また青空朗読で太宰治「おさん」.
どうしようもない夫と健気な妻の組み合わせは「ヴィヨンの妻」と同じ.おさんの名は,浄瑠璃「心中天の網島」の貞淑な妻から,らしい.
この夫は妻と3人の子どもを残し,どこかの女と心中する.
1947(昭和22)年10月号「改造」に発表.太宰の玉川上水での情死は翌 1948 年6月13日.情死は予定の行動だった?
小説のラスト(妻の一人称)を引用すると
*****気の持ち方を、軽くくるりと変えるのが真の革命で、それさえ出来たら、何のむずかしい問題もない筈です。自分の妻に対する気持一つ変える事が出来ず、革命の十字架もすさまじいと、三人の子供を連れて、夫の死骸を引取りに諏訪へ行く汽車の中で、悲しみとか怒りとかいう思いよりも、あきれかえった馬鹿々々しさに身悶みもだえしました。*****
本文中で「革命」を示唆するのは,ラジオから流れるラ・マルセイエーズを聞いてダメ夫が涙する場面.でも,妻も読者もなんのことか解らない.
とにかく自己を客観視し,妻の眼をとおしてクールに自己自身の卑怯ぶりを描いているのは確かだが,ここまで解っているのになぜ?
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