大西さんから送られてきた野田総理についての憲法感覚について転載します。らくせき
野田新首相は自称「新憲法制定論者」著書で「集団的自衛権の行使」を主張。
大西 五郎
民主党は菅直人氏に代わって野田佳彦氏(前財務大臣)を党代表に選出し、
野田氏は8月30日に首班指名を受け、9月2日に野田内閣が正式に発足しました。
野田総理は9月12日に所信表明を行い、9月14日から衆議院で、15日から参議院で、
所信表明に対する代表質問が始まりました。
このうち15日の参議院代表質問で自民党の中曽根弘文議員が
「総理は著書でご自身は『新憲法制定論者』であると述べ、
憲法九条、プライバシー、知る権利、地方自治など、
議論すべき点を挙げておられます。
もし総理が憲法改正を本気で目指されるのであれば、
われわれは共に議論を尽くしたいと考えています。
野田総理は、総理であり民主党の代表であるという立場になられた今でも、
憲法改正を目指すお考えに変わりはないか。伺います。」と質問しました。
これに対して野田総理は「私は『新憲法制定論者』です。著書にもそう書きました。
しかし現在は首相という立場で、現行憲法の下で最善を尽くします。
震災復興や原発事故収束など喫緊の課題が山積する中で、
憲法改正が最優先課題とは考えていません。」と答弁しました。
今直ちに憲法改正問題は提起しないが、落ち着いたら憲法改正に向けて動くということでしょうか。
気になったので「著書」というのを調べてみましたら、
2009年に発刊された「民主の敵――政権交代に大義あり」(新潮新書)
であることが分かりました。早速本屋で求めて読みました。
(なお初版は2009年7月ですが、野田氏が総理になったというので新潮社は
早速「新総理の『腹の底』を読む」という帯をつけて増刷、販売しています。)
著書で野田総理は「私は新憲法制定論者です。戦前の大日本帝国憲法に対して、
戦後の日本国憲法のことを、よく『新憲法』といいます。
しかし、世界中の憲法の中で、すでに一五番目くらいに古い憲法になっているそうです。
とても新憲法といえる代物ではありません。九条はもちろんですが、社会の変化に伴って、
プライバシーの概念、知る権利の関係、その他、いろいろな権利の概念も変化してきています。
修正することをタブー視してはいけないと思います。」と
新憲法制定の必要を論じています。
そして集団的自衛権については、「政府見解としては、集団的自衛権は
保持しているけれども、憲法上、それは行使できないということになっています。
これを踏み越えることができるかどうかが一番の肝です。
集団的自衛権をフリーハンドで行使できるようにするべきであるというような、
乱暴な話は論外です。
しかし、いざというときは集団的自衛権の行使に相当することもやらざるを
得ないことは、現実的に起こるわけです。
ですから、原則としては、やはり認めるべきだと思います。
しかし乱用されないように、歯止めをかける手段をどのように用意しておくべきか
という議論が大切になっていくわけです。
やはり、実行部隊としての自衛隊をきっちりと憲法の中で位置づけなければいけません。
いつまでもぬえのような存在にしてはならないのです。
その自衛隊については「実際は戦闘機も、潜水艦も、戦車も、最新鋭のイージス艦まで持っている、
隊員は命をかけて海外まで行っている現実がある。
そうすると日本は軍隊を保持しているわけです。
しかも世界的に見たら、かなりの規模の実力を有しています。
自衛隊(Self Defense Force)などといっているのは国内だけで、
外国から見たら、日本軍(Japanese Army Japanese Navy Japanese AirForce)なのです。
国内での自衛隊の位置づけを明確にする。
その上で、国際的な枠組みの中で自衛隊をどう活かしていくかを考えるべきです。」
と、云っています。
(軍隊については)「戦前の恐怖が国民にも周辺諸国にもあるのは隠しようのない事実なのですから、
シビリアンコントロールのことも含めて、暴走する可能性をどうすれば抑止することができるのか、
あらゆるルールをつくろうではないか。というのが、私の率直な思いです。」
とも述べています。
野田総理の主張は、自衛隊は現実の軍事力であり、諸外国と行動(平和維持活動?)を共にしているのだから、
その現実を認めて、憲法上にも位置づけて、諸外国の軍隊と作戦行動を行うときには
集団的自衛権の行使を容認すべきだというものです。
しかし、野田総理の論理の前提となっているのは、自民党政権が解釈改憲によって憲法第九条に違反して
自衛隊を「軍隊」にし、アメリカとの共同行動のために外国に派遣した既成事実を追認したものです。
しかし、湾岸戦争が起きた1990年代初頭からアメリカは絶えず日本の国際貢献(自衛隊の派遣)を求めました。
そこで自民党政府は1992年にPKO法を作り、自衛隊を海外へ派遣するようにしました。
しかし、国民は自衛隊の海外派遣で日本が再び戦争をする国になることを恐れました。
このためPKO法では、PKOに参加するのは1.停戦の合意ができていること、
2.当事国による日本の参加の合意、3.中立的立場の厳守、
4.基本方針が満たされない場合は撤収できる、
5.武器の使用は命の防護のための必要最小限に限る、
という5原則が設け、曲がりなりにも憲法第九条と整合性をもっていると
言い訳をしているのです。
日本の総理大臣は、諸外国に向かって「日本には憲法第九条があり、
軍事力に頼って事態を解決する行動はいたしません。
海外貢献は非軍事的な方法によって行います」と宣言すべきなのです。
マスコミが「どじょう総理」などと持ち上げているため、
野田内閣の支持率は60%前後と高いのですが、
現実を追認して憲法の一番大事な原則を変えようとしていることを
国民はもっとよく見る必要があります。
マスコミは政局報道だけに集中するのでなく、野田総理の憲法に対する考えを
国民によく分かるように報道すべきです。
野田新首相は自称「新憲法制定論者」著書で「集団的自衛権の行使」を主張。
大西 五郎
民主党は菅直人氏に代わって野田佳彦氏(前財務大臣)を党代表に選出し、
野田氏は8月30日に首班指名を受け、9月2日に野田内閣が正式に発足しました。
野田総理は9月12日に所信表明を行い、9月14日から衆議院で、15日から参議院で、
所信表明に対する代表質問が始まりました。
このうち15日の参議院代表質問で自民党の中曽根弘文議員が
「総理は著書でご自身は『新憲法制定論者』であると述べ、
憲法九条、プライバシー、知る権利、地方自治など、
議論すべき点を挙げておられます。
もし総理が憲法改正を本気で目指されるのであれば、
われわれは共に議論を尽くしたいと考えています。
野田総理は、総理であり民主党の代表であるという立場になられた今でも、
憲法改正を目指すお考えに変わりはないか。伺います。」と質問しました。
これに対して野田総理は「私は『新憲法制定論者』です。著書にもそう書きました。
しかし現在は首相という立場で、現行憲法の下で最善を尽くします。
震災復興や原発事故収束など喫緊の課題が山積する中で、
憲法改正が最優先課題とは考えていません。」と答弁しました。
今直ちに憲法改正問題は提起しないが、落ち着いたら憲法改正に向けて動くということでしょうか。
気になったので「著書」というのを調べてみましたら、
2009年に発刊された「民主の敵――政権交代に大義あり」(新潮新書)
であることが分かりました。早速本屋で求めて読みました。
(なお初版は2009年7月ですが、野田氏が総理になったというので新潮社は
早速「新総理の『腹の底』を読む」という帯をつけて増刷、販売しています。)
著書で野田総理は「私は新憲法制定論者です。戦前の大日本帝国憲法に対して、
戦後の日本国憲法のことを、よく『新憲法』といいます。
しかし、世界中の憲法の中で、すでに一五番目くらいに古い憲法になっているそうです。
とても新憲法といえる代物ではありません。九条はもちろんですが、社会の変化に伴って、
プライバシーの概念、知る権利の関係、その他、いろいろな権利の概念も変化してきています。
修正することをタブー視してはいけないと思います。」と
新憲法制定の必要を論じています。
そして集団的自衛権については、「政府見解としては、集団的自衛権は
保持しているけれども、憲法上、それは行使できないということになっています。
これを踏み越えることができるかどうかが一番の肝です。
集団的自衛権をフリーハンドで行使できるようにするべきであるというような、
乱暴な話は論外です。
しかし、いざというときは集団的自衛権の行使に相当することもやらざるを
得ないことは、現実的に起こるわけです。
ですから、原則としては、やはり認めるべきだと思います。
しかし乱用されないように、歯止めをかける手段をどのように用意しておくべきか
という議論が大切になっていくわけです。
やはり、実行部隊としての自衛隊をきっちりと憲法の中で位置づけなければいけません。
いつまでもぬえのような存在にしてはならないのです。
その自衛隊については「実際は戦闘機も、潜水艦も、戦車も、最新鋭のイージス艦まで持っている、
隊員は命をかけて海外まで行っている現実がある。
そうすると日本は軍隊を保持しているわけです。
しかも世界的に見たら、かなりの規模の実力を有しています。
自衛隊(Self Defense Force)などといっているのは国内だけで、
外国から見たら、日本軍(Japanese Army Japanese Navy Japanese AirForce)なのです。
国内での自衛隊の位置づけを明確にする。
その上で、国際的な枠組みの中で自衛隊をどう活かしていくかを考えるべきです。」
と、云っています。
(軍隊については)「戦前の恐怖が国民にも周辺諸国にもあるのは隠しようのない事実なのですから、
シビリアンコントロールのことも含めて、暴走する可能性をどうすれば抑止することができるのか、
あらゆるルールをつくろうではないか。というのが、私の率直な思いです。」
とも述べています。
野田総理の主張は、自衛隊は現実の軍事力であり、諸外国と行動(平和維持活動?)を共にしているのだから、
その現実を認めて、憲法上にも位置づけて、諸外国の軍隊と作戦行動を行うときには
集団的自衛権の行使を容認すべきだというものです。
しかし、野田総理の論理の前提となっているのは、自民党政権が解釈改憲によって憲法第九条に違反して
自衛隊を「軍隊」にし、アメリカとの共同行動のために外国に派遣した既成事実を追認したものです。
しかし、湾岸戦争が起きた1990年代初頭からアメリカは絶えず日本の国際貢献(自衛隊の派遣)を求めました。
そこで自民党政府は1992年にPKO法を作り、自衛隊を海外へ派遣するようにしました。
しかし、国民は自衛隊の海外派遣で日本が再び戦争をする国になることを恐れました。
このためPKO法では、PKOに参加するのは1.停戦の合意ができていること、
2.当事国による日本の参加の合意、3.中立的立場の厳守、
4.基本方針が満たされない場合は撤収できる、
5.武器の使用は命の防護のための必要最小限に限る、
という5原則が設け、曲がりなりにも憲法第九条と整合性をもっていると
言い訳をしているのです。
日本の総理大臣は、諸外国に向かって「日本には憲法第九条があり、
軍事力に頼って事態を解決する行動はいたしません。
海外貢献は非軍事的な方法によって行います」と宣言すべきなのです。
マスコミが「どじょう総理」などと持ち上げているため、
野田内閣の支持率は60%前後と高いのですが、
現実を追認して憲法の一番大事な原則を変えようとしていることを
国民はもっとよく見る必要があります。
マスコミは政局報道だけに集中するのでなく、野田総理の憲法に対する考えを
国民によく分かるように報道すべきです。