Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

今井信吾「宿題の絵日記帳」

2017-07-21 08:59:14 | 読書
図書館で思いがけない本に出会った.自分の本棚に一冊欲しくなった.

これは高度難聴の女の子の父親が,「宿題」として聾話学校に毎日提出していた,30 年前の 4 年にわたる絵日記の抜粋.
しかしタイトルからはそのことはうかがえない.本文の絵日記から読み始めると (見始めると),ただのやんちゃな女の子の成長記録に思えるが,「まえ・うしろ」という挟みこみ冊子 (図書館本ではテープで留めてあった) を読んだ後で絵日記を読み返すと,ときどきひっかかった疑問が解け,感慨が一入である.

著者は画家 (現在は独立美術協会会員・多摩美術大学教授) で,本の絵はほぼ実物大だろう.これは,おもらし之図.絵日記では主人公うららちゃんの目だけが塗っていない.視線がわからないほうが見るものの想像力を刺激するのだそうだ.

この今井麗(いまい・うらら)さんは小学校からは一般校に通い多摩美術大学を卒業し,現在は三児の母.画家としても精力的に活動している.植本一子「かなわない」タバブックス(2016/2) のカバーが麗さんによるものだそうだ (この「かなわない」を書店で手に取ったのは,実は植本さんをピアニスト橋本一子さんと勘違いしたため).

彼女の成長にはご両親とともに,お姉さん (表紙の中央に登場している) の香月さんの存在が大きい.おふたりの Instagram を発見.絵日記ではお母さんも綺麗に描かれているが,離婚されたようである.

高度難聴とはどういう状態か,本人でないとわからない.難聴でも,教育その他の条件によって手話が必要なくなる割合はどの程度なんだろうか.
麗さんの場合,音楽も楽しまれるそうで,側で接する限り難聴と気づくのは難しいと思う.

著者のお名前に見覚えがあったので,家に帰って確かめたら,J 子所有の 2008 年多摩美大刊の画集があった.この画集の一部がこの本に利用されている.「音のない世界 - 永代橋」以下,ふたりのお嬢さんは氏の画業を左右する要素のひとつだったようだ.この作品は「姉妹・アトリエ」.

☆☆☆☆★

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