【社説②】:新たな教員研修 技量向上へ内容充実を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:新たな教員研修 技量向上へ内容充実を
教員免許の有効期限を10年と定めた「教員免許更新制」を廃止するための改正教育職員免許法など関連法が成立した。6月末の廃止後は、必須だった講習の受講が不要になり免許の期限もなくなる。
教員の資質向上を目指すとして第1次安倍政権時の法改正で2009年に導入されたが、現場の多忙化の一因となり、10年余りで頓挫する結果に終わった。
更新制に代わる新たな研修制度が来年4月から導入される。指導力向上を目的に教員が自主的に研修に参加する仕組みだ。
教員が不断に研さんを積むのは当然だろう。だが更新制を巡っては理念や掛け声ばかりが先行し、負担増や人材不足を招いた。その失敗を繰り返してはならない。
障害のある子どもへの対応やデジタル化の推進、指導技量の向上など研修のテーマは幅広い。
新制度の導入に当たっては教育現場の実態を精査し、実質が伴う仕組みとすることが必要だ。
教員免許更新制は幼稚園や小中高などの教員に対し、期限前に大学などで30時間以上の講習受講を義務付けた。修了認定されなければ免許は失効することになった。
教員は講習費や交通費を自己負担し、長期休暇などを受講に充てざるを得なかった。長時間労働が恒常化する現場の負担増につながったことは否めない。
最新の知見を学ぶには10年に1度の研修では対応が難しい、といった声も根強かった。
そもそも教員免許に有効期限を設ける理由も説得力を欠いた。志望者の減少を招き、教員不足をもたらしたのも無理はない。廃止は遅すぎたのではないか。
新たな研修制度については、文部科学省が7月にも指針を示し、都道府県や政令市の教育委員会がテーマや受講頻度を決める。
各教委は既存の研修制度を生かしつつ、実践的かつ無理のない内容となるよう努めてもらいたい。現場の負担軽減を図るにはオンライン研修の活用も助けになろう。
各教委が教員の研修受講を記録することも義務化される。校長が記録を参照し、各教員の状況に応じて受講すべき研修を助言する。管理を強めるのではなく、教員の自発性を重んじるべきだ。
わいせつ行為で失職した場合などを除き、7月以降は失効した免許が原則的に復活する。
文科省は有資格者を呼び込み教員不足解消を図る考えだが、優先すべきは働き方改革を進めて現場のゆとりを増すことだろう。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年05月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。