九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

 随筆 「辛うじて」  文科系

2011年06月28日 01時08分42秒 | 文芸作品

 随筆  「辛うじて」  文科系

 去年、慢性不整脈で心臓カテーテル手術を2度行った。これによって最後まで続けてきたスポーツ・ランナーを断念しなければならなくなった。他にも不具合を数え上げれば切りがない。目は網膜剥離で手術をしているし、白内障を辛うじて止めている現状でもある。耳はというと、ギター弾きすぎの難聴。窓を開けて弾けと医者に厳命されている。音が響きにくい最も広い部屋を開けっ放しにして、冬はストーブを夏は扇風機を傍らに引き寄せて弾くという、漫画みたいな毎日の光景!
 ランナー断念から約1年、その効用が消えた体になっていくのが手に取るように分かる。ランナー時代はなかったことなのだが、階段を上ると息が切れだして、驚いた。心臓の立ち上がりがどんどん遅くなっていくのを、何かにつけて思い知らされる。そしてそのしわ寄せが、体の無理している部分にたちまち現われてきた。僕の場合はギターによる酷使部分。なんせ今でも、1日に2~3時間弾くのだから、酸素の回りが悪くなればテキメン、痛い部分が出てくるというわけだろう。3ヶ月ほど前から左右の手、指が痛みだし、準備運動とか途中休憩などとだましだましやって来たのだが、とうとう右手薬指がダウン。腱鞘炎でいわゆるバネ指になった。医者に行ったら薬指付け根に注射を打たれたが、果たして治るのだろうか。週1回で4回ほど打たれた。これで治らなければ切開手術だそうだが、何とか持ち直しているようだ。

 さて、周囲を見回してみると、ギター大好き老人たちは、みんなどこかを傷めて、だましだまし弾いていると分かる。肩や腕を痛める人が最も多いが、メニエル症候群になる人がいるのは、ギター音の耳への影響なのかも知れないなどと考えてみたこともある。こんなことから、だましだましやるなどということもできず、数ヶ月ギターから離れるという人も出る。数ヶ月離れるなんて!退職後に先生についた僕だったら見る影もない落ちぶれようで、もう再びギターを弾く気が起こらなくなるかも知れない。今の僕からギターを取ったら一体どう生きたらよいのか、見当も付かない。
 
 「助かった」という感じで、ほっとしたこともあるのだ。以上の間中、数十往復の階段登り体力だけは辛うじて維持に努めてきたことである。この酸素吸収力維持によって、この身体がどれだけ助かっていることかと、改めて振り返ることができる。これがなかったらこの右薬指など、もうとっくに手術を宣告されていたに違いないのである。そうなっていたらと考えつつ、ほっと胸をなで下ろしている。そんなことで自分を慰めるしかない歳になった、そういうことなのだろう。

 でも、どんな努力も、何の楽しみをも増強・維持できないって、そんな年齢ってないのではないか。これは母の晩年をよーく観ていて教えて貰ったことだ。僕の母が、僕の目の前で20分ほどもかかって自力でパジャマを着た日々を、このごろよく思い出す。不自由な右手、弱った下肢を懸命に働かせながら。もっともこれは、隣りに誰かがいて、いつも微笑みながら見守ってきたからこそ、できたことなのだろう。それも、見守るのが我が子だったからではなかったか? 我が母の子への愛情の凄まじさを感じた時でもあった。

コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする