《社説①・01.19》:バイデン外交の功罪 世界の分断を増幅させた
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・01.19》:バイデン外交の功罪 世界の分断を増幅させた
「分断」ではなく「団結」を訴えて4年前に就任したバイデン米大統領が去る。その理想はかなわず、残されたのは、より混迷が深まる世界だ。
気候変動の枠組みや軍縮条約から離脱して国際協調をないがしろにした「トランプ外交」を転換させると公約した。
「米国は戻ってきた」と訴え、軍事よりも外交を重視し、同盟ネットワークの再構築を主導する姿勢は国際社会から歓迎された。
成果はあった。日本や韓国との連携を強化し、アジアと欧州の同盟国同士の交流を活発化させた。気候変動への精力的な取り組みは特筆に値する。
だが、4年間の外交を振り返れば、むしろ際立つのは失策だ。
対テロ戦争の主戦場だったアフガニスタンでは、放逐した旧支配勢力が再び台頭し、米軍は撤退に追い込まれた。これがつまずきのきっかけとなった。
ウクライナを威嚇するロシアを制止できず、軍事侵攻を許した。イスラエルの過剰な武力行使にも歯止めをかけられなかった。
中国の軍事力の増強でインド太平洋地域における米国優位のパワーバランスは揺らいだ。北朝鮮やイランの核開発も放置した。
バイデン外交の失敗は、米国の影響力の低下を浮き彫りにしたともいえよう。
ともに国際法違反を指摘されたにもかかわらず、ロシアを非難し、イスラエルを擁護する背反した姿勢が国際社会の不信を招いた。
とりわけ新興・途上国の失望は大きかった。米国と中露が対立する構図の中で、敵味方に分けようとする手法が不評を買った。
専制主義国家に対抗して開催した民主主義サミットは、招待国の線引きを巡って紛糾し、かえって亀裂を表面化させた。
米国内の分断も深まった。歴史的なインフレへの対応が後手に回り、格差は広がった。中間層の不満が大統領選での民主党敗北につながった面は否定できない。
バイデン氏は演説でトランプ次期政権を念頭に「非常に少数の超富裕層に権力が集中する」との懸念をあらわにした。
国民に向けられた最後の言葉は、団結にはほど遠い米国の現状も映し出している。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月19日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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