待望のセンターバック候補、3人
ザック日本の代表DFに、特にそのセンターバック候補に、僕にとって待望の選手たちが選ばれた。今までの代表センターバックは、中澤も闘莉王も、世界的にもほとんど最強に近いけれど唯一惜しいことにスピードがないと、ここでも再三述べてきた。センターバックにスピードがないと、速い相手とはどうしても完全な1対1を避けねばならないから守備陣形に無理が生じていたし、有利な体勢の1対1ですら振り切られて失点ということも起こっていた。その典型例を二つあげてみよう。
①まず、去年9月のガーナ戦。敵GKの長い折り返しにゆうゆうと追いついたはずの中澤が、猛然と追走してきたガーナのギャンに体を入れ替えられて得点されてしまった場面だ。つまり、スピードがないセンターバックは、世界相手には危険この上ないのである。
②次に、南ア大会直前における「あの土壇場で守備型チームへの再編成」。速くて、読みが良く、ファールなしで敵を止められる阿部がファースト・ボランチで急遽起用されたこと。これも、日本の最大弱点、センターバックのスピード不足対策だったのだと、僕は理解してきた。僕自身が昔からここで「阿部起用か、さもなくば速いセンターバックの育成か」と主張してきたから、「我が意を得たりの阿部起用による世界16位」だったと喜んだものだった。
さて、だが、大きくて強い外人と競り合うだけの体格がある日本人センターバックで、速くて強い人は意外に少なかったと言えるのではないか。
そこに今回は、83、85、87年生まれの3人のセンターバックが選ばれた。なによりもみんなが共通して速いのである。これがザック好みなのだろう。というよりも、オシムもこう主張していて、過去には伊野波を選んだことがあるから、この速さが世界水準なのだと言って良かろう。この顔ぶれと、その意味などを、眺めてみたい。
それぞれ、栗原勇蔵(横浜、183センチ)、伊野波雅彦(鹿島、179センチ)、槇野智章(広島、180センチ)。彼らは中澤(187センチ)、闘莉王(185センチ)に比べて大きくはないが、共通して速いし、強いし、その上にそれぞれ特技を持っている。栗原は、右足のシュート力と闘争心のもの凄さ。伊野波は、左右の精度ある縦パスをどんどん打っていく。槇野は、フリーキックを任されることもあるチーム有数の点取り屋でもある。
いつもやる予測をしてみたい。誰が、中澤、闘莉王に割り込むだろうか。可能性の高い順を、僕はこう見る。①伊野波、②槇野、③栗原、と。その理由を述べてみよう。
まず、アジア相手ならいざ知らず世界相手のセンターバックには、第1に防御力が要求されるはずだからである。防御力はやはり速い読みと対応力が大事なのであって、読みの力の順番ならこうだろう、と。次いで、その防御力が同じと仮定したら、次に日本のセンターバックに必要なのはシュート力、得点力ではなくって、フィード・縦パスの能力だと考えるからだ。ただでさえ世界相手の日本はボールを前に進めることがヘタなのだから、サイドから正確なクロスさえ出せる伊野波の縦パスのフィード力こそ、日本のセンターバックとして2番目に大事な要件だと思うのである。
伊野波には、鹿島でやってきたという厳しさがあると思う。彼は、過去にはあの大岩からレギュラーを奪ったのだし、今回は同僚・岩政を押しのけてザックに抜擢されたのだ。それだけザック好みのセンターバックということだろう。
なお、外国の例から、以上の見解への補強証言を、もう一言。
世界の名センターバックでは、必ずしも大きさは条件にはならないのである。守備の国イタリアの顔を今年37歳までと長く努めたファッビオ・カンナバーロは、176センチ。現在世界1位のスペイン代表における近年不動のセンターバック、カルレス・プジョールは、178センチだ。いずれも、上の3人の誰よりも低い。強くて、速くて、読みの力があれば、170センチ台でも世界的名センターバックになれるということだろう。
速い伊野波らがこれに勇気を得て、まだまだ低い日本の守備文化を高めてくれること、これが今の日本サッカー界への僕の最大の望みだ。現在の代表のように前が後ろをおおいに心配しなければならない状況では、得点力も上がらないはずだ。また、Jリーグで世界水準の速いセンターバックが育たなければ、日本の得点力も世界水準に近づかないと断言したい気分でもある。大きいけど遅いDFがファールで相手を止めるといった、恥ずかしい非スポーツ的場面などが日本には多すぎるが、僕にとって日本から最もなくなって欲しい光景である。
ザック日本の代表DFに、特にそのセンターバック候補に、僕にとって待望の選手たちが選ばれた。今までの代表センターバックは、中澤も闘莉王も、世界的にもほとんど最強に近いけれど唯一惜しいことにスピードがないと、ここでも再三述べてきた。センターバックにスピードがないと、速い相手とはどうしても完全な1対1を避けねばならないから守備陣形に無理が生じていたし、有利な体勢の1対1ですら振り切られて失点ということも起こっていた。その典型例を二つあげてみよう。
①まず、去年9月のガーナ戦。敵GKの長い折り返しにゆうゆうと追いついたはずの中澤が、猛然と追走してきたガーナのギャンに体を入れ替えられて得点されてしまった場面だ。つまり、スピードがないセンターバックは、世界相手には危険この上ないのである。
②次に、南ア大会直前における「あの土壇場で守備型チームへの再編成」。速くて、読みが良く、ファールなしで敵を止められる阿部がファースト・ボランチで急遽起用されたこと。これも、日本の最大弱点、センターバックのスピード不足対策だったのだと、僕は理解してきた。僕自身が昔からここで「阿部起用か、さもなくば速いセンターバックの育成か」と主張してきたから、「我が意を得たりの阿部起用による世界16位」だったと喜んだものだった。
さて、だが、大きくて強い外人と競り合うだけの体格がある日本人センターバックで、速くて強い人は意外に少なかったと言えるのではないか。
そこに今回は、83、85、87年生まれの3人のセンターバックが選ばれた。なによりもみんなが共通して速いのである。これがザック好みなのだろう。というよりも、オシムもこう主張していて、過去には伊野波を選んだことがあるから、この速さが世界水準なのだと言って良かろう。この顔ぶれと、その意味などを、眺めてみたい。
それぞれ、栗原勇蔵(横浜、183センチ)、伊野波雅彦(鹿島、179センチ)、槇野智章(広島、180センチ)。彼らは中澤(187センチ)、闘莉王(185センチ)に比べて大きくはないが、共通して速いし、強いし、その上にそれぞれ特技を持っている。栗原は、右足のシュート力と闘争心のもの凄さ。伊野波は、左右の精度ある縦パスをどんどん打っていく。槇野は、フリーキックを任されることもあるチーム有数の点取り屋でもある。
いつもやる予測をしてみたい。誰が、中澤、闘莉王に割り込むだろうか。可能性の高い順を、僕はこう見る。①伊野波、②槇野、③栗原、と。その理由を述べてみよう。
まず、アジア相手ならいざ知らず世界相手のセンターバックには、第1に防御力が要求されるはずだからである。防御力はやはり速い読みと対応力が大事なのであって、読みの力の順番ならこうだろう、と。次いで、その防御力が同じと仮定したら、次に日本のセンターバックに必要なのはシュート力、得点力ではなくって、フィード・縦パスの能力だと考えるからだ。ただでさえ世界相手の日本はボールを前に進めることがヘタなのだから、サイドから正確なクロスさえ出せる伊野波の縦パスのフィード力こそ、日本のセンターバックとして2番目に大事な要件だと思うのである。
伊野波には、鹿島でやってきたという厳しさがあると思う。彼は、過去にはあの大岩からレギュラーを奪ったのだし、今回は同僚・岩政を押しのけてザックに抜擢されたのだ。それだけザック好みのセンターバックということだろう。
なお、外国の例から、以上の見解への補強証言を、もう一言。
世界の名センターバックでは、必ずしも大きさは条件にはならないのである。守備の国イタリアの顔を今年37歳までと長く努めたファッビオ・カンナバーロは、176センチ。現在世界1位のスペイン代表における近年不動のセンターバック、カルレス・プジョールは、178センチだ。いずれも、上の3人の誰よりも低い。強くて、速くて、読みの力があれば、170センチ台でも世界的名センターバックになれるということだろう。
速い伊野波らがこれに勇気を得て、まだまだ低い日本の守備文化を高めてくれること、これが今の日本サッカー界への僕の最大の望みだ。現在の代表のように前が後ろをおおいに心配しなければならない状況では、得点力も上がらないはずだ。また、Jリーグで世界水準の速いセンターバックが育たなければ、日本の得点力も世界水準に近づかないと断言したい気分でもある。大きいけど遅いDFがファールで相手を止めるといった、恥ずかしい非スポーツ的場面などが日本には多すぎるが、僕にとって日本から最もなくなって欲しい光景である。