「十一郎会事件」梅崎春生ミステリ短編集,中公文庫 (2024/12).
梅崎春生,梅が咲いて春というペンネーム?が好きだが,本名はわからない.
4部構成で,第1部はシリアス系の短編.冒頭の「失われた男」は,16 トンが苦手とするジャンルで閉口したが,残り5篇はそれほどでもなかった.「師匠」は江戸川乱歩に請われて雑誌「宝石」に発表された作品.著者は会心のできとは反対で,評判も良好でなかったと言っているが,乱歩はサキなどに一脈通じる「奇妙な味」と持ち上げている.
第2部はユーモア系.表題作「十一郎会事件」を含む.ぼくが過去に読んだことのある梅崎作品は「ボロ屋の春秋」だが,あの系統.本書の「ミステリ短編集」というサブタイトルはちょっと違うが,第2部はそれでも広義のミステリと言えなくもない作品が集まっている.純文学者のミステリはつまらないものが多いが,梅崎の目指すところはちよっと方向が違い,それゆえ成功したようだ.でも4篇を続けて読むと同工異曲の感無きにしも非ず.
第3部は奇妙な味/実録物.見方によってはこの本で一番面白いかも.池上冬樹の解説によれは,ここに収められた「不思議な男」の主人公による「柾它希家家の人々」なる長編があり,竹本健治・皆川博子が称賛しているとのことだ.
他に「コラムより」として 1-2 ページのエッセイがまとめられている.
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