《社説①》:きょう沖縄慰霊の日 国は対話通じ痛み共有を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:きょう沖縄慰霊の日 国は対話通じ痛み共有を
沖縄はきょう、慰霊の日を迎えた。太平洋戦争末期に戦場となった島には、今も米軍基地の負担がのしかかる。国はその現実を重く受け止めるべきだ。
79年前のこの日、沖縄戦で組織的な戦闘が終結した。日米合わせて約20万人が犠牲になり、一般住民の死者は約9万4000人に上った。
米国統治を経て1972年に日本に復帰したが、なお在日米軍専用施設の7割が集中している。中国の海洋進出を念頭に、防衛力の強化も進む。この数年で与那国島や石垣島など離島に陸上自衛隊の駐屯地が相次いで開設された。
抑止力強化のためとはいえ、過重な負担を押し付けているのが実態だ。有事の際、攻撃対象になるかもしれないとの不安を抱く住民も多い。
にもかかわらず、国は県と真摯(しんし)に向き合おうとする姿勢を欠いている。
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡っては昨年12月、大きな転機があった。軟弱地盤を改良する設計変更を、国が県の代わりに承認する「代執行」に踏み切った。地方自治法に規定があるとはいえ、県の反対を封じる「強権発動」だった。
かつては沖縄の基地問題に真正面から取り組む政治家がいた。故橋本龍太郎氏、故小渕恵三氏らは地元の声に耳を傾け、信頼関係の構築に努めた。本土防衛のための「捨て石」となった沖縄への特別な思いがあったのではないか。
しかし、そうしたパイプは細くなっている。辺野古移設に反対する故翁長雄志氏や玉城デニー氏が知事となってからは、とりわけ対話を軽視する国の姿勢が際立つ。
代執行という強権的な手段に出たことで、対立は一層深刻さを増した。こうした対応を続けていては、今後の安全保障政策にも影響が及びかねない。
先の県議選では、玉城知事を支える県政与党が大敗した。だが、争点は基地問題だけではなく、県民が国の施策やその進め方にお墨付きを与えたとは言えない。
安全保障を理由に沖縄に犠牲を強いる現状を変えなければ、国と県の溝は深まるばかりだ。上から押し付ける姿勢を改め、誠実な対話に取り組まなければならない。
元稿:毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年06月23日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。