Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

浦島太郎の真相―恐ろしい八つの昔話

2010-03-02 09:03:20 | 読書
鯨統一郎著 光文社文庫(2010/02).

8 つの短編集だが,パターンにはこだわりがある.場所は日本酒バー.客はいつも3人で,そのうちのひとりが元警官の私立探偵.まず客ふたりとマスターのおじさん3人が蘊蓄をかたむけあう.話題は,テレビ番組,流行歌,お笑い芸人,野球選手等,短編毎に異なる.これがいつもページ数で半分近く,しかも本筋とは無関係.

何かのきっかけで探偵が関わっている話題にふられ,そこで第三の客,大学院で昔話を研究している美女が乗り出し,安楽椅子探偵ぶりを発揮する.事件を昔話にこじつけ,蘊蓄をかたむける.各短編は蘊蓄の二重構造だ.昔話の深層をむりやり掘り起こし,事件の真相,「心のアリバイ」なるものを示唆して終わる.

昔話の解釈では,落語「桃太郎」を思い出した.

「文学全集を立ち上げる」と併行して読んだので,前半の蘊蓄部分が重なった.
事件そのものはたわいなく,解決もこじつけ.ミステリ以外の部分に作者も力をそそいでいる (としか思えない) あたりは,北村薫の短編に似ている.
北村の方は上品で直木賞.こちらはえげつなく馬鹿ミスに徹しているところが売りだろうか.

カチカチ山,こぶとり爺さん等等,昔話はほとんど網羅してしまったが,グリム童話,アラビアンナイト等,まだまだネタはつきまじ.でも,タイトルを見ただけで読んだような気になってしまいそう.

「邪馬台国はどこですか」の系列だろう.バーのつまみの描写が楽しみ.
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