【旧統一教会】:“元信者”が明かす勧誘手法「長い時間かけて思考を変えさせる」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【旧統一教会】:“元信者”が明かす勧誘手法「長い時間かけて思考を変えさせる」
2022年12月14日、旧統一教会の宗教法人解散命令の請求に向けて、文部科学省は2度目の質問権を行使しました。回答期限は2023年1月6日です。報道によると、教団がこれまでに行ってきた伝道方法や多額の献金集めなどの「組織性、悪質性、継続性」を判断するものになっているということです。<button class="sc-kAPOMq lmaRvl" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button><button class="sc-kAPOMq lmaRvl" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="38"></button>
さて、教団が過去に行ってきたことの何が問題なのでしょうか。今回の記事では、拙著『信じる者は、ダマされる~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)を引用しつつ、自らの経験もふまえて紹介しきます。
◆“正体隠し伝道”というやり口
これまで元信者らは旧統一教会を相手に数多くの民事裁判を起こし、教団側の不法行為責任を認めた勝訴判決を数多く得ています。私も1999年に山口広弁護士や紀藤正樹弁護士らとともに、違法伝道訴訟の裁判を起こし、原告の1人として、教団と闘ってきました。
この裁判では、教団名を隠して行われた「正体を隠した伝道」により信者となり、「信じるものを選択する」という自由を奪われた、教団の教化プログラムの違法性を争った裁判です。
さらに、ここでは「婚姻の自由の侵害」に対する初の違法性の司法判断も出されて、2004年に最高裁で判決が確定しました。つまり、教団名を隠した伝道をされなければ、教祖が結婚相手を決めるという合同結婚式に参加させられることはなく、約10年近い信者活動の年月を教団に奪われることもなかったということです。
◆勧誘手法をマニュアル化
世界平和統一家庭連合(旧統一教会) Nagahisa_Design – stock.adobe.com
この“正体隠し伝道”のやり口は悪質であり、何年にもわたって継続されて多くの人たちが信者となりました。それが、冒頭の文化庁の「組織性、悪質性、継続性」の質問権にもつながっています。
<旧統一教会の恐ろしさは、信者にさせる方法を全国で画一化した上に、個別対応マニュアルを作ったところにあります。街頭などで声をかけて、教義を教え込む施設であるビデオセンターに誘い込みます。そして2日間のセミナー、ライフトレーニング4日間セミナー、新生トレーニングに参加させる……というシステマティックな手法で信者が育成されるようになっています。ここでの肝は、組織対個人というアウエーの構図にさせることです。知恵の面で圧倒的に不利な状況に置かれることで、誘われた人は相手の意のままに心がコントロールされてしまいます>(『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より)
教団を脱会して後に、詐欺や悪質商法の現場にジャーナリストとして潜入してわかったのは、そういった業者の多くは相手の心をコントロールする方法を熟知している。なかでも、特に悪質な団体はそれをマニュアル化して多くの人員に勧誘させることで、多額のお金を集めているのです。
◆勧誘時には「役割分担」が決まっている
教団の場合も同じで、霊感、先祖の霊などを使い、多額のお金を集める成功方法を全国一律でシステム化していきました。
<旧統一教会では、実際に壺などを売る教団の霊能師・占い師(説得役)と、勧誘場所に連れていく人(連れ込み役)は別の人物が行うようになっています。役割分担をしっかりさせているのです。連れ込み役は、路上で相手との信頼関係を作るような話を中心にします。そしてそこでかわされた会話から悩みなどの情報を探ります。そこである程度、心を通わせたところで「何か、困ったことはありませんか?」などの問いかけをするわけです>(『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より)
こうしてターゲットにした相手から得られた情報をもとに、勧誘場所(ビデオセンター)に誘い入れます。
<連れ込み役は、「(ビデオセンター)の席に空きがあるかどうか聞いてみますね」と、勧誘先にいる指示役(タワー長などと呼ばれる)のもとに電話をかけて状況を伝えます。そしてこの人物(指示役)がどの占い師役(説得役)を任ずるのがベストなのかを考えます。この占い師役は、信仰歴が長く、より多くの人をだまして入会させた経験が豊富な人で、いわばプロフェッショナルです。この人物(説得役)は、連れ込み役から伝えられた個人情報をもとに、入会の説得にあたります>(『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』より)
◆長い時間をかけて思考を変えさせていく…
『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)
こうして事前に、相手のすべての個人情報を知ったうえで、占いをビタビタとあてて、先祖や悪霊による「恐怖」を煽り、そこから救われる方法として、霊感グッズを販売するわけです。この「恐怖」と「救い」をセットにして使う手口は、信者教化にも同じように使われています。
ビデオセンターでは壺を売るのではなく、「教義を学ぶ」という形に変えているに過ぎません。しかし、こちらのほうがより悪質といえます。数か月という長い時間をかけて、相手の心に教義を植え込み、思考を変えさせていくからです。その結果、マインドコントロールされた人は容易にその心から脱することができずに苦しむことになります。
この手法は1980年代から20年以上の長きにわたって行われて、多くの信者が伝道されていきました。その結果、信者になった人たちが、「信者教化システム」のなかで勧誘者として活動し、別な人を誘いお金を詐取。ねずみ算式に教団の信者の数と金銭的被害が広がっていったのです。
<TEXT/悪徳商法評論家 多田文明>
元稿:扶桑社 主要出版物 bizSPA!フレッシュ 社会 【話題・旧統一教会問題・担当:bizSPA!フレッシュ 編集部】 2022年12月21日 08:45:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。