【社説①・03.11】:大震災14年 問われる「復興のあるべき姿」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.11】:大震災14年 問われる「復興のあるべき姿」
未曽有の災害に見舞われた被災地は、一歩ずつ前に進む一方で、難しい課題にも直面している。復興とはどうあるべきなのか改めて考えたい。
2万2000人を超える死者・行方不明者を出した東日本大震災から14年となった。被災地には復興関連事業として総額40兆円に上る国費が投じられ、市役所や学校、漁港、被災者が入居する災害公営住宅などが次々と整備された。
新しい建物が立ち並ぶ姿は、復興の象徴だろう。だが、自治体が今後背負っていく負担は重い。
岩手、宮城、福島3県では現在、こうしたインフラを維持するため年500億円を超える運営費や改修費などがかかっている。これは震災前の1・7倍にあたる。
国の手厚い財政支援があったからこそ、復興事業が加速したことは間違いない。ただ、「国がお金を出してくれるから」と、自治体の将来予測が甘くなり、結果的に過大な施設整備につながった面もあるのではないか。
被災地の多くは、以前から過疎の問題を抱えていた。震災後、人口流出がさらに進み、復興後も戻って来る住民は多くない。今後は税収減が予想されている。
岩手県大船渡市は震災後、227億円を国が全額負担して、被災した市管理の16漁港すべてを再建した。しかし、漁師の高齢化や担い手不足で、漁船の数は震災前と比べ、約4割も減っている。
岩手県山田町では、12億円をかけて再建した小学校が、児童数の減少によって昨年、開校から10年で廃校に追い込まれた。
各自治体は、多額の公費を投じた施設について、課題を分析し、活用法やコストの削減策を検討すべきだ。国と連携を図り、打開策を見いだしたい。
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、全町民が避難を強いられた福島県双葉町は、英語に特化した、国際色豊かな学校の設置を目指している。こうした施策によって、外部から子育て世代の移住を促すことなども一案だろう。
昨年の元日に起きた能登半島地震では、被災地の復興が始まっている。能登も過疎が深刻な状況だ。地域を元の姿に戻すこともさることながら、将来像を描き、地に足のついた現実的な街づくりを進めるという視点も重要になる。
過疎と高齢化が深刻な地域は、日本各地にある。南海トラフ地震の被害は、こうした地域に及ぶとみられている。災害後の復興をどう進めるのか、平時から考えておくことが重要だ。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月11日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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