
YY 氏と一緒に三宅珠穂さんにテルミンのお話をうかがった.
Moog 社のイーサウェープという機種.
アンテナが 2 本だが,1本はループで平面を規定しており,この平面からの距離で音量が定まる.1本は直線で,ここからの距離でピッチが定まる,と言うことは,このアンテナを軸とする円柱表面はどこでも同じピッチなんだろう,と,推測する.
つまり,等ピッチ面は図右のような円筒になり,当音量面は図左の水平な平面になる らしい.
アンテナと演奏者とのキャパシタンスは距離に反比例するので,ピッチも音量も対数目盛り.ピッチでは,例えばオクターブの距離は同じ,音量は dB と思えばよい.ニンゲンの感覚と一致する.
音域は 4 オクターブ.最低音が持つ表情がおもしろい.
Waveform, Brightness のつまみを持っている.
演奏中にピッチを決めるほうの手で,親指と人指し指で円をつくり,残り 3 本の指を伸ばしたり縮めたりするのを目にするが,指円の位置を基準としているとのことだ.ふつうの楽器なら,楽器という「物体」の存在が位置の基準だが,何もない三次元空間で位置を認識し設定するのは 難しい!
おまけに,アナログ回路だから安定しない.電源を切ってもう一度入れたらピッチの基準などは再現しないそうだ.
学生時代には,アナログ計算機というものがあって,原子炉の動特性の計算等に使われていたのを思い出す.演算増幅器 (オペアンプ) の塊で,当時のデジタル計算機と比べ,安くておまけに高速だったが,精度は悪く,よく暴走した.
テルミンもデジタル的に,Macのトラックパド上に二次元で作れば簡単だろうし,光位置センサーを使えば3次元化もすぐできそう.でも,デジタルに流れず,言うことをきかないアナログ回路とのおつきあいを楽しむことこそ テルミンならでは,なのかもしれない.
テルミンはどんな楽器とも相性がよいのだそうだ.強いて言えば,ピアノと合わせるのが苦手とのこと.
もともと音階等とは無縁な楽器なので,テルミンの特性を活かした曲を演奏すべし...などと,知ったふうな口をきいたら,
三宅珠穂「Two Or More クラリネットとチェロのために」マザーアース(株) 2012
という楽譜を見せて下さった.グリサンドだらけで,ある意味テルミン向きの曲とのこと.
この曲ではクラリネットはふたつ・3つの音を出すのが当たり前,1小節が 7 拍に分割されていたり,without moving (つまり ジョン・ケージ流静寂) が 10-15 秒続いたり.
演奏はネットで公開されている.百聞は一聴に如かず,です.
テルミンの本も拝借した : 竹内正実「テルミンを弾く」岳陽社 (2002) .