Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

中町 信 「模倣の殺意」「天啓の殺意」

2014-07-11 08:51:18 | 読書
どちらも創元推理文庫.奥付にはそれぞれ 2004/8 2005/4 の日付があるが,「模倣の殺意」は「新人賞殺人事件」のタイトルで 1973 年に,「天啓の殺意」は「散歩する死者」のタイトルで 1989 年に,それぞれ出版されたという.「...の殺意」というタイトルのこの作者の文庫本は他にもあるが,今世紀になってから改題されたらしい.著者の没年は 2009 なので,出版社の営業方針とばかりも言えないようだ.そもそも「模倣の殺意」が乱歩賞候補にあがったときのタイトルは「そして死が訪れる」だそうだ.タイトルを変えるのが中町さんの趣味だったりして...

最近書店で平積みになっているので,気になって図書館で借用.Wikipedia によれば 2012 年,書店チェーン文教堂が「模倣の殺意」を品切れ商品発掘企画の一冊に選んだところ,半年で34万部を超えるヒットとなったとのこと.関係がないと思われるふたりの立場で事件が交互に描かれるのがしゃれている.叙述トリックの金字塔的作品だそうだが,幸いそうとは知らずに読んだので楽しめた.

原題の新人賞...が暗示するように,「模倣の殺意」は小説ネタだが,それは「天啓の殺意」も同じ.ミステリの問題編と解決編を別な作家がリレー形式で書くという趣向がストーリーの発端.トリックはやはり叙述ものにくくれそう.「二番煎じ」ではなく,「著者得意の...」という好意的な形容詞の方がふさわしいと思う.
しかし,ややこしいストーリーだ.

「模倣の殺意」では女性が私用の旅行をなにかと社用にかこつけたりするあたり,いじましく,バブル以前の昭和の匂い (デフレの平成でも同じことかな).
どちらの小説もやや筋り運びがやや強引.
叙述トリックと言えば,坂口安吾「不連続殺人事件」を読んだときは感激した.再読しても感激できるだろうか...やめておこう.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg