Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

引き込み現象 非線形世界のリズム

2012-05-20 09:16:36 | 科学


複数のメトロノームがいつの間にか歩調を揃えるという,この「引き込み現象」は,結合振子系にあらわれる.最初に発見したのは,17世紀オランダのホイヘンスで,彼は振り子時計の発明者だが,2台並べて壁にかけた振り子時計の振り子の揺れが揃うのに気づいた.

フィリップ・ボール「音楽の科学」河出書房新社 (2011/12) では,ヒトが「リズムに乗る」,すなわち耳で聞いたリズムに合わせて身体を動かすことができることにひっかけて,この引き込み現象を話題にしている.
モジホコリという単細胞動物にもこの能力があって,このモジホコリの集団に,規則的に同じ刺激を与え続けると,刺激を予測して反応するようになるという.具体的には,空気を当てると動きが鈍くなるのだが,1時間おきに3回乾いた空気を当てた後,4回目には何もしないのに動きが鈍くなったという実験が記述されている.
あらゆる生命体は生まれつき体内に「生化学振動子」を持っていると言う.

これを読んだだけでは,
1 モジホコリの集団反応では個々のモジボコリが個々のメトロノームに相当し,引き込み現象が起こる,
2 モジボコリが外部の刺激を予測して反応することが引き込み現象である,
このふたつのどちらを言いたいのか,ふたつに関連があるかどうかが,よくわからない.

より本格的な解説書は蔵本由紀編「リズム現象の世界」東京大学出版会(2005/10) で,シリーズ「非線形・非平衡現象の数理」の一冊.これでも読んでみようか.

しかし音楽のリズムは,非線形・非平衡現象とは違うように思える.
音楽のある側面を単純化しモデル化して扱うには悪くないかもしれないが.

1時間に1回が継続すればモジホコリという粘菌がリズムと感じるとは!!! いっぽうでは「ゾウの時間ネズミの時間」,すなわち大きい動物ほど時間の流れが遅いといわれているのに.



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小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

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コメント (1)
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