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随筆「続、性格の芽生え」  文科系

2011年09月26日 11時41分52秒 | 文芸作品
  
 十二か月目に入ったばかりの頃、ハーちゃんは保育園に通い始めた。たちまち、病気の連続だ。初めが手足口病。これも治らぬうちに、下痢。こちらは現在進行形で、もう二週間以上も続いている。でも、元気なのだ。園の看護士判断によって休めと言われるようにはならない。なんせ三十八度を超えても「平常状態」の時が多いのである。こういう元気さに、既に持前と言って良い性格が関わっているのは明らかである。楽しみたい、遊びたくて仕方ない、だから38度の熱があってさえ遊びなどにもどんどんのめり込む。
ある日の夕食後、ハーちゃんが突然叫びだした。何度も何度も。僕に抱き上げられた直後「ッパッパッパー、ッパッパー」と、歌うように、両手を開いて踊るようにしながら。輝いている目線のすぐ先には、壁に掛かった一枚の絵がある。一本の木に実らしきものもなっている。すぐに娘に訊ねて、いきさつが分かった。保育園で葉っぱのいろんな絵を見ながらある手遊びを習っている真っ最中だった。
 こんなこともある。最近の彼女は「物押し」を毎日のようにやる。大きな遊具とか、自分用の椅子とか、とにかく自分の身体よりも大きな物を突然押し始めるのだ。「ダーダーダーァッ」と聞こえる気合様の叫びを上げながら。まっすぐに突き進んでどこかにぶつかると、引いてみたり、横にずらしてみたりして、方向転換もちゃんとやっている。保育園の一場面に違いない。
 ちょっと前には、こんな光景も目撃した。僕と二人のお風呂上がりに長いソファに座った。彼女は紙おむつだけ。ソファには、さっき彼女が着ていた和式ローブ(まー、結びひものついた浴衣みたいなものだ)が広げてある。それを手に取った彼女、先ず肩に懸けてみる。次いで、頭部や首筋の後ろに回して巻き付けようとする。それでだめならとばかりか、今度はソファのうえに広げ気味に置いたそれに仰向きに寝た背中をごそごそと押し付けている。とにかく、ローブを着ようと挑戦しているのは明らかなのだ。それも五分以上も。目を点にして、観ているばかりの僕。こういう時には手を出さない主義である。

 これらのすべてが、ずーっと下痢が続き、時に八度、九度も熱が出たこの二週間内のこと。病気の気分を、楽しみの試み、発見が陵駕しているのだろう。こういう一切の産物に違いないのが、保育園に通い始めてまっ先に目立った歩行の上達だ。既に十ヶ月前に歩き出していたが、今はこんな風に歩く。床に座ったまま何にもつかまらずすっと立ち上がって、方向転換も上手にすたすたと歩き、やはり何の支えもなく、ちょこんと座る。その割にはよく転ぶと気付いて、観察し、分かったことがあった。分不相応な大股歩きが過ぎるようになったのだ。目指す物に一刻も速く行き着きたくて。転ぶのを何とも思わないから、この癖がちっとも直らない。さぞ足裁きの上手な子に育つことだろう。

 こんなハーちゃんを観ているのはとにかく楽しい。僕が種々失うものが増えていく分、その何倍も速く彼女が人間に近づいてくるのだから。これこそ、皆が口にする孫の可愛いさの中身なのではないかという気がした。因みに、彼女は、僕の亡くなった両親が生まれてちょうど百年目の、やはり両親と同じ誕生月に生まれた。

(このハーちゃん随筆、既載分は以下の通りです。
 11月25日「いずこより来たりしものぞ」
 1月24日「間に合うかな」
 6月10日「ハーちゃんの微笑みに」
 6月25日「ママトモカイ」
 7月28日「ハーちゃんと黒猫」
 8月12日「ハーちゃん、性格の芽生え」)
   
コメント
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