならない。米国に直接関わりのない紛争でも、米国は核兵器などを先制的にもちいるべきである。米国の一極的な新秩序を打ちたて、それを防衛せよ」と、先制攻撃論を提唱したのである。アメリカを頂点とするアメリカ的な民主主義・自由主義の世界を、そういう新秩序を世界に打ち立てること、そのためには先制攻撃も辞さないという提言である。
この見解が軍需産業界から歓迎されたのは当然のことである。国防族に取り立てられたネオコン人材が軍需企業に迎え入れられ重役におさまっていくきっかけとなった。
2.1995年「完全な断絶 イスラエルの領土保全のための新戦略」
イスラエルのラビン首相が凶弾に倒れネフタニヤフ氏が首相に就任する直前に、ネオコンのシンクタンク「先端政治戦略研究所」が新首相になる彼へ提言を呈したのが、この表題の非公開文書である。これが後にイラク戦争とそれに続く中東の混乱をかもし出す源になることになろうとは。
これはイスラエルの取るべき政策を建策する内容であるが、ネオコンの論客がアメリカ国籍を有しながらイスラエルを心情的祖国としていることをはしなくも露呈している。
その内容を箇条書き風に整理する。
① パレスチナ解放機構が治安維持の約束を果たしていない以上、イスラエル はオスロ合意を守る必要はない。
② われわれの土地への望みは高貴であり、‥‥アラブがわれわれの権利、特 に領土にかかわる要求を完全に受け入れる『平和のための平和』こそ、イス ラエルの未来の強固な土台となるのだ。
③ そのために、イラクでサダム・フセインに代わる親イスラエル政権を樹立 せよ。そのためにヨルダンのハーシム王家にイラクの統治権を与える。
④ イラク掌握後、ヨルダン川西岸のパレスチナ人をヨルダンに追放し、現在 のヨルダンにパレスチナ国家を作らせる。イラクのシーア派を懐柔して、レ バノン・シリアのシーア派勢力を穏健化する。
「完全な断絶」というタイトルは和平という「幻想」を完全に絶ち切れという意味である。オスロ合意を受けて、人々のなかに中東の和平に対する希望がとにもかくにも生まれているなかでの提言である。
この提言は、イラクのフセイン政権を倒し、親米・親イスラエル政権を作るのを皮切りにアラブ諸国を彼らの言う「民主化」・「自由化」するという中東全体の改変政策である。形を変えた「ドミノ理論」である。ここで強調したいのは、この段階でネオコンがはっきりとイラク戦争を意識していたということである。
この提言に名を連ねたのは、リチャード・パール、グラス・ファイス、デービッド・ウァムザー、ジェームス・ユルバートンであり、彼らは後にすべて現ブッシュ政権の中枢に登用されることになる。