拙著「新装版 音律と音階の科学」で「ギターの調弦は完全5度体系からずれていて響きが悪いので,イエペスの10弦ギターが開発された」と書いたところ,それは違うというご指摘をいただいた.10弦ギターのうち4弦は弾かない弦-共鳴弦-である.一方,バイオリンなどの擦弦楽器では4本しか弦がなく,弾かない弦の共鳴にはもともと期待していないのだ.
独断だが,バイオリンなどはもともと単旋律の演奏を前提に作られているが,ギターは自前で旋律も和音も弾くことが前提で発達した.そのためピアノのように,実際に弾く音以外に他の弦の共鳴音も欲しいということになる.現行のギターの調弦,高音から E B G D A E では,5度円の左半分にある音を共鳴音として得ることは難しい.図のイエペスの調弦,高音から
E B G D A E C Bb G# F#
は,5度円の左半分をひとつおきに埋めて,ここを改良したのだろう.12半音のうち,Db,Eb,Fがないが,例えばFはBbの3倍波として得られるからよしとするのかな.
10弦ギターの調弦は他にも色々ある.例えば10弦ギターのバロック調弦もあって,
E B G D A E D C B A
だそうだ.
完璧な共鳴を得るにはダブルネックにして.12弦の弾かないギターを同一ボデイに同居させるのが良さそう.ジャズ・ポピュラー系のギタリストの誰かが,とうに実践していると思う.
学生時代にイエペスの開発早々の10弦ギターによるアランフェスを日比谷公会堂で聞いたことがあるが,なんだか弾きにくそうだった.動画の斎藤明子さんの動画では10弦ギターの指盤がよく見える.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます