一昨日の読書のタイトルは「緊急事態下の物語」だった.図書館で予備知識なく借りたもう一冊のこれが,これまた一種の緊急事態下の物語.帯の文言をアップすれば,
*****2022年2月、ある日曜日。原因不明の大停電が日常を覆った。
電子機器の故障、ネットや電話など通信の途絶、暗闇と静寂。非常事態に困惑する人々が徘徊し、暴動に揺れる真夜中の大都会。
闇を怖れるように集った5人は何を思い、何を語り、何を求めるのか。
夜は深まり、あまりにも静かな黙示録がはじまる。
戦争と陰謀の足音、日常にひそむ不条理、意思疎通の不可能/不可解を突きつけるデリーロ最新作!*****
本文は 120 ページほどでおまけに改ページが多い.第1部が5人の登場人物から見た状況説明.第2部は5人による状況の解釈.
著者は黙示録を始めるだけで,読者を放り出す.ただし決して読みにくいわけではない.むしろ訳者あとがきが長くて退屈だった.
Wikipedia によれば,著者は日本での知名度は今ひとつだが現代のアメリカを代表する小説家であり,近年はノーベル文学賞の常連候補だそうだ.ただし村上春樹よりひとまわり年長の 1936 年生まれで,これは 84 歳時の作品だが,年寄りくさくはない.
扉に次のアインシュタインのことばが引用されている.
「第3次世界大戦がいかなる兵器による戦いになるかは分かりませんが,第4次世界大戦は棍棒と石での戦いということになるでしょう.」
本書でも若い物理学者がアインシュタインに取り憑かれたように長広舌をふるう場面がある.
しかし本当にアインシュタインはこう言ったのだろうか?
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