【社説・12.24】:WPS行動計画の削除 米軍の性暴力除外するな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.24】:WPS行動計画の削除 米軍の性暴力除外するな
22日の県民大会は、米軍性暴力ノーを突き付け、日米地位協定の抜本的改定を改めて強く要求した。国際人権の観点から日米両政府に米軍の性暴力への対処を求めたことが今回の大会の特徴の一つだ。
10月の国連女性差別撤廃委員会の日本政府に対する対面審査に際して、沖縄の女性団体が同委員会に米軍の性暴力に関する報告書を提出した。報告書は、国連安全保障理事会(安保理)の決議に基づく「WPS(女性と平和・安全保障)アジェンダ」を踏まえており、この問題に初めて言及する勧告が出された。
一方、日本政府のWPS行動計画で「外国軍隊による暴力」の記述が削除されていたことが本紙報道で明らかになった。「外国軍隊による暴力」を隠蔽(いんぺい)したい意図が政府にあるのではないか。厳しく追及しなければならない。
WPSアジェンダとは、安保理のWPS決議に基づく取り組みを指す。1995年の世界女性会議北京宣言と行動綱領に、紛争下の女性の保護などが掲げられた。その後、2000年に安保理で、人権侵害からの女性の保護・救済も盛り込んだWPSに関する決議1325号が全会一致で採択された。さらに補完する9本の決議が採択された。
日本政府は13年から行動計画の策定を開始し、15年9月に当時の安倍晋三首相が国連総会で発表した。その過程の14年2月、沖縄で開催された意見交換会で「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」が要望書を提出した。
それが反映され「国内における外国軍隊によるジェンダーに基づく暴力の予防と適切な処罰の確保」「被害者への個々の実情に応じた途切れのない支援と補償へのアクセス」が追加された。
この2項目は、パブリックコメント後の15年1月の外務省で開かれた会合の最終稿にもあったが、発表時には削除されていた。担当の外務省女性参画推進室は「経緯は分からない」としている。
不可解な削除はなぜ起きたのか。その後今に至る9年間、地位協定改定の議論はまったくなされず、16年の軍属による殺人事件や今回の少女誘拐暴行事件など米軍関係者による性暴力事件が続発した。政府の不作為の結果だ。
日本の行動計画は、23年度から第3次計画となっている。3次計画の「基本的考え方」は、「WPSアジェンダの実施は、日本国内における関連政策においても達成すべき共通の課題」とする。そして、国内の外国人女性の人権に関し「女性や女児に対するあらゆる暴力の防止に向けた啓発や教育を推進するとともに、被害者・サバイバー中心アプローチに基づき、当事者の保護や自立と社会復帰、加害者更生と処罰に向けた取り組みを強化する」と述べた。
「外国軍隊による暴力」も同様であるべきだ。米軍の性暴力を除外してはならない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月24日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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