=======================
不可解3、台湾人の多くが「漢民族」であるはずがない
=======================
じつは、この問題に対しては注意深く繊細な議論が必要なのだが、じつに投げやりな、デマともいえるプロパガンダが横行している。極めて残念なことだ。
A、アイデンテティ
~~~~~~~~
人々が自分自身の民族的アイデンテティーをどう表すかは、とてもナイーブな選択による。
例えば、終戦前の台湾で公学校→中学校→高等教育と、日本の完全教育を受けた人たちは「日本人」として大人を出発した。民族としてのアイデンテティは「漢民族」だが、文化的にも政治的にも国家的アイデンテティは「日本国民」であった。
1945年の「降伏」は中華民国への祖国復帰「光復」でもあった。「中華民国国民」への切り替えが強いられた。最初はそれを歓迎したが国民党政治は酷い人権無視弾圧を行うがゆえに裏切られ、「日本国民」のアイデンテティを身に付けた人たちは、「中華民国国民」アイデンテティを持ち得なかった。
それゆえに、「漢民族」という表現に対しても過剰な拒否反応を示す。柯徳三さんの発言がその一例だ。
だからといって、その人自身のアイデンテティ表現を、他人がとやかくいうことは出来ない。
しかし私達は、同じ台湾人であっても、国民党時代に「国語(北京語)」教育で育った人たちとか、民主化後「ビン南語」や「客家語」が解禁されて育った人たちとか、またさまざまな台湾原住民種族の人たちとか、外国で高等教育を受けた人たちとか、さまざまな人たちの存在も意識しておかなくてはならない。
台湾の人々に共通のアイデンテティ、そんなものはあらかじめ存在していたわけではないのだ。そんななかで苦悩と努力を重ねている台湾の人々。
私は、「図説 台湾の歴史」という本からそれを学んだ。
→http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1994.html
B、客観的には
~~~~~~~
台湾各層のひとたちがそれぞれにアイデンテティを模索することに、私たちは干渉できない。しかし、第三者としての私達には客観的事実を抑えておくことも大切だ。
台湾にはどのような人たちがいるか?
大まかな分類
イ、本省人(1945年以前から台湾に住んでいる人)
ロ、台湾先住民族
ハ、外省人(1945年以降、国民党と共に台湾に渡ってきた人)
本省人の多くは、清代に大陸の福建省や広東省から渡ってき農業を営む人々で、元々の母語は漢語の方言であるビン南語と客家(はっか)語である。これらの人々は平地に住んで狩猟生活を営んでいた先住民族(平埔族)と婚姻し多くが混血となっているが、生活の基本は漢人文化である。
また平埔族の多くは漢人文化に同化し、日本支配の時代には「漢人」として数えられていることが多く、平埔族の生活文化はわずかな痕跡を留めるにすぎないという。
台湾先住民族として今も残るのは、かつての「高山族」とよばれた各種族で、さまざまな言語をもつが生活様式や言語文化的基盤は近代化の中でこんにちは風化が顕著だ。
そして外省人。
これらの人々が絡み合い、また、日本治世下で育ったか、国民党治世下で育ったか、民主化後に育ったか、などによっても、世代間で異なるアイデンテティをもつ。
日本で問題になる世代間の意識格差など、台湾人の意識スペクトルに較べたら、ちっぽけなものだといえよう。
C、「十万分の1も漢民族ではない」は正しいか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「私の血には十万分の1も漢民族の遺伝子は混ざっていない」とは、NHKの番組にも登場した「日本語族」の柯徳三さんが、チャンネル桜のインタビューに答えた言葉だ。
これは柯徳三さんの心意気として聞くべきで、人類学や分子遺伝学の結論でも何でもない。
最近の台湾の分子遺伝学者の見解は次のようなものである。
>85%の台湾人に原住民の血混じる 2007-11-19
>馬偕病院の輸血医学研究室の林媽利主任がこのほど「非原住民台湾人のDNA構造」研究結果をまとめた。それによると、台湾の原住民(高砂族)は人口の1.5%を占めるに過ぎないが、台湾人(客家を含む)の85%に原住民(ポリネシア系)の血が混じっている ことが分かった。ここでいう「非原住民台湾人」とは戦前から台湾に住むホーロー、客家系を指す。林主任はボランティア200人から血液の提供を受け、100人を分析した結果から以上の研究結果を得た。ボランティアの一人、民進党の彭明敏氏は客家出身を自称していたがDNA分析から、父系に原住民、母系に中国北方系が混じっており、これに客家が認められるという。福建南部は山が多く、内陸に発展するより、東南アジアのほうに交流が深かったことが推測できるという。
これが、政治的プロパガンダの中で次のように変わってしまった。
>さてこのような真実を医学的に裏づけつつあるのが、馬偕医院輸血医学研究室主任の林媽利氏だ。 台湾の人口のうち、ホーロー人は七三・五%、客家人は一七・五%、外省人は七・五%、原住民は一・五%だが、十一月十八日付の自由時報の報道によると、林氏が最近発表したDNA調査の結果では、ホーロー人と客家人を合わせた「非原住民の台灣人」の八五%は原住民の血統であると言う。
なんと「85%の台湾人に原住民の血混じる 」が、「85%は原住民の血統である」に変わってしまったのである。
そして更に、>国際医学朝刊に掲載された研究論文「組織抗原体(HLA)」と、第11回国際HLAフォーラムで発表された「台湾各エスニックグループのHLA分析とその比較研究」によれば、【台湾の?南人、客家は、実は支那の漢民族とは全く異なる南アジア・越族の子孫である】という結論に至っています。 (delicious coffee氏)
となってしまい、漢人の血をもつビン南人、客家ですら、言葉の操作の中で完全に消去されてしまった。
そして、またさらに>つまり、現在の台湾人の約80%は、実は平埔族や高山族(高砂族)など台湾原住民族の子孫であるが、日本統治以前、平埔族を中心に一部の支那人によって同化させられ、族譜(家系図)まで偽造・捏造して漢民族だと名乗るようになっていた。
そのため、今でも自分の先祖が本当は台湾原住民であるにもかかわらず支那大陸から移住してきた漢民族だと勘違いしている台湾人が多いのです。 (delicious coffee氏)
おいおい!
こうして福建省や広東省からの渡来漢人、ビン南人や客家人はどこに行ってしまったのか?
日本のネトウヨ諸君によって苦心惨憺つくられたデマ(言葉の操作)が、台湾に逆輸出されたとでもいうのだろうか? まさか!!
D、人口構成のデータ
~~~~~~~~~~
最後に参考として、台湾総督府による人口統計のデータなどを挙げておこう。漢人(漢民族)という概念は昔も今も、確固としたものとしてあったのである。(昔の平埔人が漢人に吸収されているとしても、漢人が平埔人に吸収されたわけではない)
昭和2年(1927年)台湾総督府データ
(20)「本島人」とは通常台湾住民中の漢民族を指称す。対岸の福建広東地方より移住したるものにして、嘗ては原住者たる「生蕃人」に対して植民者たる地位に立ちしものである。我領台後は「内地人」が本島人及生蕃人に対して植民者たる地位にある。昭和二年末現在台湾の人口は約四百三十三万七千人にして、内本島人は約四百万九千人にして全体の九割二分余を占め、内地人は約二十万三千人、生蕃人約八万七千人、外国人約三万八千人である。
(矢内原忠雄全集2「帝国主義下の台湾」p217脚注)
1934年末現在の台湾総督府データ
台湾全島の総入口は 5,194,980人、そのうち漢民族が総人口の 90.0%(4,676,259人)を占め、次いで日本人 5.1%(262,964人)、原住民 4.0%(206,029人)、外国人 0.9%(48,412人)、朝鮮人0.0%(1,316人)であった。当時、台湾の漢民族は、中国大陸の福建地方や広東地方からの移住民から成っていたが、なかでも福建地方からの移住民の比率が非常に高かった。1934年末現在では、総人口に占める福建系住民の比率は 75.9%(3,942,139人)、広東系住民14。1%(733,910人)、その他の地方からの移住民0.0%(210人)であった。
( 「漢族系台湾人高年層の日本語使用 言語生活史調査を通じて」合津美穂2002年)
「現在」の中華民国政府データ
現在の台湾の住民構成比率は、?南系住民が総人口の 73.3%を占め、次いで外省人が 13%、客家系住民 12%、原住民 1.7%である3)。日本統治時代だけでなく、現在でも?南語を母語とする住民の比率が圧倒的に高いことがわかる。以下、本論で使用する「漢族系台湾人」は、本省人の?南系・客家系住民を指す。
( 「漢族系台湾人高年層の日本語使用 言語生活史調査を通じて」合津美穂2002年)
以上
不可解3、台湾人の多くが「漢民族」であるはずがない
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じつは、この問題に対しては注意深く繊細な議論が必要なのだが、じつに投げやりな、デマともいえるプロパガンダが横行している。極めて残念なことだ。
A、アイデンテティ
~~~~~~~~
人々が自分自身の民族的アイデンテティーをどう表すかは、とてもナイーブな選択による。
例えば、終戦前の台湾で公学校→中学校→高等教育と、日本の完全教育を受けた人たちは「日本人」として大人を出発した。民族としてのアイデンテティは「漢民族」だが、文化的にも政治的にも国家的アイデンテティは「日本国民」であった。
1945年の「降伏」は中華民国への祖国復帰「光復」でもあった。「中華民国国民」への切り替えが強いられた。最初はそれを歓迎したが国民党政治は酷い人権無視弾圧を行うがゆえに裏切られ、「日本国民」のアイデンテティを身に付けた人たちは、「中華民国国民」アイデンテティを持ち得なかった。
それゆえに、「漢民族」という表現に対しても過剰な拒否反応を示す。柯徳三さんの発言がその一例だ。
だからといって、その人自身のアイデンテティ表現を、他人がとやかくいうことは出来ない。
しかし私達は、同じ台湾人であっても、国民党時代に「国語(北京語)」教育で育った人たちとか、民主化後「ビン南語」や「客家語」が解禁されて育った人たちとか、またさまざまな台湾原住民種族の人たちとか、外国で高等教育を受けた人たちとか、さまざまな人たちの存在も意識しておかなくてはならない。
台湾の人々に共通のアイデンテティ、そんなものはあらかじめ存在していたわけではないのだ。そんななかで苦悩と努力を重ねている台湾の人々。
私は、「図説 台湾の歴史」という本からそれを学んだ。
→http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1994.html
B、客観的には
~~~~~~~
台湾各層のひとたちがそれぞれにアイデンテティを模索することに、私たちは干渉できない。しかし、第三者としての私達には客観的事実を抑えておくことも大切だ。
台湾にはどのような人たちがいるか?
大まかな分類
イ、本省人(1945年以前から台湾に住んでいる人)
ロ、台湾先住民族
ハ、外省人(1945年以降、国民党と共に台湾に渡ってきた人)
本省人の多くは、清代に大陸の福建省や広東省から渡ってき農業を営む人々で、元々の母語は漢語の方言であるビン南語と客家(はっか)語である。これらの人々は平地に住んで狩猟生活を営んでいた先住民族(平埔族)と婚姻し多くが混血となっているが、生活の基本は漢人文化である。
また平埔族の多くは漢人文化に同化し、日本支配の時代には「漢人」として数えられていることが多く、平埔族の生活文化はわずかな痕跡を留めるにすぎないという。
台湾先住民族として今も残るのは、かつての「高山族」とよばれた各種族で、さまざまな言語をもつが生活様式や言語文化的基盤は近代化の中でこんにちは風化が顕著だ。
そして外省人。
これらの人々が絡み合い、また、日本治世下で育ったか、国民党治世下で育ったか、民主化後に育ったか、などによっても、世代間で異なるアイデンテティをもつ。
日本で問題になる世代間の意識格差など、台湾人の意識スペクトルに較べたら、ちっぽけなものだといえよう。
C、「十万分の1も漢民族ではない」は正しいか?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「私の血には十万分の1も漢民族の遺伝子は混ざっていない」とは、NHKの番組にも登場した「日本語族」の柯徳三さんが、チャンネル桜のインタビューに答えた言葉だ。
これは柯徳三さんの心意気として聞くべきで、人類学や分子遺伝学の結論でも何でもない。
最近の台湾の分子遺伝学者の見解は次のようなものである。
>85%の台湾人に原住民の血混じる 2007-11-19
>馬偕病院の輸血医学研究室の林媽利主任がこのほど「非原住民台湾人のDNA構造」研究結果をまとめた。それによると、台湾の原住民(高砂族)は人口の1.5%を占めるに過ぎないが、台湾人(客家を含む)の85%に原住民(ポリネシア系)の血が混じっている ことが分かった。ここでいう「非原住民台湾人」とは戦前から台湾に住むホーロー、客家系を指す。林主任はボランティア200人から血液の提供を受け、100人を分析した結果から以上の研究結果を得た。ボランティアの一人、民進党の彭明敏氏は客家出身を自称していたがDNA分析から、父系に原住民、母系に中国北方系が混じっており、これに客家が認められるという。福建南部は山が多く、内陸に発展するより、東南アジアのほうに交流が深かったことが推測できるという。
これが、政治的プロパガンダの中で次のように変わってしまった。
>さてこのような真実を医学的に裏づけつつあるのが、馬偕医院輸血医学研究室主任の林媽利氏だ。 台湾の人口のうち、ホーロー人は七三・五%、客家人は一七・五%、外省人は七・五%、原住民は一・五%だが、十一月十八日付の自由時報の報道によると、林氏が最近発表したDNA調査の結果では、ホーロー人と客家人を合わせた「非原住民の台灣人」の八五%は原住民の血統であると言う。
なんと「85%の台湾人に原住民の血混じる 」が、「85%は原住民の血統である」に変わってしまったのである。
そして更に、>国際医学朝刊に掲載された研究論文「組織抗原体(HLA)」と、第11回国際HLAフォーラムで発表された「台湾各エスニックグループのHLA分析とその比較研究」によれば、【台湾の?南人、客家は、実は支那の漢民族とは全く異なる南アジア・越族の子孫である】という結論に至っています。 (delicious coffee氏)
となってしまい、漢人の血をもつビン南人、客家ですら、言葉の操作の中で完全に消去されてしまった。
そして、またさらに>つまり、現在の台湾人の約80%は、実は平埔族や高山族(高砂族)など台湾原住民族の子孫であるが、日本統治以前、平埔族を中心に一部の支那人によって同化させられ、族譜(家系図)まで偽造・捏造して漢民族だと名乗るようになっていた。
そのため、今でも自分の先祖が本当は台湾原住民であるにもかかわらず支那大陸から移住してきた漢民族だと勘違いしている台湾人が多いのです。 (delicious coffee氏)
おいおい!
こうして福建省や広東省からの渡来漢人、ビン南人や客家人はどこに行ってしまったのか?
日本のネトウヨ諸君によって苦心惨憺つくられたデマ(言葉の操作)が、台湾に逆輸出されたとでもいうのだろうか? まさか!!
D、人口構成のデータ
~~~~~~~~~~
最後に参考として、台湾総督府による人口統計のデータなどを挙げておこう。漢人(漢民族)という概念は昔も今も、確固としたものとしてあったのである。(昔の平埔人が漢人に吸収されているとしても、漢人が平埔人に吸収されたわけではない)
昭和2年(1927年)台湾総督府データ
(20)「本島人」とは通常台湾住民中の漢民族を指称す。対岸の福建広東地方より移住したるものにして、嘗ては原住者たる「生蕃人」に対して植民者たる地位に立ちしものである。我領台後は「内地人」が本島人及生蕃人に対して植民者たる地位にある。昭和二年末現在台湾の人口は約四百三十三万七千人にして、内本島人は約四百万九千人にして全体の九割二分余を占め、内地人は約二十万三千人、生蕃人約八万七千人、外国人約三万八千人である。
(矢内原忠雄全集2「帝国主義下の台湾」p217脚注)
1934年末現在の台湾総督府データ
台湾全島の総入口は 5,194,980人、そのうち漢民族が総人口の 90.0%(4,676,259人)を占め、次いで日本人 5.1%(262,964人)、原住民 4.0%(206,029人)、外国人 0.9%(48,412人)、朝鮮人0.0%(1,316人)であった。当時、台湾の漢民族は、中国大陸の福建地方や広東地方からの移住民から成っていたが、なかでも福建地方からの移住民の比率が非常に高かった。1934年末現在では、総人口に占める福建系住民の比率は 75.9%(3,942,139人)、広東系住民14。1%(733,910人)、その他の地方からの移住民0.0%(210人)であった。
( 「漢族系台湾人高年層の日本語使用 言語生活史調査を通じて」合津美穂2002年)
「現在」の中華民国政府データ
現在の台湾の住民構成比率は、?南系住民が総人口の 73.3%を占め、次いで外省人が 13%、客家系住民 12%、原住民 1.7%である3)。日本統治時代だけでなく、現在でも?南語を母語とする住民の比率が圧倒的に高いことがわかる。以下、本論で使用する「漢族系台湾人」は、本省人の?南系・客家系住民を指す。
( 「漢族系台湾人高年層の日本語使用 言語生活史調査を通じて」合津美穂2002年)
以上