《余録・01.22》:「親愛なるナオミ・ウエムラへ…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.22》:「親愛なるナオミ・ウエムラへ…
「親愛なるナオミ・ウエムラへ デナリへ登るナオミを神が守りたもうことを」。1984年2月、北米最高峰への冬季単独登頂に成功後、消息を絶った冒険家の植村直己さんの遺品に刻まれていたという
▲デナリは「高きもの」「偉大なもの」を指す先住民の言葉。19世紀末に就任したマッキンリー米大統領の名で呼ばれた最高峰の本来の呼称だ。2015年に当時のオバマ政権が地元アラスカ州の求めに応じて正式名称にした
▲その名が再びマッキンリーに戻る。「保護主義のナポレオン」と呼ばれた先達を敬愛するトランプ大統領が就任演説で表明し、大統領令に署名した。「多様性、公平性、包括性」の頭文字を取ったDEI政策を嫌う政権の性格が表れたようでもある
▲「シンプルに米国第一にする」「(化石燃料を)掘って掘って掘りまくれ」「数百万の犯罪外国人を送り返す」「男性と女性の二つの性別のみが存在する」。トランプ節全開の就任演説からは「寛容さ」が感じられなかった
▲先の大戦時の「日系人強制収容」の根拠とされた「敵性外国人法」を発動する。パナマ運河を「取り戻す」。果ては「領土を広げる」と明言した。マッキンリー時代のハワイ併合やフィリピン領有の歴史を思えば、心穏やかではいられない
▲宇宙飛行士を火星に送り込み、星条旗を立てるのはご自由だが、パリ協定や世界保健機関(WHO)を脱退しては大国の責任を果たせない。そんな「黄金時代」ではすぐにメッキが剥がれるのではないか。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年01月22日 02:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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