《社説①・01.08》:米議会襲撃から4年 民主主義を取り戻せるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.08》:米議会襲撃から4年 民主主義を取り戻せるか
米連邦議会が次期大統領にトランプ氏を正式に選出した。世界を震わせた連邦議会議事堂襲撃事件から4年がたつ。米国は民主主義を取り戻せるだろうか。
凄惨(せいさん)な記憶は生々しい。大統領選に敗北したトランプ氏の演説に呼応した群衆が議事堂に向かい、選挙結果を覆そうと審議中の議場に乱入した。
銃声が鳴り、怒号が飛ぶ。議員らはしゃがみ込んで身を守った。乱入者が射殺され、百数十人の警察官が負傷した。
米国の民主主義の歴史に残る汚点である。退任後、トランプ氏は刑事責任を問われた。危機は今も続き、深刻さを増している。
象徴するのが、政治暴力の増加だ。米報道によれば、事件から昨年10月までに300件を超えた。1970年代以来の多さという。
トランプ氏を「救世主」とあがめる極右の陰謀論者が民主党のペロシ元下院議長の自宅に押し入り、夫に大けがをさせた。
トランプ氏も標的となった。昨年の選挙集会で演説中に銃撃され、耳を負傷した。その後も暗殺計画が明るみに出ている。
背景には、党派間の分断が深まる中、対立をあおることで支持基盤を固めようとする政党や政治家の思惑がある。国民が暴力に訴えても断固たる措置を講じようともしない。
トランプ氏は、襲撃事件で有罪判決を受けた受刑者らを恩赦する意向を表明している。対象者は千数百人に上るという。
バイデン大統領が「歴史を書き換えようとする試み」と非難したのは当然である。政治家が明確にすべきは暴力を許さない姿勢だ。
社会のゆがみを是正することも求められる。貧富の格差が拡大する一方で、白人と非白人の人種的対立が再燃している。
活力のある中間層を再生し、差別なき公平な社会を目指す政策が求められる。市民が問題意識を共有して行動すれば、民主主義は強まるだろう。
政治暴力は、欧州など他の民主国家にも広がっている。とりわけドイツやフランスなどで急増しているという。
戦後、世界の民主主義をけん引してきた米国が増長を抑制できるか。国際社会が注視している。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月08日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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