【社説・11.22】:園児の給食 細心注意で事故防止を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.22】:園児の給食 細心注意で事故防止を
札幌市の認可保育園で、1歳1カ月の男児が給食を喉に詰まらせ死亡した。離乳食の豚肉で窒息した可能性があるという。
通園を始めて3カ月が過ぎ、周囲に笑顔を見せるなど環境に慣れてきた時期の悲劇だった。
幼児は噛み、のみ込む力が未発達で、周囲の大人による細心の注意が欠かせない。しかし同様の事故は全国で後を絶たない。行政や保育事業者は重く受け止める必要がある。
札幌市は事実関係を調べるため特別指導監査に着手した。年内にも検証委員会を設置する。原因を究明し、各地の事故例にも学びながら二度と繰り返さぬよう教訓とせねばならない。
保育園の運営会社アイグラン(広島市)によると事故は男児を含む0~1歳児5人に保育士2人が食事介助中、発生した。男児は搬送先で死亡が確認された。北海道警察も業務上過失致死の疑いを視野に調べている。
離乳食は園内で調理され、豚肉は切り刻み、のみ込みやすくしていたという。介助の体制や献立づくりなど、事故に至る経過のどこに問題があったのか。多角的検証が求められる。
一般的に離乳期は食物をのみ込めるようになる生後5カ月ごろ始まる。その後乳歯が生え、前歯でかみ切って歯茎でつぶせる生後12~18カ月に完了する。
この間、徐々に食べる力がつくが、乳歯の生え方などにより個人差もある。各段階に応じた献立が必要で、保育園と保護者の意思疎通が欠かせない。今回はどうだったか確認が必要だ。
会社によると事故発生時、保育士が男児の口の中に指を入れ、背中もたたいて食べ物を吐き出させようとしたという。
日本小児科学会などはこうした際、無理に口へ指を入れないよう呼びかけている。異物を押し込む恐れがあるからだ。窒息すると数分で心停止しかねず、応急措置は最重要である。保育園の対応の妥当性も問われる。
子どもが食品で窒息した過去の死亡事故を見ると、低年齢ほど多くなる。札幌では2013年、小学2年の児童と1歳の園児が死亡する事故が起きた。
昨年、鹿児島県姶良(あいら)市の認可保育園で生後6カ月の女児がすりおろしたリンゴを食べた後に意識不明になり、死亡した。
市の検証委員会は報告書でリンゴの調理法などの問題点を指摘した。国の事故防止指針は園内で共有されなかったという。
行政は通知を出すだけでなく、地域の保育園の職員向け研修を定期開催し、消防署による救命訓練を行うなど命を守る取り組みを推進してもらいたい。
元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月22日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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